日本版キャストが好演! 情けない大人の青春映画『サイドウェイズ』
#映画 #邦画
この夏、織田裕二主演の『アマルフィ』をヒットさせ、正月にはこれまた大ヒット確実の『のだめカンタービレ 最終楽章』が控えてるフジテレビが、地味で小粒だが、いい味の大人向け映画『サイドウェイズ』(チェリン・グラック監督)を作った。実はこれ、2004年の第77回アカデミー賞で作品賞を含む5部門にノミネート、脚色賞を受賞したアレクサンダー・ペイン監督のアメリカ映画「サイドウェイ」を、小日向文世、鈴木京香、生瀬勝久、菊地凛子の出演で日本映画として描き直した作品なのだ。
冴えないシナリオライターの道雄(小日向)が、ロサンゼルスに住む親友・大介(生瀬)の結婚式に出席するため、当地を訪れる。道雄は、独身最後の1週間を謳歌したい大介とカリフォルニア、ナパ・バレーのワイナリーを巡るドライブ旅行に出ることになるが、そこでかつて思いを寄せていた女性・麻有子(鈴木)と再会。仕事もプライベートもパッとしなかった道雄の生活に、カリフォルニアの自然と麻有子の存在が徐々に潤いを与えていく。一方、大介は婚約者のいる身ながらも、麻有子の友人で日系アメリカ人女性のミナ(菊地)を口説き落とそうと攻めに入り、ミナもそんな大介に熱を上げていくが……。
『サイドウェイ』はハリウッドメジャーの20世紀フォックスが製作したが、本作は日本のフォックスがフジテレビと共同で製作。『踊る大捜査線』でおなじみフジの亀山千広プロデューサーは、「日本映画には大人向けの青春映画がない」という思いから、「サイドウェイ」日本版の製作を決意したという。ハリウッド映画を日本でリメイクするという試みは珍しものの、オリジナル作の公開からまだ日が浅いことを考えると、いま作る必要性というものにはちょっと疑問を感じるが、しかし、そうした半信半疑な気持ちを吹き飛ばす心地よさが、この映画にはある。
and Fuji Television Network, Inc.
オリジナルはポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ主演で、うだつの上がらない中年の主人公が、結婚を控えつつも女にだらしのない親友とナパ・バレーのワイナリーを巡るという設定は同じ。しかし、オリジナルの2人は日本版のそれよりもやや鬱々とした印象が強く、対して日本版は小日向文世と生瀬勝久の好演もあって、同じ”情けない中年男”でも、こちらのほうが笑いも親しみやすさも大きい。そこへいつもの大人の落ち着いた雰囲気をかもし出す鈴木京香と、”かわいらしい女の子”を意外なほど(といっては失礼かもしれないが)演じきり、さすがの演技力を見せつける菊地凛子が加わって、役者陣に申し分はない。
そして、全編を通じてロケ撮影されたナパ・バレーの風景は、澄んだ青い空にどこまでも広がるワイン畑など、解放感たっぷり。さらに『フラガール』のヒットで一気にファン層の広がった感がある、世界的ウクレレ奏者ジェイク・シマブクロによる劇伴が心地よく、ラヴァーボーイ、ケニー・ロギンス、シンディ・ローパーなどが奏でる80年代のヒットナンバーが、当時青春時代を送ったアラフォー世代の大人たちの心に響くこと請け合いだ。
主人公たちは、40代にして思わぬ”人生の寄り道(サイドウェイズ)”をたどることになるが、根をつめて日常を生きている時、この映画を見ると、ふっと肩の力が抜ける、そんな作品に仕上がっている。熱い夏が過ぎ、心身ともに1年の疲れがそろそろ出てくるこの季節、映画館でゆったりとした気分に浸りたい時にもちょうどいい作品だ。10月31日より公開。
(文=eiga.com編集部・浅香義明)
『サイドウェイズ』
<http://eiga.com/movie/54221>
『サイドウェイズ』特集
<http://eiga.com/movie/54221/special>
たしかにキャストが地味だった
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