事態急転!「リンゼイさん殺害事件」市橋達也整形術前後の写真入手で逮捕秒読み!?
#事件 #殺人 #犯罪 #日本"未解決事件"犯罪ファイル
何かが狂ってしまった現代社会。毎日のようにニュースに流れる凶悪事件は尽きることを知らない。そして、いつしか人々はすべてを忘れ去り、同じ過ちを繰り返してゆく……。数多くある事件のなかでも、未だ犯人・被疑者の捕まっていない”未解決事件”を追う犯罪糾弾コラム。
[第3回]
千葉県市川市福栄における英国人女性殺人・死体遺棄事件
(2007年3月)
当コラムの第3回テーマとして決まっていた「千葉県市川市福栄における英国人女性殺人・死体遺棄事件」、通称”リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件”の書き出しを考えていたとき、テレビでニュース速報が流れた。
「……の事件で逃走中の市橋達也容疑者が、大阪の病院を訪れていた可能性があることが捜査関係者の調べでわかりました」
2007年3月26日、英会話教室「NOVA」に勤務していた英国人女性講師、リンゼイ・アン・ホーカーさん(当時22歳)が部屋に戻ってこないことを心配した同居女性から千葉県警船橋署に通報があり、リンゼイさんに似顔絵をプレゼントしたという千葉県市川市福栄二丁目に住む無職の男性宅を捜査員が訪ねたところ、男は捜査員を振り切って逃走。直後、マンションの部屋のベランダに置かれていた浴槽に張り詰めた園芸用の砂の中から全裸で前屈みに座ったリンゼイさんの遺体が発見されたため、男を事件の重要参考人として指名手配。写真や映像・肉声などが多数公開され、被疑者・市橋達也(当時28歳)の名前と顔は全国に知れ渡った。
リンゼイさんの同居女性の話によれば、市橋はJR西船橋駅前でリンゼイさんに声をかけ、自宅までつきまとって「英会話の個人レッスンをしてほしい」と懇願。当初、リンゼイさんは相手にしなかったが、同居女性がいることで警戒心が薄まったためか、やむなく市橋を自宅に招き入れている。その際、市橋はリンゼイさんの似顔絵を慣れた様子で紙に描き、英字で「Tatsuya Ichihashi 047-XXX-XXXX」と名前・電話番号を書き残している。周囲の話では、これは市橋が女性に近づくためによく使っていた手段だったという。結局、この似顔絵が捜査の足がかりとなったわけだが、警察は先述の通り大失態を犯してしまう。市橋は持っていたリュックサックをマンションの廊下に落とし、靴と靴下を脱ぎ捨てながら裸足で逃走。東京メトロ行徳駅付近で足どりが消えたため、当初は電車を使って逃走したと見られていたが、市橋が同駅前に自転車を置いていたことが判明したため、逃走経路の断定ができず、その後の捜査にも影響を及ぼしている。
司法解剖の結果、リンゼイさんは窒息死と判明(殺害方法については不明)。顔面には殴られたような痕が残っていたという。悲報を聞いて来日した両親や恋人の男性は、「許せない!」「絶対に捕まえてほしい!!」とメディアに訴えかけ、その後も数度に渡って来日し、テレビ番組に出演したり街頭での情報提供を呼びかける活動にも参加。その際、「出頭するなら無期懲役でも構わない。ただし、逃げ続けるなら極刑を望む」と断腸の思いで語っている。
その後、管轄である千葉県警行徳署は、事件解決のために捜査員を100人から150人体制に増員。手配ポスター数万枚を何度も作成して全国各地に貼り出し、捜査特別報奨金制度(=公的懸賞金)の適用を受けて捜査態勢を強化。約3万件の聞き込み調査を行って約8千件の通報を受けたものの、いずれも決定的な情報には繋がっていなかった。
話は戻って冒頭のニュース速報。嘘のようなタイミングに驚くよりも、この24時間でどのような新情報が出てくるか、そして新たな展開はあるのか、気になって仕方がなかった。実際、続報で「大阪の病院」は「名古屋の美容整形外科」に変わり、「福岡でも来院」と付け加えられた。当初、「大阪」と報じられたのは、病院の問診記録に大阪府内の住所が書かれていたこと(実在する人の名前・住所だったが、千葉県警行徳署は「無関係」と発表)、逃走の数日後に大阪・西成区の公衆電話から岐阜県にある実家に何者かが無言電話をかけたことが報じられたために根強くあった”大阪潜伏説”(同署は本人と断定せず)、この2点による影響と思われる。そして、その後の報道では市橋らしき男が名古屋の同病院で鼻の整形手術を受け、その際に医師が新旧の手術痕を確認していたことから、目をハッキリとした二重まぶたにして、特徴だった左頬のタテに並ぶホクロ2つを除去していたと見られている。
当初、にわかには信じがたいニュースだったが、報道に関して慎重な警察の捜査担当者が「手術前と手術後の写真から見て、極めて確度の高い情報」と話しているのだから、被疑者逮捕に期待が膨らむというものだ。”外国人女性を殺害して逃走”という近年の凶悪事件の被疑者のなかでも指折りの衝撃度があったためか、それとも2001年にバラバラ遺体が発見された同じイギリス人が被害者の”ルーシー・ブラックマンさん事件(公判中)”を彷彿とさせるからか、事件は依然として風化せず、世間の関心も非常に高い。さらに今年6月、懸賞金が100万円から1000万円に引き上げられたこともあり、爬虫類のような市橋の”顔”はオウム真理教の特別手配被疑者らを押し退け、全国の指名手配対象者を貼り出している掲示板で最も目立つ存在となっていた。そんな状況のなか、整形を受けた男が本当に市橋だとしたら、よくリスクを冒して整形を試みたものだ。千葉県警のプロファイリング担当者の話では「用心深い性格」とのことだが、逃走を続ける2年半で自身の何かが変わったのかもしれない。そのプロファイリングでは、次のようにも分析されている。
「自己のイメージにこだわり、自分が強い、優れているという自己意識がある。自己中心的で、人間関係が表面的で長く続かない。社会的に未熟な反面、表面的な対人能力があり、人によっては人当たりが良いと感じることがあるかもしれない」……あなたの周りに最近現れた、このような性格の人はいませんか?
この原稿を書いている間にも、捜査は最終局面を迎えるかもしれない。むしろ、そうであってほしいと願うばかりである。
(取材・文=神尾啓子)
<プロフィール>
被疑者:市橋達也(いちはし・たつや)
生年月日:1979年1月5日 血液型/O型
出身地/前住所:岐阜県羽島市竹鼻町(本籍)/千葉県市川市福栄
身長:180cm 靴のサイズ/27cm
利き腕:左(左右どちらも使える)
特徴:旧手配書の写真から目・鼻・ホクロを整形か?
公訴時効成立:2032年3月
<情報>
懸賞金:1000万円
(平成22年6月28日まで)※延長の可能性あり
<連絡先>
警視庁 千葉県警察「市川市福栄における英国人女性殺人・死体遺棄事件」捜査本部
TEL.047-397-0110(内線611)
FAX.047-397-1060
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