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ボン・ジョヴィ、マイケル……お笑い界80年代洋楽ブームのなぜ

shatsuzaha-.jpg「シャツザハー」は3曲目に。(『ワン・ワイルド・
ナイト』ユニバーサル インターナショナル)

「♪シャッツザハ~~」

 ボン・ジョヴィの曲を、芸人・椿鬼奴が大声で歌う、ただそれだけの芸。

 意味も脈絡もなく(あるのかもしれませんが)、ただただボン・ジョヴィの曲を歌っているだけなのに、面白い。

 映画『フットルース』のテーマ曲をデタラメ英語で、これもまた、ただただ歌うだけという芸を、最近よくやっているのが友近。友近は、他にもマイケル・ジャクソンや『フラッシュダンス』のネタをやることもある。また、80年代のMTVでよく流れていたPVのマネをするレイザーラモンRGというのも目にした。

 80年代の、それも洋楽ネタ。芸人界で密かに流行っているのだろうか。奇しくもボンジョヴィの新譜『ザ・サークル』(ユニバーサルインターナショナル)が、11月16日付けのチャートで1位を獲得していたのだが、これも鬼奴効果だったりする?

「ボン・ジョヴィの人気って全然衰えていなくて、今回で洋楽の最多1位獲得アーティストになったぐらい。ですから、鬼奴さんのブレイクで復活したとか、そんなことではないですね。でも、あのネタがあったから、今回のアルバムのプロモーションに鬼奴さんは参加してますからね。もともと売れているところを後押ししたことは確実でしょう」(音楽ライター)

 そんな芸人界の洋楽ネタブームについて、お笑い事情に詳しいテレビ誌ライターにたずねてみたのだが、

「流行ってるというよりは、ただ単にそういう世代ということに尽きちゃうと思うんですけど」

 と、ごもっともな分析。

「友近さんに関しては、花魁映画のネタなんかもそうかと思うのですが、もともと自分の年代よりもちょっと上の文化を盛り込むことが多くて、それが本人的に今、80年代の洋楽だという、マイブーム的なノリはあるかもしれません。誰かがやったことで、自分の中に眠っていた懐かしさが掘り起こされてネタにしちゃった芸人さんはいるでしょうね。そもそも、20歳以下にはなんのなんのことだか分からないネタですが、分からないけどなんか面白い、そう思わせるようなパンチがある素材だということでしょうか」

 この「なんだか分からないけど面白い」という笑いのとり方について、バラエティー番組のある作家は同じように注目していた。

「『エンタの神様』(日本テレビ系)が全盛だった数年前だったら、こういうネタはポカーンとされるだけだったはずなんです。それが、お笑いブームが定着したことで、今はある程度奇抜なことをやっても許される、分からないことを分からないなりに楽しむという流れになってきていると思いますね。それに加えて、お笑いをアイドル的なものでなく楽しんで見ている世代の30代後半~40代ぐらいにとっては芸人とも同世代でもあり、『あったなぁ』という、ちょうどいい懐かしい笑いになってるところはあります」

 現在は、芸人それぞれの得意なジャンルをプッシュしていく傾向にあると、前出の作家は言う。

「おそらく思春期にハマッて、ずっと日常的に接しながら、20年以上自分の中で蓄積されてきたものですから、流行ってるからといってそのキャラをたとえば1カ月練習して出すものとは全く違う。芸が薄っぺらくならないんですね。好きだったものを好きなかたちでやるわけですから、その自信みたいなものは、ちゃんと空気として出てきますよね」

「お笑い」という蔵の中にずっと保管されていて、極上のワインみたいに豊穣感あふれる芸に熟成されていて出てきたということなのか。

「鬼奴さんなんかとくにそうなのですが、『ベテランの若手』というか、スキルはキャリアの分ちゃんと持っているので、ただ歌ってるだけのようでいて、面白くできるんだという気がします」(前出同)

 ただ歌ってるだけなのに(失礼)面白い。そこにはちゃんと熟成される土壌と時間があったというわけです。
(文=太田サトル)

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♪Shot Trough The Heart~

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最終更新:2018/12/10 19:20
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