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【元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第11回】

衆院選特別編 「週刊朝日」が他誌を凌駕! 週刊誌選挙予測記事を検証する

asahisenkyo.jpg「週刊朝日」9月4日号

部数低迷が叫ばれ、その存在意義が問われども、テレビや大手新聞が”書けない”真実を暴く週刊誌ジャーナリズム──。毎週発売される各週刊誌の中から、伝説の編集長・元木昌彦が選りすぐりのスクープ大賞を認定!!

●第11回(8月25日~8月31日発売号より)

圧倒的第1位
『民主300議席超で圧勝 自民100議席スレスレ』(「週刊朝日」9月4日号)

「おいおい、こんなに勝たしちゃって大丈夫なのかよ」と、心配になるほどの民主の地滑り的大勝だった。

 民主党308議席、自民党119議席。新聞も週刊誌も、民主党の圧倒的な勝利は予測していたし、直前の新聞各紙は「民主党320超えもある」と報じた。

 だが、大勝大勝と書かれると、有権者の間に、俺がひとりぐらい投票しなくても大丈夫だろう、そんなに民主党が強いなら自民に入れてやるかという「アナウンス効果」が出て、結果、300議席超えは難しいのではないかと、正直、私も思っていた。

 週刊誌の直前予測もそうした不安が出たのであろう。軒並み280から290議席に修正していた。「週刊現代」は8月22日・29日号で『自民党44、民主党390』という大胆予測をしておきながら、最新の9月5日発売号では『自民党141、民主党289』と無難な予測になってしまったことでもうかがえる。

 結果、「300超えの歴史的大勝」を直前予測したのは「週刊朝日」だけであった。

「森田実氏は自民党102、民主党326。野上忠興氏は自民党122、民主党307」

 特に、野上氏の予測はほぼ完璧である。

 今日の新聞は、民主党大勝の原因を探っているが、理由ははっきりしている。安倍晋三、福田康夫、麻生太郎と続いたお粗末な総理たちに、民主党は感謝状を贈らなければならない。真打ちともいえる最悪首相、麻生の出現で、民心はほとんど離れてしまった。

 自民党のオウンゴールという言葉が、メディアで度々出ているが、それしかない。民主党への期待ではなく、自民党政治に飽き飽きしたのだ。自民党に取って代わる可能性のある政党ならどこでもよかったから、自民党と名乗らなければ誰でも当選できる選挙になってしまったのだ。

 その上、子ども手当、高速道路の無料化など、景気浮揚策とはいえない形振り構わない「バラマキ戦術」が功を奏したということだろう。

 しかし、新聞や週刊誌が大騒ぎしているほどには、国民は熱くなっていない。とりあえず政権交代させようと考えただけなのだ。

 それなのに、権力批判を売り物にしている「日刊ゲンダイ」まで、手放しの喜びようだ。小沢一郎を長年追及してきた某週刊誌の幹部は、今年いっぱい小沢一郎も民主党追及もしないと、投票日前に宣言した。

 ここしばらくメディアははしゃぎ続け、民主党の保護者になろうとしているようだ。

 権力をチェックするべきジャーナリズムが、権力との距離感を忘れたとき、何が起こるかは歴史が証明している。

 だがそんな心配も杞憂に終わるだろう、なぜなら、民主党内に燻り続けているスキャンダルや権力闘争の火種はいつ発火してもおかしくないからだ。

 それにしても、当選後インタビューを受けた「小沢チルドレンたち」の何と個性のないことか。4年前の「小泉チルドレン」とうり二つである。「政権交代」「官僚支配打倒」「国民に優しい政治」のオンパレード。その上、記者会見で「みなさんのお暮らしをよくする」を連発する鳩山代表の答弁には、ビジョンもリーダーシップも感じられない。

 鳩山政権下で重要な地位を占めるであろうといわれている藤井裕久氏は、テレビに出てこう語った。

「これは革命ではない。(民主党に代わっても)7割はこれまでと同じ。3割変えられればいい。だから民主党にこれだけの票が集まったのだ」

 自民党のそっくりさん政権ができただけなのだ。

 小泉旋風で300議席を得た自民党は、4年で自壊してしまった。民主が瓦解するのは時間の問題だと、私は予測する。なぜなら、実質の最高権力者となった小沢一郎が、大量の「小沢チルドレン」を背景に、彼を育ててくれた田中角栄のように「闇将軍」として君臨することからくる党内の不協和音が高まるからだ。

 それに、労働組合、日教組、農協、特定郵便局長ら、強力な圧力団体を抱える寄り合い所帯で、国民に向いた政治ができるのだろうか。

 鳩山政権が動き出せば、ぼろが次々に出てくるのは間違いない。「週刊新潮」流にタイトルを付ければ「その筆で何と書く、鳩山政権崩壊の日」に、メディアは一斉に「やっぱり期待はずれの民主党」と書くのだろう。

 しかし、頼りないリーダーと闇将軍が率いる第2自民党を選択したのは国民なのだから、いささかの不始末には目をつぶって、来年の参議院選挙までは、見守ってやるぐらいの寛容さが、国民にもメディアにも必要なのかもしれない。

 だが、それには注文がつく。小沢氏が率いる軍団が、数を頼んで暴走しないならば、だ。彼にとって政党は、自分の目的を達成する手段に過ぎない。小沢が何を考え、何をしようとしているのかを見極め、批判するべきは堂々としなければいけない。

 これからの週刊誌は、小沢率いる民主党が、どこへ向かって進もうとするのかを注視し、警鐘を鳴らし続けることだ。「民主党政権誕生、万歳!」という宴は、もはや終わったのだから。
(文=元木昌彦)

motokikinnei.jpg撮影/佃太平

●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

小沢一郎 虚飾の支配者

闇の帝王

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最終更新:2009/11/02 19:37
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