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事件に巻き込まれたとき、どうすればいい?

2万体の死体を見続けた元・監察医が語る、兇悪事件で『死なないための智恵』

shinanaitamenochie.jpg『死なないための智恵』イーストプレス

 現在、ぼくらの生活のすぐ隣には多くの危険が潜んでいる。銃、刃物、薬物、毒物、災害、事故、身近にある家庭用ガスにアルコール……、用心していても否応なく巻き込まれるケースもある。たとえば世間を震撼させた秋葉原無差別殺傷事件からおよそ一年が経ったが、その記憶はまだ、ぼくらの脳裏にはっきりと焼きついている。あの事件のように、歩いていて急に襲われたら、一体どうすればいいのだろう?

 この本は、60万部を売り上げたベストセラー『死体は語る』の著者であり、変死者の死体を検死・解剖する監察医を30年間勤めた上野正彦氏が、万が一事件に遭遇した際、どうしたらよいか、どうしたら予防できるかの智恵を語った本だ。犯罪や事件を予防し、撲滅対策を考える「予防医学」の見地から、事件とその対処法をわかりやすく説明している。

・秋葉原無差別殺傷事件のような「街」での事件
・池田小児童殺傷事件のような「学校に通う子ども」に潜む危険 
・アルコールや過剰なダイエットなど「家庭」での危険 
・地震や事故などの「災害」に遭ったとき 
・和歌山毒カレー事件や硫化硫黄自殺など「毒物・薬物」への対処法 

 と、大きく五章にまとめられ、事件の細かい分析から社会的原因、そしてその対処法が述べられた、今までなかった種類の非常に興味深い本だ。「刃物で襲われたとき、腕を出したほうが重症にならない確率が高い」こと、知っていましたか? 他にも、傷や薬物に対しての応急処置の方法など、いざというとき役に立つ情報がたくさん載っている。また、ここ20年の犯罪史も知ることできる。

 しかし、一体どうして不可解な事件が多くなっているのだろう? 文明社会の便利さが生んだ万能感が、社会的トレーニングの欠如に繋がり、結果、孤立する人が出てくる、と上野氏は分析する。『死体は語る』を書いた89年当時とは、社会の様相が変わってきていて、事件が複雑になっているという。ネットで仲間を集う集団自殺など、20年前にはありえなかった事件だし、無差別殺人事件の多発も尋常ではない。不便だった昔は、他人と協力しなければならず、そのため我慢もしなければならなかったが、今はボタンひとつで何でも解決できる。機械は文句を言わないから、他人と向き合うこともなくなる。

 無差別殺人の一番の予防法は、そういった人を孤立させないこと。秋葉原の事件に代表される無差別殺人事件は、自分以外の周囲すべてを憎悪し、不特定多数の人を狙うというきわめて自己中心な動機だが、「犯人の『ためらい』のサインに、いかに周りの人が気づいてあげられるか」が予防になると、上野氏は繰り返し述べる。

 正直、日常に潜む死の危険からは逃げようがないが、事件を予防すること、事件に遭遇したときに冷静に対処することはできる。自分のためにも、近しい人を守るためにも、”死なないための智恵”を、最低限、備えておく必要があるだろう。不安に満ちた社会の、転ばぬ先の杖となってくれる本だ。
(文=平野遼)

●上野正彦(うえの・まさひこ)
1929年、茨城県生まれ。東邦医科大学卒業後、日本大学医学部法医学教室に入る。59年に東京都観察医務院監察医となり、84年、同医務院長となる。89年に退官し、初めての著書『死体は語る』が大ベストセラーとなる。法医学評論家として、テレビや新聞・雑誌で活躍中。主な著書に『解剖学はおもしろい』『死の雑学』『死体を科学する』など。

死なないための智恵

SURVIVEせよ。

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最終更新:2009/08/11 17:16
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