大追跡! ギャートルズに出てくる「マンモスの肉」はどんな味なのか?(前編)
園山俊二氏原作のアニメ『はじめ人間ギャートルズ』が、1974年に初めて放送が開始されてから35周年を迎えた。原始時代を舞台に能天気な家族が繰り広げる笑いあり涙ありのドタバタ劇は、多くのアラフォー世代の心に今も深く刻まれている。そして、作品のシンボルともいえる存在がマンモスの輪切り肉だった。主人公のゴンやゴリラのドテチンがおいしそうに肉にかぶりつく場面がほぼ毎回登場し、晩御飯を待ちながらテレビを見ていた当時の子どもたちは、「マンモスの肉って柔らかくてうまそう……」と妄想したものである。
実際のところ、マンモスの肉ってウマいのだろうか? そもそも人間が食べても大丈夫なものなのだろうか? 試しに「マンモス 肉」でネット検索すると、冷凍食品大手の「(株)エスケー食品」(神戸市)が販売している『ギャートルズ肉』の関連サイトにヒットした。「子ども時代に見たマンモス肉が忘れられなかった」という同社の社員が、アニメそっくりの”骨付き肉”を企画して売り出したところ大反響。しかし、これは豚の骨に牛肉を一枚一枚巻きつけて加工したパロディ商品で、当然ながらマンモスではない。購入してみた知人によれば「ウマかった」というが、今回知りたいのは本物のマンモス肉についてだ。
果たして、マンモスはヒトにとって食物となりうるのか。その味と食感を求めて、バカバカしいほどに無意味な調査を敢行することにした。まずは、マンモスに詳しい大阪市立自然史博物館の研究員さんに、マンモスの肉は食用として食べられるか否かをズバリ聞いてみた。
「食べられるでしょう。人類がかつてマンモスを狩って食べていたことは間違いないとされていますから、その意味で食べられると考えてよいと思います」
なるほど。それなら実際に食べて味を知りたいところだが、絶滅してしまったマンモスを食べるには現存する化石を食べる以外に方法はない。しかし、博物館の展示室やロシアの永久凍土から化石をパクれば捕まってしまう。そもそも1万年前に死んだ生物の化石を砕いて飲みこんだところで味の確認など不可能。かといって、映画『ジュラシックパーク』のようにクローン技術を用いてマンモスを復活させる計画が、近畿大学とロシアの国際科学技術センターの共同プロジェクトとして数年前から進行中だが、実現はまだ先の様子。仮に成功してもその肉を我々が手に入れて「試食」できる可能性は限りなくゼロに近い。
ならば象ならどうか。見た目が似ているのだから肉質もマンモスに近いのではないだろうか。引き続き研究員さんに聞いてみた。
「象とマンモスは異なる種ですが、肉そのものは大体一緒です。例えるなら牛とバッファローくらいの違いですね。バッファローと牛は味がかなり似ていますから。マンモスが食べられるなら象も食べられます」
たしかに、馬刺しと鹿刺しを食べて即座にどちらか当てられる人は少ないし、バッファローも黙ってステーキにして出されたら牛と思って食べてしまうだろう。象とマンモスも肉の味はそのくらい近いということか。ならば、象を食べてみればマンモスの味がほぼわかるという理屈になる。
過去に日本人が象を食べた例といえば、古くは「エレテキ事件」がある。食糧難の戦時中にある動物園で象が死に、その肉を職員らが焼いて食べたという話だ。ビフテキならぬエレテキ(エレファントステーキ)というわけで、後に松竹が『象を食った連中』(吉村公三郎監督)と題して映画化している。実はこれ、作家・筒井康隆氏の少年時代の体験談といわれており、昭和48年に出された筒井氏のエッセイ集『狂気の沙汰も金次第』の中で、動物学者だった氏の父親が動物園からたくさんの象肉を「おすそわけにあずかり、家へ持って帰ってきた」後で、それを象肉と告げずに「近隣や親戚に配った」と書かれている。肉自体の感想には一言も触れていないため、ここからマンモスの味をうかがい知ることはできないが、近隣住民は「皆喜んで食べた」とあるから一口食べて吐き出すような味でなかったことは確か。むしろ、肉不足の時代とはいえ「喜んで食べた」のなら、普通には肉としておいしかったと想像できる。
それでは、マンモスの(象の)よりリアルな味を知るには、やはり象の故郷であるアフリカへ行かなければならないのだろうか。様々な象料理が楽しめる「象づくし南アフリカ3泊4日激安ツアー」なんていう企画があるのかないのか。アフリカ旅行を専門に扱っている旅行代理店「(株)道祖神」(東京都港区)に聞いてみると、「ありませんよ、そんなツアー。象は世界的に保護対象ですよ? 随分時代に逆行していますね」と怒られて(?)しまった。やはり象を食べる国なんて……いやいや、実はこれが結構あるのだ。
(後編へつづく/文=浮島さとし)
阿佐ヶ谷にそっくりな肉、売ってます。
【関連記事】 追跡! 海の家「ホントに儲かるの? 誰に許可を取ればいいの?」(前編)
【関連記事】 “夢とロマン”を追及して一攫千金 今、「財宝引き揚げビジネス」が熱い!?
【関連記事】 食虫本、食虫イベント、食虫アイドル……今”食虫”がブームって本当!?
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事