「いい気分♪」なんて言ってられないセブン-イレブン 搾取の実情を暴く本
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今年6月、セブン-イレブン・ジャパン(以下、セブン)が、公正取引委員会から独占禁止法違反で排除措置命令を出された一件を覚えているだろうか。同社がフランチャイズ店に、販売期限間近の弁当などを値引きしないよう強制していたとして下された行政処分だ。
セブンといえば、日本全国に約1万2,000店ものチェーン展開を誇るコンビニ最大手。日本経済の「失われた10年」においても業績を伸ばし続け、小売業トップに輝いた一部上場会社である。そんな超優良企業の独禁法違反が指摘されたわけだが、本書『セブン-イレブンの罠』著者の渡辺仁氏は、この件を「まだまだ可愛い方である」と表現する。
週刊誌「週刊金曜日」(同)の連載をベースに書き下ろされた本書は、セブンの”裏の貌”にスポットが当てられており、普段報道されない事実や、「♪セブン-イレブン~いい気分~」と、さわやかに歌っていられない内容が綴られている。例えば、廃棄した弁当などの総菜類に課せられるチャージは違法性の疑いがある(ロスチャージ問題)として、幾度も裁判沙汰になっていることを多くの人は知らないだろう。セブンとオーナーとの対立は、「35年の紛争・弾圧の歴史」として年表にまとめられている。近隣にセブン本部がライバル店を出店してきたことで経営難となり自殺した者、店を打ち壊された者、24時間監視され売上金を一円残らず持って行かれた者、店を潰され一家裸同然で追い出された者……セブン本部に反抗し、悲惨な状況に陥ったオーナーたちの知られざる実態も、渡辺氏の取材から浮かび上がる。
渡辺氏は、これら問題の元凶は、同社の「フランチャイズシステム」にあると考えている。”名ばかり”でオーナーには経営の自由が存在しない点、店舗経営指導員は実質的に監視員兼セールスマンである点、一般企業とは異なる特殊会計システムを採用している点を「偽装」と指摘し、帳簿隠しやピンハネ疑惑も含め、セブンのビジネスモデルのカラクリを図式化して説明する。国税庁出身の税法学者・北野弘久日本大学法学部名誉教授による巻末解説は、法的に疑いのある問題点が裁判内容とともに記されていて分かりやすい。セブン創設者でありカリスマ経営者といわれる鈴木敏文氏(セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長・CEO)の人物像にも迫っており、会計や数字に自信のない人にも読みやすい一冊となっている。
百貨店やスーパーなど、軒並み再編が進む流通業界。コンビニも店舗飽和状態の中、タスポ効果が終わって次の一手を迫られる状況だ。鈴木会長の自叙伝などと並行して本書を読めば、今後の業界動向がいっそう面白くなるかもしれない。
危うくひっかかるところだった……
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