大追跡! ギャートルズに出てくる「マンモスの肉」はどんな味なのか?(後編)
アフリカ象は、絶滅の危機に瀕する野生生物として狩猟と国際取引が全面的に禁止されているが、元々は貴重なたんぱく源としてアフリカで広く食されてきた。アフリカの食文化について書かれた『アフリカを食べる』(松本仁一著・朝日新聞出版)によると、深刻な絶滅の危機が叫ばれている北部に比べ、南部では増加傾向が顕著で、ジンバブエでは増えすぎた象を3、4年に1回、1,000頭規模で国が”間引き”し、その肉が市場に出回るのだという。国際通信社IPSが報じたところでは、国際的なバードウォッチング組織「バードライフ・南アフリカ」の会長、ゲルハルト・フェルドールン氏が、「南アフリカ諸国の象保護は進んでおり、ボツワナやジンバブエでは象の数が適正規模を超えてしまっている。数のコントロールが必要で、象肉は地域の食用とするのが妥当」と主張している。
折りしも、イギリス国営放送BBCが今年1月、「ジンバブエ部隊は象を食べる」(Zimbabwe troops ‘eat elephants’)と題して、同国の兵士が食糧として象肉を軍から支給されているというニュースを報じた。ある将校の談話によれば「今までサザ(トウモロコシの粉で作られたお粥)ばかり支給されていた兵士たちは象肉の支給を喜んでいる」とのこと。肉の供給源は、間引きされた固体と考えるのが妥当だろう。これらを勘案すれば、アフリカで象肉が昔からポピュラーな食べ物であったことだけは間違いなさそうだ。ちなみにBBCは同時にこの報道の中で、「ジンバブエの国立公園が維持できる象の頭数は4万5,000頭だが、現在同地区の生息数は10万頭にまで増えている」とも報じている。
さて、これらを踏まえて象肉文化についてジンバブエ大使館に聞いてみると、「象は昔から食べられてきた。間引きした肉が一般人の口に入ることもある」とした上で、「限定された地域と条件下で合法的な狩猟ツアーもあり、その肉が市場に出ることもある」と興味深い話をしてくれた。やはりスペシャルツアーはあったのだ。もっともこのツアー、参加するには様々な条件をクリアしなければならないらしく、一般の日本人が参加するのは「難しい」とのことだ。
いずれにしても、アフリカで象を食べることは立証された。次は味と食感だ。前述の『アフリカを食べる』の中で著者の松本氏は、現地記者からわけてもらった「象の干し肉」について、「塩味だけで干し肉にしてある。厚みがあって見かけはごついが食べてみると意外にやわらかく、牛の干し肉よりコクがあってうまい」(同書より)と、なかなかのハマリよう。せっかくなので、同じく南部のボツワナ大使館に料理法について聞いてみたところ、大変お忙しい中で次のように答えてくれた。
「普通の肉と同じですよ。焼いたり煮たり。特別変わった味ではない。日本の豚や牛よりは少しは特徴があるかもしれない」
象の肉って固そうに見えますけど……?
「たしかに固い。豚の倍くらい煮ないと食べられないですね」
以上、いろいろなお話や書物から垣間見えた、そこそこおいしそうなマンモス肉の真実。わかったような、わからないような気もしないでもないが、結局食べ物の味は実際に食べてみなければピンポイントに理解することは難しいということか。ともあれ、マンモスの味と食感が”自分なりに”イメージできたところで、あらためて『はじめ人間ギャートルズ』を見てみたい。マンモスをおいしそうに食べるゴンやドテチンの気持ちがよりリアルに感じられ、きっと今まで以上に作品の世界観にハマれることだろう。
(文=浮島さとし)
サルも食べるらしい。
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