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闘いを止めない”オスの生き様”が魂を揺さぶる『THE OUTSIDER─獣たちの凶宴』

outsiderbook.jpg『THE OUTSIDER―獣たちの凶宴』竹書房

 いま最もチケットが取りづらい格闘技興行をご存知だろうか? 元プロレスラーの前田日明が主催する「THE OUTSIDER(ジ・アウトサイダー)」がそれである。腕に覚えがある暴走族、ギャング、チーマーなどが全国から集まり、リングの上でタイマン勝負。試合前のメンチ切り、試合後の乱闘も名物の一つと化しており、コワモテの応援団や怖いもの見たさの好事家らで会場は毎回超満員になる。

「THE OUTSIDER第8戦」レポートはこちらから


 この本は、そんな異色の格闘技興行から生まれた5人の人気選手の半生を迫った”不良ノンフィクション”である。

 地元のヤクザをボコボコにしたり、交番を襲撃したり、右翼の街宣車に乗ってナンパへ繰り出したり……といった各人各様のハチャメチャな過去が明かされているのだが、これは単なるワル自慢の本ではない。暴力に頼らざるを得なかった複雑な生い立ち、腕力や狂気で周囲を支配しながらも実は怯えていた本心、やがて味わう敗北の屈辱、そこから生まれた新たな希望なども赤裸々に綴られており、不良カルチャーに嫌悪感を抱く者でさえ、思わず胸を締め付けられる描写も多い。

 リングの上では凶暴なだけに、彼らの弱気な一面が印象に残る。ワンパンチKO伝説でその名を轟かせた不良時代の与国秀行は、やがて暴力の連鎖に疲れ果て、「俺、本当はタイマンが怖いんだよ」と敵に本心を吐露することで抗争を終結させたという。いわゆるオラオラ系で、アウトサイダーへの出場を二つ返事で決めたという黒石高大も、試合前日は「布団かぶりながらビクビク」で眠れなかったと明かす。「殺人は悪ではない」とうそぶく渋谷莉孔も、両国大会の入場直前は「注射前の子供みたいな状態。マジで怯えてた」と振り返る。

 それでも彼らは、大観衆が見守るリングへと上がった。不良にとって「ケンカの強さ」は生命線。人前でボコボコにやられたら、これまで築き上げてきたものをすべて失うかもしれないというのに、なぜこの戦いに挑んだのか?

「逃げないで向かった人間が、やっぱり最後は本物じゃないのかな。本物が少ない時代じゃん? だから俺はプロを目指すわけじゃないけど、あのリングには立ちたい。本物のケンカ師として」(黒石高大)

「本気で打ち込んだら、良いにせよ悪いにせよ、どっちにしろ結果はついてくるじゃない? 絶対それはいい経験になる」(吉永啓之輔)

「見せ物でも、イキがるわけでもなく、俺が出たらどうなるんだろうって、それが自分でも面白そうだから出てみたんだよ。やらないより、やったほうがいいもん。なんでも」(高垣勇二)

 こうした特攻精神は、今も昔も変わらない日本の不良の美徳のようだ。実はこの本に出てくる5人はいずれも、アウトサイダーのリング上で一度は苦杯を舐めている。だが、彼らの多くは再び、三たびとリングに上がり、その不屈の闘志で多くのファンを獲得しているのだ。

 自意識過剰の目立ちたがり、と冷笑する向きもあろうが、他意識過剰で何もできないチキンよりも、彼らは魅力的である。地位も名誉もカネも女も、欲しけりゃ自力で手に入れる。チャンスが来たら迷わず飛び込む。転ばぬ先の杖は持たない。「生き急ぎ」とも「死に急ぎ」とも言える彼らの行動哲学は、すべてのオスの魂を少なからず揺さぶるはず。

 暴力性はさておいて、そのアグレッシブさは見習いたい。本の裏表紙には「全国の不良たちへ捧げる──」とあるが、むしろニートや草食系男子に捧げたい一冊だ。
(文=ダニーK)

THE OUTSIDER―獣たちの凶宴

これが等身大の不良

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最終更新:2009/10/24 11:00
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