求めるものはゴクミ? 上戸彩? 国民的美少女コンテストの前途(後編)
#上戸彩 #後藤久美子
確かに上戸だけでなく、最近は、米倉涼子(第6回審査員特別賞)、福田沙紀(第10回演技部門受賞者)、忽那汐里(第11回審査員特別賞)などグランプリ以外の子のほうが活躍しているケースも多い。前出の今井氏は、次のように説明する。
「言ってみれば『審査員特別賞』は準グランプリのようなもので、伸びしろの大きい子を選んでいます。たとえば、上戸はすごい才能を持っていると感じてましたが、まだ子どもで未知数の部分も多かった。それでも強く推す審査員がいて、将来の成長に賭ける形で授与しました。福田は演技力は抜群でしたが、グランプリにするには見極めが難しかったので、部門賞どまりだった。力はあったけど、本番では硬かったんです。それでもコンテストを見た『3年B組金八先生』(TBS)の関係者から、すぐに出演依頼がありました。そのようにすぐに仕事が決まる子もいますが、基本的には2年くらい先、16〜17歳を見越して審査しています。5年またはそれ以上、本格的なデビューに時間がかかる子もいます」
当然、グランプリを取ったからといってすぐにスターになれるわけではない。グランプリという冠の影響力も、一時に比べれば、弱まっている感も否めない。
この点は、オスカー側も理解しているようで、「視聴者の好みが多様化しているので、冠だけで勝負できる時代ではないのは確かです」(今井氏)という。そのため、最近のグランプリ受賞者についても、阪田瑞穂(第8回)は舞台、渋谷飛鳥(同)はドラマ、河北麻友子(第9回)はファッション誌などと、一見地味ながら、各自の特性に合わせた活躍の場を用意し、じっくりと育てるという戦略を取っているようだ。
「芸能界の構造自体が変わったんです。万人受けする美少女タレントが求められなくなる一方で、最近は、舞台やファッション誌出身で、20代半ばくらいから活躍しだすタレントさんも増えていますからね。逆にいえば、育ててみないとわからないという状況。国民的美少女コンテストが第7回以降、毎回6~9人もの受賞者を選んでいるのも、”数を撃たなきゃ当たらない”というプロダクション側の心理が働いているんだと思いますよ」(芸能記者)
圧倒的な告知力と築き続けたブランド力
芸能界の中で、その影響力や役割が徐々に変化しつつも、20年以上続く国民的美少女コンテスト。応募総数は平均約10万人と、ホリプロタレントスカウトキャラバン(約3万6000人/08年)をはるかに超える。
第7回のコンテストの審査員も務め、上戸彩を見いだしたアイドル評論家の中森明夫氏はこう語る。
「このコンテストの金のかけ方はすごい。プロモーションに相当金をかけてるから、応募者数も多い。この少子化の時代にあって10万人の応募とは、きれいな娘を持つ目立ちたがりの親は、もれなく応募しているはず。ただ、金をかけて大規模なコンテストを開催したからといって、うまくいくわけではないのが芸能のおもしろいところ。たとえば、エイベックスが全国47都道府県で開催して、11万人から選んだオーディションの結果が、Dreamですよ。『ええっ!?』てなるでしょ」
そんな中、国民的美少女コンテストが20年以上も続いた秘訣とは? 水上氏はこう見る。
「話題になったコンテストでも、結局続かず、今はなくなってるものが結構ある。ここまで続いていると、『継続しているコンテスト』というだけで大きな価値があります。全国10万人もの少女に変わらず『応募してみたい』と思わせるのは、惹き付けるパワーやブランド力がかなりあるということ。そのため、原石だって集まりやすい。また、コンテスト出身者が先輩後輩と代々つながっていくことで、タレントとしての仕事もつながっていくというメリットもあります」
ただ、今後も続けるに当たって課題はある。水上氏が続ける。
「受賞者がせっかくデビューしても、ファンと直接触れ合う機会がだんだん少なくなってきたように思います。大きい事務所ですし、テレビ局や広告代理店対策もばっちりなんですが、純然たるファンがなかなかつかめない。一昔前や小さな事務所の戦略と思われるかもしれませんが、もっとファンに目を向けた対策を考えてほしいですね。上戸さんも『3年B組金八先生』で注目されるまで実は時間がかかりました。初期はアイドルグループのZ-1のメンバーとしてイベントに出たり、ソロでも一部のアイドル誌の取材を受けたりしてきました。その地道な活動があってこそ、今の成功があるのだと思います。コンテストに応募する少女たちも、ただ美しいタレントよりも、どこか手の届く自分と近いタレントを目標とする傾向があります。今回グランプリを受賞した工藤さんには即戦力としての力を感じるので、早い段階で歌やドラマが決まると思うのですが、直接ファンと接触できる機会があるといいですね」
美少女は気高く崇高でなければならない。しかし、たまには身近な存在でなければならない。その案配が難しいのである。
今後の展開として、今井氏はアジア進出を語る。
「北京やソウルで開催するなど、日本を飛び出てやってみたいですね。それと、コンテストの方法論自体を考えていかないと思っています。インターネット初期に通信会社と組んで、いくつかの会場をつないで地方予選を行ったことがあります。あの頃は動画がスムーズに流れない状況だったのですが、今はそれよりいいシステムになってるので、ネットを使って、効率良く、より多くの子たちを細かく審査するという方法もあると思います」
多くの芸能プロから嫌われている「サイゾー」に、創刊当初から変わらぬ協力をしてくれる(上戸さんも米倉さんも表紙に出てくれている)オスカーには、美少女文化の牽引役として、今後も奮闘していってもらいたいものだ。
(文=安楽由紀子/「サイゾー」10月号より)
やっぱ、かわいい~。
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