貧乏ゆすりでビッグバン!? 明和電機がデザインする貧乏ゆすり測定器「YUREX」
#サブカルチャー
人間は一体、1日に何回 “貧乏ゆすり”をしているのだろうか――。
このような、生きていく上で知らなくてもまったく困らない問題を、貧乏ゆすり測定器・「YUREX」は解決してくれる。それもどうやら、ただ貧乏ゆすりの回数をはかるだけでない効果が得られるというのだ。
YUREXは、ナンセンスおもちゃの開発で知られるアーティスト・明和電機と、ユニークなウェブサービスで知られる、面白法人カヤックがコラボレーションして生まれた、奇跡の商品。カヤック社内でのアイディア出しから「貧乏ゆすりで発電し、エコを実現」という企画が生まれ、明和電機がデザインを依頼されたのだという。
──明和電機さんには、こういった外部からの依頼は多いのですか?
明和電機代表取締役社長・土佐信道さん(以下土佐)「いえ、YUREXが初めてです。モノ作りは僕にとっては芸術で、自分の情念の中から出てくるものだから、なかなかコラボというのは難しいんです。でも、カヤックさんから今回のお話をいただいたときに、”なんてバカバカしいんだ!(苦笑)”とある種感動して、引き受けました」
──逆にバカバカしくなかったらやってなかったですか?
土佐「そうですね。貧乏ゆすりで発電だなんて、超ニッチで、もう燃えました(笑)」
──こういうニッチでナンセンスな商品は、過去にも明和電機さんからたくさん出ていますが、ユーザーの方からの反応はいかがでしょう?
土佐「『やりおった! あいつくだらないことをやりおった!』とはよく言われます。もう本当に、自分の作りたいものしか作ってこなかったですから」
──そうなんですね(笑)。そのくだらなさに救われた、癒された、などは言われます?
土佐「いや、まったく救われないでしょうね(笑)」
貧乏ゆすり、6時間あたりのカロリーは……
──さて、「YUREX」に関してですが、最初、デザインを考え始めるにあたって、どういうことをされたのでしょうか?
土佐「まず、貧乏ゆすりについて調べた結果、6時間の貧乏ゆすりで、ごはん一杯分のカロリーしか消費しない! と分かりました。”貧乏ゆすりで発電してエコを!”というアイディアから始まったのに、貧乏ゆすりではエネルギーが少なすぎて発電できない、と判明したわけです」
──そんなしょっぱなから(笑)
貧乏ゆすりとイライラとの関係
──他に貧乏ゆすりについてどんなことが分かりました?
土佐「貧乏ゆすりには正負2種類があると分かりました。イライラするとき(=負の貧乏ゆすり)、ものを考えてるとき(=正の貧乏ゆすり)の2つ。当時ちょうど秋葉原での大量殺人事件が起こったりもして。そういうのを見て、何をイライラしているんだ、と。そのエネルギーをこのYUREXへ向けろ、と。ナイフ振り回さないで貧乏ゆすりをすればいいじゃないか、と思いました。ちなみに、太ももに装着するバンドは主導でカチカチとサイズ調整ができ、最高で直径20センチまで対応可能です。どんな方でもYUREXにイライラをぶつけていただけますのでご心配なく(笑)」
──デザインに関してはいかがでしょう? かなり本格的な仕上がりですよね。
土佐「最初のデザイン案はファンシーなキャラクター路線でした。かわいい牛のデザインで名前は”フットモーモー”、小さな象の”ひざ子象”、とか。あ、”ビンボーユーⅢ”という案もありましたよ。これ、ロボットなんですよ。R2D2、C3PO、”ビンボーユーⅢ”という具合に(笑)」
──一時はスターウォーズに肩を並べる(?)デザインにまでなったと(笑)。最終的に なぜ”YUREX”というカッコいいイメージになったのですか?
