“女詐欺師”は稀代の殺人鬼か!? 初めて実名を明かした週刊誌の覚悟
#雑誌 #出版 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
部数低迷が叫ばれ、その存在意義が問われども、テレビや大手新聞が”書けない”真実を暴く週刊誌ジャーナリズム──。毎週発売される各週刊誌の中から、伝説の編集長・元木昌彦が選りすぐりのスクープ大賞を認定!!
●第18回(10月27日~11月2日発売号より)
第1位
「バーキンを持った34歳『女詐欺師』から漂う死臭」(「週刊新潮」11月5日号)
第2位
「おかしくないか! 鳩山政権『子ども手当』と『大増税』」(「週刊現代」11月14日号)
第3位
「新型インフルエンザ『ワクチンを打ってはいけない!』」(「週刊朝日」11月13日号)
次点
「記者クラブを開放して『八ッ場ダムや薬害エイズ』を繰り返すな!」(「女性自身」11月17日号)
このところ最大の話題は「女結婚サギ師による連続殺人疑惑」だろうが、これは後述するとして、今週の栄えある次点は、女性誌の記者クラブ批判。省庁による情報操作や、報道機関と役所の癒着が問題視され、これまでも雑誌から批判されてきた記者クラブだが、鳩山民主党政権になった暁には、首相会見を始めとするすべての会見をメディアに開放すると公言していた。しかし、実際に始まってみると、首相会見は、記者クラブの猛反対のせいか、鳩山首相自身が個人献金などの疑惑を聞かれるのが嫌なのか、会見はオープンになっていない。
わずかに、外務省が岡田外相の強い意向で、私たちがやっている「日本インターネット報道協会」を窓口に、ネットメディアの参加も自由になった。亀井静香金融相の会見は、記者クラブの会見とは別に行われている。
他にもオープンな会見にしようと考えている省庁はあるようだが、肝心の鳩山会見がシャットアウトでは、「公約違反」(上杉隆氏)といわれても仕方あるまい。
第3位は、免疫学の権威、安保徹新潟大学大学院教授が、新型インフルエンザにワクチンを打ってはいけないと警告した記事。
氏によれば、新型は通常の季節性インフルエンザよりも毒性が低いという。季節性インフルエンザでの死亡率は1,000人に1人なのに、新型は10万人に1人。ワクチンによって引き起こされる重い副作用の危険性は、10万人に1人か50万人に1人。したがってワクチンを打つメリットはないのだという。
また、異常行動や突然死をもたらす治療薬タミフルにも批判的だ。ではどうしたらいいのか。
「昔から『風邪を引いたらあったかくして寝てなさい』って言うでしょ。新型もそれと同じです。薬に頼らず、普段から免疫を高めることが大事。逆に思われがちですが、高齢者って免疫力が高いんですよ」(安保氏)
そういわれれば、長年、数々のウィルスを吸い込み、免疫力ができているのかもしれない。
「むしろ子供は今が免疫を作るチャンス。まずは、人ごみに出たらその日だけは手洗い・うがいを休みましょう。公園で遊んだら手を洗わずに、雑菌を取り込むのも有効的。マスクもいりません」(安保氏)
恐い、危ないというストレスが免疫力を弱め、病気になってしまうのだそうだ。そうはいっても、今の過保護な親と虚弱な子どもたちを見ていると、こんなことを実行できるとはとても思えないが。
第2位は、鳩山政権の目玉公約に現代が噛みついた記事。週刊誌にとって毀誉褒貶は当たり前。昨日の友は今日の敵である。あれほど民主党政権万歳一色だった「週刊現代」が、先週号から小沢幹事長・鳩山首相批判へと大きく方向転換したが、もはや民主党礼賛記事では売れなくなったからだろう。
子ども手当は、小学生・中学生のいる世帯に、子ども1人当たり年間31万2,000円支給するというものだが、実施するためには6兆円の財源が必要だといわれる。また、夫が会社で頑張り、妻は専業主婦として家庭を守って、何とか子供3人を高校・大学に入れたサラリーマン家庭の年収が700万円だとすると年額13.6万円、900万円なら29.3万円もの負担増になるというのだ。
負担増になる世帯は上の世代に行くにしたがって高くなる。45から54歳が22%、55から64歳は47%にもなるという。これは「弱いものイジメ」ではないかと問うている。さらに配偶者控除や扶養控除の廃止を所得税だけではなく、住民税にまで拡大する可能性があるというのだ。
選挙中は、5兆円や10兆円などすぐに捻出できる。国民に負担をかけないと豪語していたのに、「いま政府周辺から聞こえてくるのは、『負担増』=『増税』の話ばかり。結局、見栄のいいマニフェストなど大嘘で、民主党政権下で国民は、のべつまくなしに大出血を強いられるのではないかという懸念ばかりが、どんどん膨らんでいるのである」。「フライデー」には、小沢幹事長が「鳩山は持って5カ月」と漏らしたとある。声高に政治理念を語るのも幸夫人と指相撲をするのもいいが、近づきつつある景気の二番底への具体的な対策を早急に示さないと、鳩山政権批判の声はますます高くなることは間違いない。
さて、ヤフパと呼ばれるヤフーの恋人、結婚相手を探せる出会いの場を使って、真面目な中高年に声をかけ、カネをねだり、それだけでは足りずに、多額のカネを奪った後、殺したのではないかという疑惑をかけられている34歳の木嶋佳苗被告(詐欺罪で逮捕・起訴)という女詐欺師の話題が日本中を席巻している。
相手を信用させるためだろう『かなえキッチン』というブログに、いかにも自分がセレブであるかのような「お菓子とグルメの日々」を書き綴り、言葉巧みに、「自分だけに心許したのかと……」(朝日)交際相手に思わせ、肉体や結婚をエサにカネを引き出す手口は、よくある結婚詐欺の手口である。
だが、彼女と交際していた6人もの男が、同じような不審な死に方をしているとなると、稀代の魔女が手を下した連続殺人事件ではないかと思うのは無理もないだろう。
各誌、かなりの誌面を割いてこの事件を報じているが、その中で1本を挙げるなら「週刊新潮」の記事である。これは特集ではなく「TEMPO」という小さなコラムの1ページ記事である。発売は先週の木曜日。この記事を取りあげる理由は、私が知る限り、木嶋被告の顔写真と実名をはじめて明らかにしたからだ。同日に発売された「週刊文春」は匿名、写真無しである。
さすがに今日発売の週刊誌の多くは、実名も顔写真も出しているが、「AERA」だけは写真に目線を入れ、匿名である。新聞も調べてみたが、すべてが匿名である。
なぜ、詐欺で逮捕され起訴されている被告の実名、写真を出してはいけないのだろう。確かに、殺人については、いまのところ警察の初動捜査の拙さもあって「疑惑」でしかない。彼女が手を下したという確証があるわけではない。
先週、「朝日」の山口編集長と話す機会があった。彼も、彼女の実名、写真を出すか出さないかで悩んでいたようだ。私は、「新潮」が既に書いているし、木嶋被告が殺人犯だなどと断定しなければ出していいと思うと話した。
「新潮」を創った斎藤十一氏が「FOCUS」を創刊するとき、「殺人犯の顔が見たくないか」といったという逸話がある。いたずらに何でもかんでも実名報道すればいいとは思わない。だが、週刊誌の役割は、新聞にできないことをやることだから、やや腰が引けているようには思うが、新潮は週刊誌の原点を守っている点を買って1位に押す。それにしても、写真を見る限り、このような女に入れ込んで人生を狂わせてしまった男たちが可哀想でならない。
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。
【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
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