中国で酒井法子海賊版ヌード写真集!? マスコミの「のりピー劇場」は続く……
#雑誌 #出版 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
部数低迷が叫ばれ、その存在意義が問われども、テレビや大手新聞が”書けない”真実を暴く週刊誌ジャーナリズム──。毎週発売される各週刊誌の中から、伝説の編集長・元木昌彦が選りすぐりのスクープ大賞を認定!!
●第17回(10月20日~10月26日発売号より)
ワースト第1位
第1位「中国発 酒井法子海賊版ヌード写真集」(「週刊大衆」11月9日号)
ワースト第2位
「酒井法子が問われる『ドラッグ・セックスの蟻地獄』」(「週刊ポスト」11月6日号)
ワースト第3位
「酒井法子どこまでしゃべる『覚せい剤とSEX』」(「フライデー」11月6日号)
まずまずで賞
「のりピー中国から届いた1億円オファー『アジア復帰計画』をスッパ抜く」(「週刊文春」10月29日号)
台風接近の中、覚せい剤取締法違反の罪で起訴された酒井法子被告(38)初公判の傍聴券を求めて、徹夜組を含めて6615人が並んだ。20席しかないから倍率は330分の1で、オウム真理教麻原彰晃被告(当時=本名・松本 智津夫)の時は256分の1だったから、史上最高倍率となった。
テレビも、フジテレビが特番を組んだ他、NHKとテレビ東京を除いて、各局、記者を大動員して生中継をしたが、2時からの鳩山首相の所信表明を中継したのはNHKだけだった。
どこかおかしくないかと思うのはヤボというものなのだろう。この国のこれからの形がどうなるのかよりも、覚せい剤女優の裁判にこれほどの関心が集まるというのは、この国の歪みの証左なのか、鳩山民主党への期待の薄さなのか。
どちらにしても、テレビはもちろんのこと、週刊誌も、再び「のりピー劇場」で部数を稼ごうと、苦肉の「のりピー記事」を掲載してはいるが、残念ながら読むに足りうるものは見当たらなかった。
先週火曜日発売だった「フラッシュ」と今日発売の「週刊現代」は、のりピー関連記事を扱っていない。これも見識だろうが、内実は載せるべき情報がなかったということだろう。
タイトルだけの見事な羊頭狗肉記事が並んだ中、まずまず読めるのは「週刊文春」の記事。中国では、今朝のニュースでも取りあげられていたように、ジャッキー・チェンやコン・リー並みの人気があるようだ。そこで「1億円で出演オファーが来たのです。4、5曲歌って、インタビューに応じてほしいという内容のものでした」とサンミュージック関係者が明かしている。このことは相澤正久副社長も認めているから事実のようだが、実現するためのハードルは高く厳しい。
「週刊朝日」は、芸能記者覆面座談会でお茶を濁しているが、取りあげるほどの内容はない。
この原稿を書いている間に、法廷が始まり、黒のツーピースでのりピーが登場し、高相法子、無職と答え、4年前から吸っていたなど起訴事実を全面的に認めた。相澤副社長が弁護側の証人として述べると、聞いている彼女は大粒の涙を流したと、テレビ各局は大騒ぎしている。
NHKからは「政治不信を取り払い新しい時代をつくろう。しがらみや既得権益を一掃して、国家公務員制度などの抜本的改革を進めていく。国民の利益、地球的な利益を考える」と、気追い込んだ鳩山首相の声が聞こえてくるが、どこまで国民の心に届くのか。
ワーストに選んだのは、タイトルと内容の乖離がありすぎると思うからだが、これだけの国民的関心事に、情報がほとんどない中、何とか読んでもらえるタイトルをひねり出そうとした編集部や編集長の努力を非難するものではない。
しかし、それにしても「フライデー」のタイトルは、ひねりもなければ熟考した跡も見えないのはいかがなものか。よってワースト第3位。「週刊ポスト」は「覚醒剤は性的快感を高める、いわゆる”セックス・ドラッグ”として使用されることが多い薬物です。使用時のセックスの快感が忘れられず、繰り返す。取り調べや弁護士との接見でも、性的快感の呪縛から逃れられなかったことを切実に訴えるケースは少なくありません」(小森榮弁護士)と、更正への道が難しいため、夫・高相と決別しなくてはダメだとしている。
しかし、公判では、検察から離婚について聞かれた際、今後、夫と話し合って決めたいと、言葉を濁した。
ポストによると、世界的に見ると、日本の覚せい剤の量刑は軽すぎるのだそうだ。シンガポール、マレーシア、タイは死刑。アメリカでも最高刑は終身刑なのだそうだ。
「週刊大衆」は、あたかも中国に、密かに撮られたヌード写真集があるかのようなタイトルだが、もちろんそうではない。「元清純派アイドルの乳首まで写し出された悪質写真が流失する危機にあるという。真相を徹底追跡!!」と書いているが、これぞマッチ・ポンプ記事の見本である。だが、ここまで腹をくくった記事づくりは、腹を立てるより「ようやるわ」と微苦笑するしかない。そのためワーストを贈呈。
予想通り、検察の求刑は懲役1年6カ月。「のりピー劇場第二幕」は、どういう結末になるのか。まだまだ注目を集めそうだが、第一幕ほど週刊誌にとって、美味しいものにならないだろうということだけはいえそうだ。
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。
【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
恐ろしき文化…
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