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“ひねり潰す”騒動が教えるリアルとネットの関係の”今”(後編)

■前編はこちらから

ネット界隈から集中砲火でエントリー削除の愚行

 このエントリーは、ネットで強い批判を浴び、はてなブックマークで、「権利ばかり主張して広報リスクを計算に入れない経営者。COOが労基法を知らない事を吹聴することがどれだけ会社・株主に損失与えると思ってるんだろ」「社名出してこんな馬鹿話書くことで会社への損害は無いのかね。少なくとも俺は他人に『あそこはやめとけ』って云うよ」「無知な庄子素史がひどい。非拘束時間に何をしようが労働者の自由。労働法では拘束時間が労働時間と定義されているしそれが労働の一般通念」といったコメントを集めた。

 有名ブロガーの小飼弾氏も批判した。「あなたは9時前に体調を崩して会社に欠勤する旨を伝えて了承を取った後、15時ごろに体調が回復したとする。あなたは残りの2時間のために出勤する義務があるのだろうか? 残りの2時間は、いくら有意義に使おうが『闘病』以外の私用であればとがめられなければならないのだろうか?」

 また、シニカルな偽ニュースで人気の「ボーガスニュース」はこう書いた。

「ネット系ブラック企業の未来予想株式会社(庄子素史社長)は17日、まったく新たなバズマーケティング手法を取り入れたプロモーションサービス『ヒネッター』の提供を開始した。メディアの多様化が進むなかで効果的なプロモーションを行うにはどうすればよいか、首をひねっている広報担当者は多いが、同サービスを利用すれば社員の首をひねりつぶすだけで最適なPRが可能になる。(中略)『ヒネッター』は、いわゆる『炎上』を活用したまったく新しい手法を導入。『気に入らない社員を労働法無視で首切りする』などコンプライアンス的に非難必至の愚行にわざと走ってネットの注目を集め、自社サイトや新サービスなど任意のランディングページに誘導することを可能にした」

 ケータイ小説「あたし彼女」の変な文体をもじって庄子氏を揶揄した文章もネットに現れた。「アタシ COO 仕事? 他の会社の お手伝い てか コンサル みたいな(中略)アタシが それなりの ポストで 雇ってあげたら すぐに 病欠 みたいな マジ こいつ ムカつくし(中略)普通に 休んで ブログ とか やっぱ ムカつくし ひねり 潰したい みたいな」(タンブラー「hmcy」より)

 実のところ、山野氏が解雇された本当の理由ははっきりしない。病欠中にブログを書いたからというのは、氏の推測にすぎない。別の理由だった可能性もある。

 しかし、仮に別の理由があったとしても、庄子氏が書いた「ひねり潰す」というブログのエントリーは、あまりにも無神経に過ぎた。経営者が従業員に対して「ひねり潰す」というような言葉を使い、しかもそれをインターネットというパブリックな場所で公開するということがどのような結果をもたらすのかは、予測ができたはずだ。おまけに最悪なのは、はてなブックマークやブログ界隈で非難されたとたん、庄子氏がこのエントリーを削除してしまったことだった。自らの非を認めるのであれば、ブログ上で弁明なり謝罪なりをすべきであって、無言で発言をなかったことにしてしまうというのは最悪の対応である。

 インターネットはすべてが可視化される恐ろしい世界だ。だから実名で発言する人には、細心の注意が求められる。しかしいまだにこのようなバカげた対応をしてしまう経営者が存在し、しかも曲がりなりにも経営コンサルタントを標榜しているというのは、あまりにも情けないとしか言いようがない。

 山野氏は先のエントリーで、こう書いている。

「この心理は典型的な日本人性とでも言うような思考過程のように思った。ケガレを共同体から取り除く、ということなのか」

 このような日本人的な思考過程から、我々はなかなか逃れられない。しかし何ひとつ秘密裏に進めることができないネットの世界は、そうした思考過程を暴露してしまうことで、そのパワーを撃退しつつあるようにも見える。
(文=佐々木俊尚/「サイゾー」8月号より)

●ささき・としなお
1961年生まれ。毎日新聞、アスキーを経て、フリージャーナリストに。ネット技術やベンチャービジネスに精通。近著に『ブログ論壇の誕生』(文藝春秋)、『ひと月15万字書く私の方法』(PHP研究所)ほか。

あたし彼女

ケータイ小説ってまだあったんだ……

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最終更新:2009/08/22 11:00
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