まだまだ現役。大正時代のレトロなビルを収めたDVD『東京ビルヂング』
#DVD #サブカルチャー
”ビル”といえばまず、六本木ヒルズや東京ミッドタウンなどが頭に浮かぶが、それらの高層建築の先輩にあたるのが、銀座や日比谷に建つレトロ・ビルヂング。その多くが大正末期~昭和初期生まれで、経てきた年月を数えればおじいちゃんといったところ。今となっては”レトロ”と呼ばれるが、当時、鉄筋コンクリート建てにエレベーター搭載の西洋建築は最先端のものだった。
大正12年(1923年)9月1日、関東大震災が起こり、東京は甚大な被害に見舞われた。政府は震災復興のため、インフラ整備に力を注ぎ、結果、地震に耐えうる多くのビルヂングが生まれたのだ。
この『東京ビルヂング』は、大正から昭和40年代までに、ルネサンス様式やロマネスク様式といった古典主義建築様式で造られた、現存する15棟のビルを収録したDVDだ。ジャズやクラシックのメロディに乗ってビルが紹介され、落ち着いた風合いの映像となっている。銀行の社屋に商店の店舗、アパートメントに教会と、ビルの用途は様々。石造りで優美な装飾が施された建物は、荘厳で格調高く、歴史を感じさせてくれる。”くにゃっ”と曲がった手すりが可愛いらしく、踊り場の窓を飾るステンドグラスもオシャレだ。エントランス・ホールを彩るえんじや緑のモザイク・タイルがシブカッコイイ。
懐古趣味、というとしばしば揶揄されるが、古い街並みを残していくことは、文化にとって大切なことではないだろうか。震災に戦災と、東京は二度、焦土となり、そのつど形を変えてきた。失ったものを取り戻すことは出来ないが、わずかに現存するものを守り、残していく努力は出来る。江戸の町並みはもう無いけれど、東京のレトロ・ビルヂングが、大正ロマンと呼ばれた時代の空気をあなたに感じさせてくれるだろう。
(文=平野遼)
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