品川祐さんの至言「なったらいいなと思ってることは、だいたい実現する」(前編)
#対談 #サブカルチャー #品川祐 #小明 #大人よ教えて!
モテない、金ない、華もない……負け組アイドル小明が、各界の大人なゲストを呼び出し、ぶしつけなお悩みを聞いていただく好評連載。第5回のゲストは、2作目の小説『漫才ギャング』を上梓した品川祐さんです!
[今回のお悩み]
「ポジティブになりたいんです……」
──品川さん、新刊『漫才ギャング』(リトルモア)の発売、おめでとうございます! すごいですね~芸人さんとしてのみでなく、小説家としても前作の『ドロップ』が漫画化に映画化で大成功で、私の『アイドル墜落日記』もあやかりたーい! しかし普段テレビにも出ながら執筆って、かなり大変だったんじゃないですか?
品川 大変じゃないって言ったらアレですけど、書きあがっちゃうとその苦労も思い出せないっすよね(さわやかに)。
──おお、登山家みたいに、到達したときの達成感と快感みたいな……。
品川 (遮って)覚せい剤と一緒ですね。
──ちょっと! タイムリー!
品川 だから覚せい剤もやらないんでしょうね。お笑いもそうなんですけど、これ以上に気持ちいいもんが存在しないから、薬なんかやらないね(さわやかに)。
──良かった! そういえば昔、『27時間テレビ』(フジテレビ)の「カマ騒ぎ」で芸人さんの暴露合戦になったとき、庄司さんが自分も相方の暴露をしようとしたら、品川さんが、「おまえ、今チャンスだと思ってかもしんねーけど、これはピンチだぞ!!」って言ってましたよね。
品川 ……ああ、そうっすね(力なく)。
──あのときは何も考えずにゲラゲラ笑ってたんですけど、ヤンキーの青春小説『ドロップ』と、主人公が留置所にブチこまれるところから始まる『漫才ギャング』を読むと、あのとき庄司さんが言わんとしたことは相当まずいことなのだろう、と思っちゃうんですけど。あのとき庄司さんが暴露しようとしたのが何のことだったのか、ずっと気になってて。
品川 いや、吉本に入る前のことなんで……(そっけなく)。
──つまり時効……?
品川 時効っていうか、もう罪をつぐなってますから! ちゃんと更生してから吉本に入ったんで(笑)。
──なるほど! その頃の刺激的な経験が小説に生かされてるわけですね。
品川 まぁ、次世代の安部譲二(元ヤクザの小説家で漫画原作者)的な(笑)。
──品川譲二ですね! ところで『漫才ギャング』は売れなくて閉鎖的でちょっと人を見下したところのある芸人の飛夫と、素直で明るいけどやんちゃなギャングの龍一の話ですけれど、モデルはいるんですか?
品川 ま、しいて言えば、2人ともぼくの若いときがモデルになってる感じですかね。主人公の飛夫の社交性がなくてネガティブな感じとか……。
──あ、そうなんですか! 今は品川さんもヘキサゴンファミリーとして、すごく楽しそうにしている印象なんですが……
品川 吉本に入ってから、松本(人志)さんの『遺書』を読んで、軽く洗脳されてたんすね。「お笑い芸人は本番だけ面白ければいい」みたいな。あと、クラスでは騒いでる奴を斜で見て、「俺のほうが黙ってるけど面白いんだ」って思うような。「お笑い=静かでセンスのあるほうがいい」って、どっかで思い込んじゃって。それと、売れないっていうのと、借金とかが全部重なって。けっこうマイナス思考で、今でも毎日悩んでるんですよ。
――今でもですか! やっと共通点を見つけた! 私もめちゃくちゃ悩むんですよ。考えが全部うしろ向きなんで、悩みの着地地点もものすごいうしろ向きで、結局、いつも悪夢にうなされて胃炎とか円形脱毛症になっちゃったり……。
品川 あはは。ぼくねえ、あんまり円形脱毛症とか縁がないんですよ。だから、本当はどっか楽天的なんでしょうね。考え込むのは考え込むけど、悩む自分を理論でねじ伏せるっていうか。はじめは「悩まないようにしよう」とか、悩まない人をうらやましがったりするじゃないですか。でもやっぱ悩むんで、だったら自分を「悩むのが好きな人」にしようって思ったんですね。つまり、「悩んでる時間」を「自分が考えをめぐらせる楽しい時間」って思うようにしたんです。そうするとけっこう楽ですね~。人間関係について悩むっていうことは、以後、円滑に人間関係を進めていこうっていう向上心の表れだ! みたいな。
──前向き! 有吉さんにつけられた「おしゃべりクソ野郎」ってあだ名が浸透して、今はもうご自分からネタにしたりもしてますけれど、初めて言われたときはどう思われましたか? 決して良い言葉ではないわけですよね、クソ野郎って。
品川 あのときは……すごい微妙でしたね。言われたのは番組の流れだから、ぜんぜん、ものすごいウケてたし、良かったんですけど……関係ない奴に「おしゃべりクソ野郎」とか言われると、「てめえが言ってんじゃねえよ!」みたいな。
──失礼を笑いにするって、根本に信頼関係があってのものだし、難しいですよね。
品川 はい。でも、あれからもう2年たって、そうなると、「いいキャッチフレーズだな」って思ってますけどね。「どうせ俺はおしゃべりクソ野郎ですから」みたいな。なんかかっこいい言葉だなって最近思うようになってきて(笑)。
(後編につづく/取材・構成=小明/「サイゾー」10月号より)
●品川祐(しながわ・ひろし)
1972年、東京都生まれ。お笑い芸人、作家、映画監督。95年に漫才コンビ「品川庄司」を結成しデビュー。9月18日に、2作目となる小説『漫才ギャング』(リトルモア)を発売。また、自身が原作、脚本、監督を務めた映画『ドロップ』DVD(よしもとアール・アンド・シー)も好評発売中。
●小明(あかり)
1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、現在フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)の販売数を思って眠れぬ日々。
ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/>
今作も映画化間違いなし?
●小明の「大人よ、教えて!」”逆”人生相談バックナンバー
【第4回】 福本伸行さんの至言「俺は『面白いものを作ろう』じゃなくて、作れちゃう」(前編)
【第3回】 大根仁さんの至言「ネットの書き込みなんて、バカにしていいんじゃない?」
【第2回】 杉作J太郎さんの至言「そんなことより『ファフナー』見ろ、『ファフナー』を」
【第1回】 河原雅彦さんの至言「もう無理やりヤラれちゃえばいいんじゃない?」
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事