柳美里は初のエンタメ小説『オンエア』で女子アナの世界に何を見たのか?
#本 #インタビュー #柳美里 #女子アナ
デビュー作『石に泳ぐ魚』(新潮社)以来、きわめて私小説的な物語を書き続けてきた芥川賞作家・柳美里。その彼女が07年から「週刊現代」(講談社)で書き始めた連載小説は、意外や意外、女子アナ3人が主人公の群像劇だった。会社員でありながら芸能人並みに週刊誌のトップを飾る彼女たちのいびつな世界を、柳が描いた真意とは――?
なぜマスコミは、いや世間の人々は、女子アナのスキャンダルが大好物なのだろう?「衝撃スクープ!」の見出しが、もはや女子アナの専売特許となった昨今、”若気の至り”から進行中の恋愛まで、彼女たちの一挙手一投足は常に週刊誌の記者に狙われている。
柳美里の最新刊『オンエア』(同)は、そんな女子アナたちの心の暗部に迫った著者初のエンタテインメント小説だ。「週刊現代」での連載開始時には、”芥川龍”の名で覆面作家として登場し、途中からその正体が柳美里であることを公開して話題を集めた。
それにしても、なぜ柳美里が、なぜ女子アナを?
――そもそもは「週刊現代」編集長(当時)の加藤晴之さんに、「女子アナ小説を」と提案されたのが本作執筆のきっかけだと伺いましたが、最初はどう思われました?
柳 会食の席で加藤さんから言われたんですが、箸を持つ手がしばらく止まった(笑)。テレビ業界のこともよく知らなかったし、自分と女子アナのつながりもまったく見つからなかったので。でも食事をしながら、女子アナ30歳定年説とか、IT社長との合コン話を聞いたりするうちに、書けそうな気になってきて。デザートの一歩手前くらいで「書いてみます」と。
――『オンエア』の主人公は、民放テレビ局に勤める3人の女子アナです。柳さんの作品では珍しい群像劇ですね。
柳 ひとりの主人公に加担するのではなくて、浮遊するさまざまな声が響くような小説にしたかったんです。今の時代、ネットでもテレビでも雑誌でも、無数の声が飛び交っていますよね。でも、そのせいで自分の声が聞こえなくなったり、言葉を発しても誰の耳にも届かなくなったりしている。そういう状況を書くには、群像劇のほうがいい気がして。
――冒頭、いきなりそれぞれの生々しいセックス描写から物語が始まりますね。
柳 セックスシーンは編集部からの要望です。ここはまだ覆面で書いてた頃ですね。覆面にしたのも途中から正体を明かしたのも、すべて編集部の判断です。以前の私だったら断っていたでしょうけど、今回はちょうど、他者の物語を書きたいと思っていたタイミングだったので、匿名もいいかな、と。今まではどちらかというと自分を物語る小説をずっと書いてきました。最高裁で発禁処分になった処女小説『石に泳ぐ魚』も、劇作家で在日韓国人で――と、自分のよく知っている世界を描いたもの。でもそこから16年たって、そろそろ他者を物語れるかもしれない、という心境の変化もありまして。
(続きは「プレミアサイゾー」で/構成=阿部英恵)
華やかな女子アナ世界の表と裏
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