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映画『蘇りの血』公開記念インタビュー

「大きさではなく、芸を買ってくれ」日本最小手品師・マメ山田”小人の哲学”

mameyamada_01.jpg実は良家のおぼっちゃんだった!?

 小人症でありながら、その体格を活かし数々の舞台や映画で活躍するマメ山田。その114cmの身体から滲み出る存在感に目を奪われた経験を持つ人も多いだろう。そんな彼が出演する映画『蘇りの血』が東京フィルメックスでお披露目され、絶賛を浴びた。舞台挨拶前の貴重な時間を頂き、マメ山田が考える小人としての哲学を語ってもらった。

──エンタテインメント業界に入ったそもそものきっかけを教えてください。

マメ山田(以下、マメ) 67年くらいだったかな……ルーキー新一という芸人が大阪でお芝居をしていて、新聞でその団員募集の広告を見て、自分から飛び込んだんだよね。それまでは芝居の経験なんてまったくなかった。学芸会もやったことないし。

──この業界に入るにあたって、ご両親は反対しましたか?

マメ そりゃ反対しましたよ。子どもの頃から1人で外へ出るという事がなかったし、箱入り息子だったからね。どこへ行くのも”ばあや”がついていくような、おぼっちゃんだった。

──そんなに裕福な家庭だったんですか?

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マメ いや、ばあやって言っても祖母だけど(笑)。とにかくね、両親の反対を押し切ってでも、何かやってみたかったんだよね。

──ご両親は許してくれたんでしょうか?

マメ 入ったのなら仕方ないと諦めてくれましたね。ばあやは舞台も見に来てくれました。親父は見に来てくれなかったけど。

──駆け出しの頃は、ストリップ劇場にも出演していたんですよね。

マメ そうそう、幕間でね。親父もストリップの時は見に来たよ(笑)。

──手品との出逢いは?

マメ 日劇に出ている時に、手品の木村ヨシユキ師が僕を見ていてくれて、大阪へ戻った時に声をかけてくれたんだよね。「君にはできないことが多いと思う。だけど君にしかできないこともあると思う。それを見つけるのが俺の仕事だから」って。

──82年から俳優としても本格的に活動を始められました。このきっかけは何だったんでしょうか?

マメ 蜷川(幸雄)さんの舞台『唐版 滝の白糸』で初めて声をかけて頂いた。芝居の中で小人プロレスのシーンがあって、それで小さいのを集めたんだね。

──小人の役者は俳優としてだけでなく、着ぐるみの仕事もよく依頼されるということですが、マメさんはそういった仕事もやっているのでしょうか?

マメ 着ぐるみはやらないね。顔も出ないし、誰が中に入っているかも分かんない。そんなものはやりたくないですよ。僕がよく言うのは「大きさではなく芸を買ってください」ということ。プライドだよね。

「僕は別に他の人と変わりはないと思う」

──他の小さな役者さんとの交流はあるんですか?

マメ まず、そもそも僕より小さいのっていないんだよね。僕が114cmなんだけど、僕より小さいとなると、以前日劇にいた空飛小助だけしかいない。確か1mちょうどくらいじゃないかな。あの人と並んだ時は”勝った”って思ったね(笑)。でも実際、交流というほどのことはないよ。同じ舞台に一緒に出るくらい。よく聞かれるんだけど、仕事以外では付き合いはないよね。

──マメさんとしては小人の脇役ばかりではなく、主役を演じてみたいというジレンマがあったりするのでしょうか?

マメ そういう部分はないですね。僕には僕の役というか、役割があるから。それに、どんな役をやっているときでも、他の俳優をみんな食ってやるっていう気持ちがある。

──絶対、印象に残りますからね。

マメ 芸人になったのも、それなんです。一度見たら忘れられないでしょ。

──普段の生活している中で、小人として損をしていると思うことはありますか?

マメ そりゃ、いろいろあるよ。小学生より身長が低いので、すべての物が高い場所にあるんだから。自動販売機が届かなかったり、自動車免許が取得できなかったり。ただ昔からの話だから大して気にはしないよね。馴れちゃった。

──小人症の人は外に出にくく、引きこもりになってしまうことが多いと聞きます。そんな小人に対して、マメさんとしてはどんなメッセージを送りたいですか?

マメ いや別に。僕は別に他の人と変わりはないと思うから、好きなようにやればいいと思う。

「小さいのは出さない」は人権侵害

──小人として生活をしていて差別に感じるような事はありますか?

マメ テレビに出せないっていうことかな。それは非常に腹立つと言うか、なんでだ、と思う。小さいのは出さないというのは人種差別であり、人権蹂躙だよね。

──昔はテレビにも活躍の場があったと聞きます。

マメ 白木みのるとか空飛小助とか出ていましたからね。確かドリフにも出ていた。僕はテレビには出てないですね。小人プロレスも昔は必ずテレビで放映していたけど、一切やらなくなってしまった。

──「小人」というのは差別用語に分類されていますが、マメさんとしてもその呼び方に差別を感じますか?

マメ 同じ「小人」っていう言葉でも、強く差別を感じる時と、まったく気にならない時とある。使われ方の問題だよね。「小人」っていう言葉自体に抵抗はないよ。

──最後に伺います。もし生まれ変わったらまた小人に生まれたいですか?

マメ そうだなぁ、一般の大きさになっても別にすることないし……。また小さい方がいいな(笑)。
(取材・文=萩原雄太[かもめマシーン])

まめ・やまだ
年齢非公開。兵庫県出身。1966年にコメディアンを志し、ルーキー爆笑劇団に入団。以来、コメディアン、マジシャンとして活躍。82年からは舞台を中心に俳優活動を開始し、映画では『青い春』(02年)、『ナイン・ソウルズ』(04年)、『蘇りの血』(12月19日より全国ロードショー)に出演している。

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『蘇りの血』
『青い春』や『空中庭園』などを手掛け、世界的評価を受ける豊田利晃監督の最新作。熊野を舞台とした伝説「小栗判官」をモチーフとした死と再生の物語。元ブランキー・ジェット・シティの中村達也が主演。
12月19日よりユーロスペースほか全国ロードショー。
<http://yomigaeri-movie.com/>

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最終更新:2009/12/08 18:00
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