「キングオブコント2009」M-1王者との一騎打ちを制した東京03の戦略
#お笑い #キングオブコント #東京03
9月22日、コント日本一を決めるお笑いイベント「オロナミンCキングオブコント2009」が東京・赤坂のTBSで行われ、東京03が優勝を果たした。東京03は豊本明長、飯塚悟志、角田晃広の3人組。この日は、ベテランらしい安定感のあるコントを見せて、見事に賞金1,000万円と優勝の栄冠を手にした。
結果から振り返ってみると、獲得した点数では上位2組の東京03とサンドウィッチマンが頭1つ抜けていて、この日の戦いは両者の一騎打ちの様相を呈していた。そんな中で、東京03がサンドウィッチマンを振り切って優勝できたのは、ネタ選びの時点での戦略の違いにあったのではないかと思う。サンドウィッチマンは、2本のコントを演じるにあたり、同じタイプのネタを持ってきていた。だが、東京03は、少し毛色の違ったタイプのネタを用意していた。そこが最終的な評価の決め手になったのではないだろうか。
サンドウィッチマンが見せた2本のコントは、「ハンバーガー屋」と「理容室」という設定だった。それぞれの店における店員と客の関係を軸にして、店員役の富澤が立て続けにボケを連発するのを客役の伊達がひとつひとつ丁寧につっこみ倒していく。息継ぐ暇もなく繰り出される笑いの波状攻撃に見る者はどんどん巻き込まれてしまう。さすがM-1王者という貫禄を感じさせる彼らのお得意のスタイルである。サンドウィッチマンは、2本のネタを通してこの形を貫いていた。
だが、東京03の方はそうではなかった。彼らの1本目のネタは「コンビニ」が舞台。豊本と角田が働くコンビニに、包丁を持った飯塚が強盗として現れる。飯塚が「金を出せ」と2人に詰め寄っても、過剰におびえる角田とあまりに物怖じしない豊本のどちらにも全く話が通じず、飯塚は「ちょうどいい奴はいねえのか!」と絶叫する。3人それぞれにしっかりしたキャラと役割があり、物語としてもオチまでの流れがきれいにまとまっている。
だが、2本目のネタは少し変わっていた。設定は「旅館」。旅行で旅館の部屋に訪れた男女3人が、ちょっとしたことをきっかけに気まずい状況に陥る。このネタは、1本目とは違って3人のキャラと役割がそれほど安定していない。3人が有機的に働いてまとまった1つのストーリーを見せるというよりも、より意外な笑いにつながる方向へ個々人が暴走しているような印象を受ける。いちばん最後に待っているオチも、良い意味で実にバカバカしい。
今年の「キングオブコント」では、準決勝で敗れた芸人100人が審査を担当していた。同業者である芸人たちが最後に選んだのは、同じタイプのネタを並べたサンドウィッチマンではなく、あえて毛色の違うネタを選んで芸の幅広さをアピールした東京03の方だったのだ。
1本目でかちっとした王道のコントを披露した上で、2本目ではバカバカしい笑いが詰め込まれたコントを見せた東京03。1本目のネタを「フリ」にして2本目を「オチ」にするというスケールの大きい戦略が見事に功を奏して、彼らは並みいる強豪を押しのけて二代目王者の栄冠をつかんだのである。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)
評価されるときがきました。
【関連記事】 東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」
【関連記事】 インパルス タフなツッコミで狂気を切り崩す「極上のスリルを笑う世界」
【関連記事】 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者・サンドウィッチマン
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事