明石家さんま テレビが生んだ「史上最大お笑い怪獣」の行く末
#お笑い #明石家さんま #この芸人を見よ!
7月24日、明石家さんまが『笑っていいとも!』(フジテレビ)の人気コーナー「テレフォンショッキング」にゲスト出演を果たした。約1年ぶりに同コーナーに出演したさんまは、当初の予定を大幅に延長して、放送時間ギリギリまで司会のタモリを相手に延々としゃべり続けて、会場を大いに盛り上げた。
さんまは昨年の『FNS27時間テレビ』では総合司会として大活躍していたし、今年7月25日に放送された『FNSの日26時間テレビ』でも、深夜の時間帯に司会の島田紳助と互いに一歩も譲らないマシンガントークを繰り広げていた。54歳になった今も、彼の勢いは衰える気配がない。
だが一方で、視聴者の間では密かにさんま離れが進行しているのではないか、という声も聞かれる。雑誌「日経エンタテインメント!」(2009年7月号、日経BP社)の「好きな芸人 嫌いな芸人ランキング」では、明石家さんまが「嫌いな芸人」で江頭2:50に次ぐ2位にランクインした。前年の5位からさらに順位を上げている。同誌では「いつまでも全盛期と同じ芸風は見ていて痛々しい」といった手厳しいコメントが紹介されていた。
だが、このデータが視聴者のさんま離れを示しているかというと、それは一概には言い切れないところがある。そもそも一定の知名度がなければ、嫌いな芸人ランキングで名前が挙がることもない。他の芸人が小粒になってきているからこそ、さんまのようなよく知られた芸人が上位に食い込む、という現象が起こっているという面もある。
また、同誌の「好きな芸人ランキング」では、明石家さんまは8年連続で1位を獲得している。本当に人気がなくなった芸人は、嫌われたり好かれたりすることなく、ただ忘れ去られていく。好きな芸人としても上位に挙げられているうちは、さんまの地位はまだまだ安泰である。
さんまが長年にわたってテレビの第一線に立っていられるのは、彼がテレビというメディアの特性を熟知しているからだ。テレビの視聴者は、刺激と安らぎを求める。わかりやすいものを好み、飽きっぽくてだまされやすい。これらを踏まえて、さんまは黙々とテレビタレントとしてのあるべき振る舞いを貫き通している。
彼は後輩芸人から畏敬の念を込めて、「お笑い怪獣」と呼ばれる。たしかに、いまやテレビそのものとなったさんまは、他の芸人とは相対的な器の大きさが違いすぎる。彼は芸人として面白いことを言ったりするだけでなく、自分自身が積極的に面白い存在であろうとする。そして、そのことに一切迷いがない。『いいとも』に出演して延々とトークを繰り広げたのも、その底抜けのサービス精神の現れだろう。
恐らく、ここ数年でさんまの勢いが落ちているように見える最大の原因は、単純にテレビ自体の勢いが衰えていることにある。テレビの社会的影響力が弱まるにつれて、「みんなのさんちゃん」を手放しで受け入れてくれる人間の絶対数が減っているのである。
テレビが死ぬのが先か、さんまが死ぬのが先か。テレビが生んだ史上最大級の「お笑い怪獣」の行く末はまだ誰にもわからない。
(文=お笑い評論家/ラリー遠田)
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