土佐「これは、貧乏ゆすりで発電できないからエコじゃない、単に貧乏ゆすりの回数をはかるだけのものになる、と判明した時点で、それなら徹底的にクソ真面目にやろう! という話になったんですよ。貧乏ゆすりをする人のことを”ユスリート”と呼ぼうと決めて。BBUという単位も作って。1回の貧乏ゆすりが1BBU。名前も真面目でカッコいいものに、ということでYUREXになった。カヤックさんと一緒に、できることは全部やりましたね。CMも作りましたし、公式サイトも凝ったものになっています。カヤックさんもすごいですよ。プロデュース全般はカヤックさんで行ってますし、僕の今までの仕事の中でも”バカバカしさ”と”割いた時間”は最高峰ですから」
ユスリートで力を合わせて宇宙へ。そしてビッグバンを!
──相当気合い入ってますね! YUREXのロゴや公式サイトには何か意味があるのですか?
土佐「はい、カヤックさんのデザインチームも気が狂わんばかりに時間を割いていて、しまいには”貧乏ゆすりは宇宙だ! このYUREXのロゴの羽は宇宙へ行くためにあるんだ!”とかワケのわからないことを言い出して(笑)。そこから、YUREXのサイトや専用アプリケーションも宇宙をイメージしたものになったんですよ。この専用アプリケーションは、YUREXの機械をUSBでパソコンに繋ぐと、他のユスリート(=YUREXユーザー)と一緒に貧乏ゆすりの回数を貯めることができるんです。ユスリート達の力を合わせてビッグバンを起こすような設定になっていて。今、だいたいあと680万2358BBU(=回/8月27日現在)でビッグバンが起こります。ビッグバンが起こるとどうなるかって? それはもうスゴイことになりますよ!(笑)」
YUREXがビッグバンのごとくますます広まることを願って、「貧乏ゆすりと精神安定との相関研究を誰かやってくれないですかね。精神安定に効果があるのは貧乏ゆすりだ、YUREXだ、って(笑)」と野心を抱く明和電機・土佐信道社長。”ナンセンスおもちゃ研究所”や”ノックミュージックプログラム”というクリエイティブなもの作りのセミナーも定期的に行っている。肩書きこそ芸術家だが、その発想を商品なり教育事業なりの形で世の中に落とし込むことが抜群にうまい明和電機。これからもその比類なき才能で “意味あるナンセンス”を世の中に増やしていってくれるのが楽しみである。
(取材・文=朝井麻由美)
●『YUREX』
面白法人カヤック発、明和電機プロデュース。太ももに装着しビンボーゆすりをカウントし、促進、楽しむガジェット。PCとつなぐことによって、個々人のビンボーゆすりの状態を測定、視覚化、操作できる。販売価格:1万2600円(税込) 発売中
公式URL<http://bbu.kayac.com/>
●明和電機(めいわでんき)
土佐 信道(とさ・のぶみち)プロデュースによる、芸術ユニット。所属事務所は吉本興業。作品制作のほか、音楽活動、舞台パフォーマンス、タレント活動も行っている。
●明和電機 魁!ナンセンス経営塾
2009年9月12日(土)、ヨシモト∞ホール(渋谷)にて開催されるトークショー。明和電機社長・土佐信道さん他、アーティストのヤノベケンジさん、大人の科学マガジン編集長の西村俊之さんなどを招いて、ナンセンス(超常識)なモノ作りをコモンセンス(常識)なビジネスに落とし込むノウハウを大公開する。3部構成。前売り2000円、当日2500円。チケットの発売のお問い合わせは0570-036-912まで。
主催・よしもとクリエイティブ・エージェンシー/協賛・株式会社キューブ
●オタマトーン
明和電機の新商品、電子オタマジャクシ楽器。オタマジャクシと音符(♪)をかたどったかわいいデザインで、弾き方も簡単。柄の部分のタッチパネルを軽く押すと、ドレミ……と音が出る。オタマジャクシの口を開閉させればビブラート効果をつけることも可能。ホワイト、ブラックの2種類。9月発売予定。2940円(税込)
手始めに…
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