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“読まず嫌い”必見! 愛され続ける文豪・太宰治作品が続々公開

pandranohako.jpg10月10日よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー!
(C)2009「パンドラの匣」製作委員会

 今年で生誕100周年を迎える文豪・太宰治の作品が相次いで映画化され、その中の2本『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』と『パンドラの匣』が揃って10月10日に公開される。

『ヴィヨンの妻』は、先月カナダで開催された第33回モントリオール世界映画祭で根岸吉太郎監督が監督賞を受賞したことでも話題となった。モントリオール映画祭といえば、昨年は『おくりびと』がグランプリを受賞し、オスカー受賞への第一歩となった映画祭。来年のアカデミー賞の外国語映画賞日本代表作品は、やはりモントリオールで脚本賞を受賞した佐藤浩市主演の『誰も守ってくれない』に決まっているので、『ヴィヨンの妻』がアカデミー外国語映画賞を受賞することはないが、『おくりびと』と同じ映画祭で評価されたという点は興行的にもプラスになりそうだ。

 映画は、太宰の短編小説「ヴィヨンの妻」をベースに、「思ひ出」「灯籠」「姥捨」「きりぎりす」「桜桃」「二十世紀旗手」といったいくつかの太宰の短編をミックス。しかし、あくまで「ヴィヨンの妻」を軸としているところは一本筋が通っていて、他の短編からは要素をうまく抽出したという感じで、1本の長編映画として原作読者にも納得の出来になっている。

 主人公は人気作家・大谷(浅野忠信)の妻、佐知(松たか子)。大谷は売れっ子作家でありながらも、生きることに苦悩し、酒に溺れて愛人との破滅的な恋を繰り返していた。ある日、なじみの小料理屋でたまった酒代を踏み倒したばかりか、店の売上金を盗んで逃げようとする。店の主人に追い詰められた夫の姿を見た佐知は、自分が「人質」になって小料理屋で働くことを提案。佐知は持ち前の明るさで常連客の人気者になり、店は繁盛するが、夫の生活は相変わらず。店には大谷の愛人(広末涼子)や、佐知に恋心を抱く青年(妻夫木聡)、佐知がかつて恋していた男(堤真一)なども現れ、さまざまな人間模様が繰り広げられるが、佐知は夫への愛を貫いていく。

 舞台となる昭和20年代の生活を再現した衣装や美術も出色。松や広末の濡れ場もあり(さすが日活ロマンポルノ出身の根岸監督というところか)、映画にはしっとりとした艶があって、引き込まれる。大人向けの作品だ。

 一方の『パンドラの匣』は、『パビリオン山椒魚』など、ちょっと風変わりな映画を撮ってきた若手監督の冨永昌敬が、太宰の同名小説を映画化。

 結核を抱えた体のために出兵できず、自身を「余計者」だと卑下していた青年ひばり(染谷将太)は、太平洋戦争終結の玉音放送を聞きながら喀血し、「健康道場」と呼ばれる結核療養所に入る。個性的な患者たちとの友情や、助手さんと呼ばれる看護士たちとの恋を経験し、ひばりは新しい時代の「新しい男」として生まれ変わろうと決意する。

 『フレフレ少女』などで知られる若手の染谷将太が主演。仲里依紗、窪塚洋介らが出演しているほか、「乳と卵」で芥川賞を受賞した美人作家の川上未映子が、ひばりが憧れるべっぴんの助手さんとして演技に初挑戦しているのも見どころ。

 特に作品を読んだことがない人ほど、「暗い」というイメージを抱いている場合も少なくない太宰治だが、この2本の映画を見れば、決して「暗い」だけではないことが分かるはず。『ヴィヨンの妻』の佐知は、ただ封建的な社会の中で夫に尽くしているのではなく、自らの意思で信じた道を貫く女性の美しさ、強さがあり、それゆえに夫婦の生活は荒んでいても、そこには絶望よりも一筋の光明が見えるし、『パンドラの匣』で描かれる「健康道場」というユーモラスな舞台での若者たちの生活や純な恋もまた然り。

 自身の破滅的な人生をつづった自伝的小説「人間失格」や、没落貴族の末路を描いた「斜陽」などが代表作としてあげられるため、どうしても「暗い」と思われがちだが、それは太宰のほんの一面にすぎない。「走れメロス」のような真っすぐな娯楽小説を書いていたのもまた太宰治なのだ。「読書の秋」とも言われる季節にもなったことだし、いまなお愛される文豪の世界を、まずはスクリーンで堪能してみるのはいかがだろうか。
(文=eiga.com編集部・浅香義明)

『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』
<http://eiga.com/movie/53868>

『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』映画評論
<http://eiga.com/movie/53868/critic>

『パンドラの匣』
<http://eiga.com/movie/54289>

文豪ナビ 太宰治

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最終更新:2009/10/09 15:00
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