モードがマンガを模倣する! 非現実へと逃避するファッションの行方
#アニメ #ファッション #萌え
驚愕コラボによるファッションショー。怖いモノ見たさ半々。
ゴスでデスなメイクはこのときだけで、ふだんはかわいらしいお顔をしています
10月17日から25日まで開催の「秋葉原エンタまつり2009」。23日にはUDXのAKIBA SQUAREで「モードはマンガを模倣する」と題したシンポジウムが催された(信田阿芸子氏=日本ファッション・ウィーク推進機構国際ディレクター、中野香織氏=明治大学特任教授、山室一幸氏=株式会社INFASパブリケーションズ WWDジャパン編集長が登壇)。
「正直なところ、ファッション業界とアニメ(マンガ)業界には距離があるが、これをリンクさせようという趣旨」(信田氏)であり、異業種コラボレーションによって一点突破を図ろうとする意思は明白だった。
モードとマンガの関係を考えるに至ったそのきっかけは、今年の「VOGUE NIPPON」7月号に掲載された「ファッショニスタはマンガに夢中」という特集記事である。高飛車な「VOGUE」がマンガに「すり寄った」ことが衝撃だった。そして何より、2009年春夏モード(姫スタイル、ボンデージ、スクールガール風)がMangaの影響下にあると、あえて「こじつけた」内容になっていることが重要だった。ここで語られているMangaとは、中野氏によれば「コミックだけでなく、アニメやフィギュアまで含めた曖昧なイメージの総体」であり、ほかの呼び方であってもなんら問題はない。かなり幅の広い解釈になっている。
の表紙を見せ、マンガ(アニメ)のモードへの
影響が濃いと語る山室氏
たとえば山室氏は自身が編集するWWDを呈示した。そのモデルが着ている服はアニメのコスプレでもなければアニメ風を模したわけでもないが、アニメの影響下に置かれていると言われればその通り、という現実離れしたファンタジックなものだった。
「どこかファンキーなウィッグをつけている。アニメチック」(山室氏)
そのものズバリの、アニメコスプレ風のデザインを意図するのではない。もっとネイティブな感覚でマンガやアニメがデザイナーのインスピレーションに取り込まれている、マンガは日本人が思っているよりも遙かに普遍的である、という一貫した主張があった。
この潮流は2003年が起点だと言う。
「ルイ・ヴィトンのマーク・ジェイコブズと村上隆とによるモノグラム・マルチカラーが始まった年であり、世界コスプレサミットが開催された。この年に何があったか。イラク戦争やSARSの集団発生があり、9.11でニューヨークのツインタワーが崩れ落ちた。新しい世紀が始まった」(中野氏)
ファッション界もデッドエンドにぶち当たっていた。
「アポロ13号が月面着陸した1960年代、パリコレで発表されたのは宇宙服のようなコスモルックだった。ところが21世紀に入っても、オレたちはジャージやデニムを着ている。03年まで何も始まっていないという気持ちが、デザイナーにはあった」(山室氏)
音楽にしろファッションにしろ、既存の方法論をやり尽くし、90年代に流行ったリミックスも飽きてきて、ついにやることがなくなった。もろもろの舞台裏も暴露され、人々はファッションに夢を見なくなった。そこでコスプレに、マンガ(アニメ)に、ファンタジーを求めたというのである。
たしかに、浜崎あゆみ以降の目を大きく見せるメイクや、アニメやエロゲーに出てくる美少女の穿くニーソックスが一般化していることを考えれば、人々が非日常を志向しているのは明白だ。
「リーマンショック以前からそうでしたが、いまは変革期。欧米ブランドもそのままでは生きていけない」「日本のファッション関係者も狭い世界に閉じこもらず、マンガやアニメのクリエイターとコラボしていくべき」と、信田氏は言う。
山室氏はこう締めくくった。
「デザイナーの世界で、トップのトップはたしかに外国人。しかしアニメ的な仮想空間でトップになれるのは日本人」
本シンポジウムのモデレーターを務めた信田氏は、4年前にイタリアを訪れたとき、イケメンのタクシードライバーに日本アニメオタクであることをカミングアウトされておおいに驚いたという。お高くとまっていたファッション界が、オタクという黒船に揺り動かされつつある現状を自覚した点はよし。
欲を言えば「モードのアニメ化が正解なのか?」という疑問も呈示してほしかったが、それは次の段階になるのだろう。
(取材・文・写真=後藤勝)
コスプレとどこがちがうの、とか言わない。
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