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名だたる映画賞を総ナメ! 斬新な手法で描く話題作『戦場でワルツを』

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(C) 2008 Bridgit Folman Film Gang, Les Films D’ici, Razor Film Produktion,
Arte France and Noga Communications-Channel 8.
All rights reserved

 今年2月の米アカデミー賞で『おくりびと』が外国語映画賞を受賞し、社会的にも大きな話題となったが、そのアカデミー賞外国語映画賞で最大の本命とされていたのが、11月28日にやっと日本公開となる『戦場でワルツを』だ。

 同作はイスラエルの映画監督アリ・フォルマンが自身の体験を映画化。登場する人物はフォルマン監督を含め実在の人物で、語られる話もノンフィクションだが、映像は独特のタッチのアニメーションという、なんとも不思議な味わいの作品だ。

 物語は2006年冬に始まる。主人公のアリは、旧友から26頭の犬に襲われる悪夢の話を聞き、それは自分たちが19歳の時に従軍した82年のレバノン戦争の後遺症なのかと考える。しかし、アリ自身、当時の記憶がまったくないことに気づき、さらにその夜、ひとつだけ甦った記憶の断片で、アリは照明弾が光る夜、2人の若者とともにベイルートの海に全裸で漂っている自分の姿を見る。そのイメージは、一体何を表わしているのか? そして失われた記憶の真実は……? アリは失われた記憶を求めて、世界中に散らばる当時の戦友たちを訪ねる旅を始まるが……。

 昨年の第61回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された同作は、アニメーションとドキュメンタリーを融合させた斬新な手法でカンヌを沸かせ、その後も全米映画批評家協会賞で最優秀作品賞、アカデミー賞の前哨戦として知られるゴールデン・グローブ賞で最優秀外国語映画賞など23を超える映画賞を受賞。時にアニメーション部門、時にドキュメンタリー部門での受賞やノミネートを受け、米国の主要な映画賞ではアニメやドキュメンタリーというカテゴリーを超えた作品部門(あるいは外国語映画部門)での受賞も多いという、受賞歴もなかなか特異な作品だ。

 そんな過程を経て、アカデミー賞では外国語映画部門にノミネート。カンヌ映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したフランスの『パリ20区、僕たちのクラス』(2010年6月日本公開)というライバルもいたが、カンヌとアカデミー賞はあまり親和性は高くない。俄然、全米の賞レースを破竹の勢いで駆け上がった『戦場でワルツを』が最有力と思われたが、ダークホースの『おくりびと』に受賞をさらわれた格好だ。

 もちろん『おくりびと』も優れた映画で、その受賞はめでたいことだったが、『戦場でワルツを』が受賞を逃したおかげで日本で埋もれてしまうようなことがあれば、それは非常にもったいない事態。今年のアカデミー賞は世界恐慌の中、オバマ大統領が誕生して間もないこともあって、これからの希望にあふれた明るい映画が歓迎された風潮があった。『戦場でワルツを』は過去の戦争という重たいテーマを取上げた作品のため、アカデミーからは敬遠されたかもしれないが、今年日本公開される映画の中でも、絶対に見逃せない作品のひとつであることに間違いない。

 イマジネーション溢れる映像に引き込まれつつも、アリの記憶の旅によってあぶりだされる人間の深層心理、戦争の実態……。見始めた時は「なぜ、これはアニメーションという体裁を取っているのだろう?」と疑問に思うかもしれないが、それはラストシーンを見れば全て納得がいく。それをここで詳しく述べるわけにはいかないが、現実を描くドキュメンタリーと変幻自在なアニメーションという、一見すると二律背反な2つの表現の融合が、かつてない映画体験を約束してくれるはずだ。
(文=eiga.com編集部・浅香義明)

『戦場でワルツを』
<http://eiga.com/movie/54408>

『戦場でワルツを』フォルマン監督、イスラエルの現状に嘆き節
<http://eiga.com/buzz/20091120/11/>

パラダイス・ナウ

これがイスラエルの現実

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最終更新:2009/11/27 21:00
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