新堂冬樹は、毒々しいのがお好き!? 毒蟲最凶決定戦『虫皇帝POISON』
#DVD #サブカルチャー #新堂冬樹
文豪ヘミングウェイがスペインの国技・闘牛を愛したように、日本文学界の異端児・新堂冬樹がこよなく愛しているのが”虫バトル”だ。中国では1000年以上の歴史を持つコオロギ相撲、フィリピンほか東南アジア各地で行なわれているクモ相撲、日本では縁日の風物詩として親しまれているカブトムシ相撲、クワガタ相撲など世界各地に様々な虫相撲の文化がある。しかし、新堂冬樹がプロデュースする虫バトルは、食うか食われるかの極限のリアルファイトだ。世界の珍しい虫たちが一堂に会したDVD『世界最強虫王決定戦』はシリーズ累計8万本のヒットを記録。昆虫と毒蟲が対抗戦形式で闘う新シリーズ『虫皇帝 昆虫軍vs毒蟲軍』は、新堂冬樹初監督作品として8月に劇場公開されている。そして間髪置かずに9月25日(金)にリリースされるのが『虫皇帝POISON 毒蟲vs毒蟲』(GPミュージアムソフト)。サソリ、ムカデ、毒グモたちが三つ巴の死闘を繰り広げ、最強毒蟲が決定するまでを追ったドキュメント映像となっている。
“タランチュラ界のビッグボス”キングバブーンが重量級のレスリング選手のごとく8本の頑強な足を使って獲物を押さえ込もうとすれば、アフリカ産のフラットロックスコーピオンは相手の一番柔らかそうなボディにピンポイントで毒針を撃ち込む。蛇腹を妖しくウェービングさせるハブムカデのズームアップされた姿にはヤマタノオロチは実在したのではないかという錯覚を覚える。そして何よりも、毒蟲と毒蟲の間合いにはおぞましい負のオーラが渦巻く。地獄のコロシアムと化したアクリルボックス内のバトルは、やわな神経では直視できないほどだ。
(c)2009GPミュージアムソフト
劇場版『虫皇帝』は外国産の巨大サソリに立ち向かう国産カブトムシに思わず声援を送りたくなる対戦カードだったが、毒をもって毒を制する毒蟲同士の噛み合い・刺し合いには、もはやどちらを応援しようという気は微塵も起きない。感情移入のしようがない。もちろん、そこには善と悪もない。狭いアクリルボックスの中に残されるのは、より強いものが勝ち残ったという結果と食べ残された敗者の骸だけである。
「寝るのは3日に1度、4~5時間程度」という多忙を極める人気作家であり、芸能プロダクション「新堂プロ」の代表取締役、そして『虫皇帝』エグゼクティブプロデューサーを務める新堂冬樹のプロフィールを振り返ってみよう。1966年大阪府に生まれ、間もなく転居。『ファーブル昆虫記』『シートン動物記』などを愛読する少年時代を過ごす。高校を中退し、アルバイトで稼いだ貯金を元手に単身上京。身寄りのない東京で食べていくために闇金融の世界に入り、瞬く間に才能を発揮。18歳にして貸し付け業務を手掛け、月収2,000万円を稼いでいる。闇金融の世界にも善と悪はない、返す・返さないの暗闘の毎日だ。金に困った人間の行動心理を知り尽くした彼はやがて経営コンサルタントへと転じ、さらに1998年に闇金融時代の体験をベースにした処女小説『血塗られた神話』(講談社)でメフィスト賞を受賞。一躍、人気作家として表舞台へと躍り出る。
代表作のひとつ『毒蟲vs溝鼠』(徳間書店)は裏社会に生きるサディスト、被害妄想狂、復讐鬼たちが2チームに分かれ対抗戦形式で激突する。山田風太郎の不朽の名作『甲賀忍法帖』に匹敵する妖しさに満ちた内容だ。その一方、8月に公開された鈴木京香主演の”感涙系”映画『ぼくとママの黄色い自転車』の原作者であり、常盤貴子がラジオ局のDJに扮する『引き出しの中のラブレター』(10月10日公開)のノベライズも手掛けている。
プラトニックな愛を描いた『あしたのジョー』や『愛と誠』の原作者・梶原一騎のいかつい顔写真を見て、子どもの頃に驚いた記憶があるが、大人になった今は破天荒な生き方しかできなかった人物だからこそ、清廉なものに恋いこがれ続けてきたことがわかる。新堂冬樹が”黒新堂”と”白新堂”と振り幅の大きなふたつの世界を書き分けているのも、梶原一騎の作家としてのメンタリティーと通じるものを感じさせる。
新堂冬樹が愛する毒々しさを極めた世界が、『虫皇帝POISON』ではその日の食欲が消え失せるほど満喫できる。生き延びるために環境に適応して特殊な進化を遂げてきた毒蟲たちのまがまがしさには、”悪魔の芸術品”とでも言うべき美しさと威厳が備わっている。毒蟲たちが放つ圧倒的な生命力と闘争心にあなたの常識はたちまち麻痺し、道徳心は面白いように蹂躙されるだろう。
(文=長野辰次)
●『虫皇帝POISON 毒蟲vs毒蟲』
企画・構成・監督・総指揮・解説/新堂冬樹
製作・発売・販売元/GPミュージアムソフト
9月25日(金)リリース
http://www.gp-museum.com
えぐい。
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