ドラマ『坂の上の雲』を100倍楽しむには? 日露戦争のために存在した奇跡の兄弟
#本 #歴史 #戦争
直江兼続の生涯を描いたNHK大河ドラマ『天地人』。「起伏のないストーリーを無理やり盛り上げている」「子役の加藤清史郎(トヨタCMの子ども店長役)の健気な頑張りがあってこその数字」「前作の『篤姫』が凄すぎた」などという厳しい意見もある一方、なんとか安定した視聴率を維持している様子。その勢いで11月29日からは同枠でスペシャルドラマ『坂の上の雲』が、3年間という長期スパンで13回に分けて放送される。日露戦争を奇跡の勝利に導いた秋山好古・真之兄弟の物語で、それぞれを阿部寛、本木雅弘という日本を代表する実力派二枚目俳優が演じることでも話題だ。
司馬遼太郎の人気原作に豪華なキャスト。製作スタッフの鼻息も荒くなろうというものだが、一方で不安材料も指摘されている。歴史評論家の家野右近氏が語る。
「学校の授業では、日清戦争から日露戦争まではサラリとしか触れませんからね。人気の戦国モノのように小説も多くない。認知度の低い近代史のドラマに、視聴者が感情移入できずに終わってしまう可能性もある」
日露戦争を描いた物語といえば名作『二百三高地』が有名だが、これについても「あれは主人公が知名度の高い乃木希典。ストーリー構成も、激戦として知られる旅順攻囲戦に絞り込んでいる。今回の主人公は比較的認知度が低い秋山兄弟で、兄弟の青年期から描くためストーリーも明治初期から日露戦争までと広範囲。最近の飽きっぽい視聴者が最後までついてきてくれるかどうか」と指摘する。
つまるところ「大河ドラマを楽しむためには時代背景の理解が不可欠」(家野氏)というわけだが、そんな需要をあてこんでか、早くも各出版社からは秋山兄弟に関する書籍が続々と出版されている。そこで、数ある”秋山本”のなかから気になる一冊を家野氏に挙げてもらった。
「『日露戦争を勝利に導いた奇跡の兄弟 秋山好古・真之』は比較的お勧め。日露戦争の意義や過程、背景にある国際情勢が写真や短編漫画を使って描かれていて、初心者にも理解しやすい。ドラマでは、香川照之演じる正岡子規と秋山兄弟の友情が見所のひとつですが、両者の関係性についても突っ込んで書かれていて、コアな歴史ファンも満足できる内容となっている。明治時代の理解だけでなく、日本という国の大きな流れを知る上でも役立つのではないでしょうか」
勝てるはずがない戦争が勝利に終わった背景には、いくつもの奇跡と努力が存在した。その筆頭といえる奇跡が秋山兄弟の存在なわけだが、「勝利の背景には明治の人間の気骨と真面目さ、国家への純朴な愛情があった。秋山兄弟はそんな土壌に存在していた」と語るのは筆者の小野木圭氏。
「資料を読めば読むほど結果を信じることが難しくなる、日露戦争の勝利は奇跡でした。失礼な言い方を承知でいえば、秋山兄弟の人生は日本がロシアに勝つためだけに存在したかのような錯覚を覚えます。兄弟の存在はそれほど不思議で奇跡的でした」
100年前に国家の浮沈を賭けて闘った日本人の精神風土を、あらためて知るための一冊といえるだろう。
気骨こそ最大の美徳なり
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