警察の取り締まりは”冤罪製造システム”!? 悪質な交通行政に物申す書
#警察
運転中の携帯電話使用が道路交通法に違反することは今や常識。では、携帯電話を持っていない人間がそれを理由に違反切符を切られるなんてことがあるだろうか? 答えは「イエス」だ。
携帯電話を所持していないにもかかわらず運転中に通話したとして違反キップを切られた大阪の男性が、府警に対して処分の取り消しと100万円の損害賠償を求めて訴訟を起し、9月10日に大阪地裁でその判決が下された。警察が「見た」と主張していた携帯電話はついに発見されず、その結果「必要な調査を尽くすことなく漫然と違反を認定した」として、裁判所は処分の取り消しと10万円の支払いを大阪府警に命じたのだ。
いわば警察のでっちあげが証明された形なわけだが、こうした違法な取り締まりが日常的に行なわれていると明言するのは、このほど『切らせない!交通違反キップ』(ぶんか社)を出版した道路交通評論家の鶴田光秋氏だ。
「同類の『携帯通話』に類する事件だけでも最近2~3件は耳に入っている。表面化していない案件も含めればその数倍でしょう」と語る鶴田氏は、現在の交通取締りが「冤罪製造システム」に堕していると懸念する。
「飲酒運転やひき逃げなど悪質な運転に法の網をかけて厳罰で挑むのは大歓迎。ただ、真面目なドライバーをでっちあげてまで捕まえるなんて言語道断です」
納得いかない違反キップの経験がある運転手も多いはずだが、法治国家の日本でそんなでたらめな取り締りが横行しているとすれば恐ろしいことだ。その最も顕著な例の一つが、2006年3月に高知県春野町で起こった「高知白バイ事件」である。生徒を乗せたスクールバスが一時停止の後、国道に出て右折待ちしていたところへ白バイが猛スピードで突っ込んで激突。白バイ運転手は死亡。注目すべきはその後の警察の動きだ。「バスは止まっていた」「白バイが100kmくらいで突っ込んだ」との目撃証言はすべて黙殺され、逆に猛スピードで走っていたのはバスの方で、国道入口で急ブレーキをかけたバスに適正速度で走行中の白バイが衝突したという架空のストーリーが、その後の捜査報告書に記載されたのだ。
「警察はバスが急ブレーキしたと見せかけるために、なんとスリップ痕の捏造までしたのです。バス運転手から依頼された鑑定人の調査の結果、”痕”はタイヤによるものではなく液体で描いた模様だと判明しましたが、裁判では無視されました。警察と裁判所が身内の不祥事を善良な一市民になすりつけた許すべからず冤罪事件です」
業務上過失致死で逮捕された運転手は08年の上告審でも却下されて現在収監中の身。この事件は不審点が多すぎるとしてテレビ朝日が番組化したことでも話題になった。以下、本書にも収録されている運転手K氏から届いた鶴田氏への手紙の一部だ。
<衝突事故で白バイ隊員が死亡したことは事実なので、このことで下される処分は全て素直に従います。しかし、組織を守るためスリップ痕を捏造してまで事実を捻じ曲げる警察は絶対に許せません。私は獄中から再審請求を起します>
こうした信じ難い事件がなぜ起こるのか。鶴田氏は次のように語る。
「旧厚生省の薬害エイズや社保庁の年金問題にように、権力による事実隠蔽・人権侵害の構図が背景にあります。加えて現場警察官の能力欠如も大きな問題です。検挙率をあげて点数を稼ぐことだけが目的化されてしまい、一度捕まるとミスやでっちあげが途中で是正されることは皆無です。私がある署長に、『こんなバカな取り締まりを続けていたら警察の信用は失墜して他の犯罪捜査にも市民は協力してくれなくなりますよと言ったら、『それが問題なんですよねぇ』とポロっと本音を漏らしていましたよ」
悪質な運転や警察へのむやみな反抗を助長するのが目的では決してないと、鶴田氏は強調する。
「我々が安全運転を徹底すべきなのは当然です。ただ、善良な運転手が不当な取り締まりの被害者になってはならないし、そのための自衛の術が我々にあることを知ってほしい。そのための実践書がこの本です」
前述の「高知白バイ事件」をはじめ、過去の警察による捏造事件などさまざまな事例や警察への公開質問状、警察本部への取材の模様、不当な取り締まりへの対処法など、複雑で根深い問題が漫画やチャート図で視覚的かつ具体的に構成されている。道路交通法が一般市民のために存在する法律であり、警察機構の利権のためにあるのでないという原則を知るための指南書といえるかもしれない。
(文=浮島さとし)
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