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まさに鬼畜!? 同類を売る看板ゆるキャラの悲哀『共食いキャラの本』

tomogui.jpg『共食いキャラの本』(著:大山顕/洋泉社刊)

 古来より、ヒトがヒトを食うことは禁忌(タブー)として秘されてきた。ヒトの目線からすると、”共食い”は哀しくて、やりきれない、人道に反することだ。では、動物が同種の動物を食べるとき、何を思うのだろうか?

「共食いキャラ」とは、団地愛好家、工場愛好家、ジャンクション愛好家、住宅都市整理公団総裁および日本ジャンクション公団総裁として著名な大山顕氏が、新たに着目・研究しているジャンル。飲食店の看板や食品のパッケージに描かれたブタ・ウシ・トリなどが、「おいしいよ!」とニッコリ笑って同種族を食することを薦める、ロゴのようなイラストのようなアレ。道端でよく見かけますよね。

 この『共食いキャラの本』は、そんなゆるくも哀しい全国の共食いキャラを集め、考察した本だ。ブタ・ウシ・トリから魚介類、野菜果物、果ては共食いなのかよく分からないが食品販促のために使役されているキャラたち。その数なんと二百数十点が掲載されている。それぞれに大山氏のコメントが添えられ、その独特の語りに笑いのツボをくすぐられる。

 表紙には、手にナイフとフォークを持ち、コック帽を被ったブタさん。一見かわいらしいのだが、どういった事情か仲間を売るために店で使われている。明日は我が身か、と気が気ではないだろう。デッサンが狂っていたり、色調がおかしかったり、どこか浮かない顔をしていたりと、「かわいい」「おいしそう」だけではない”もの哀しさ”が漂っている。はっぴ姿でうちわを振り陽気に仲間を売るブタ、やきとり店の販促をする節操のないブタ、トリと合体した手羽先チェーン店”世界の○ちゃん”店長。身体を包丁でブッタ切られて肉の断面が露出している、果てしなくかわいそうなヤツもいる。

 団地、高架下、ジャンクション……、大山氏の視点は、日常の中に溶け込んでいる当たり前の風景に光を当てて、再認識する。当たり前すぎて僕らは普段気づかないが、かわいらしさ、美しさ、面白みがそこに潜んでいるのだ。共食いキャラもそのひとつ。目線を変えて町を見たら、面白いものがごろごろ転がっているのだ。この本を読んで「町を読む」ことを楽しもう。
(文=平野遼)

tomogui_sub01.jpg同じ看板の表裏。舌なめずりするウシさん。(撮影=大山顕)
tomogui_sub02.jpg食べる側の人間と食材たるウシブタが共に喜び踊る。(撮影=大山顕)
tomogui_sub03.jpgうしろ、うしろ!(撮影=大野達也)

大山顕(おおやま・けん)
1972年生まれ。著書に『工場萌え』『団地の研究』(東京書籍)『高架下建築』(洋和泉社)『ジャンクション』(メディアファクトリー)など”ドボク系”著作物や関連ウェブサイト運営、イベント開催を行っている。ニフティの「デイリーポータルZ」での連載のほか、NHK‐BS『熱中時間』のレギュラーも勤める。この『共食いキャラの本』で共食いキャラ研究家としてデビュー。

共食いキャラの本

おかしくももの哀しいかな

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最終更新:2009/12/08 11:00
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