9勝1敗でプリウス圧勝!! 雑誌が下したトヨタVSホンダ
#企業 #トヨタ #ホンダ #エコ
エコカーブームの到来によって、トヨタ・プリウスとホンダ・インサイトというハイブリッドカーが注目を集めている。クルマ雑誌から一般誌まで、そんな両車の性能を比較する記事が登場したが、実際、買うならどっちがい~のよ?
今年4月1日から新グリーン税制がスタートしたこともあり、クルマ業界にエコブームが到来している。中でもハイブリッドカーの人気は高く、2月に発売されたホンダ・新型インサイトと5月に発売されたトヨタ・新型プリウスは、他車の追随を許さない2強としてしのぎを削っている状況だ。この両車のバトルだが、何も今に始まったことではない。実はこれ、ハイブリッドカー開発の歴史にもつながっているのだ。
1997年、世界初のハイブリッド市販車としてトヨタが初代プリウスを、それに遅れること2年、99年にホンダが初代インサイトを販売。ここから両社の「ハイブリッド開発競争」がスタートすることになる。その後、トヨタは01年にエスティマ、クラウンのハイブリッド版を発売、同年にホンダもシビックハイブリッドで対抗した。
そして03年、トヨタは、フルモデルチェンジした2代目プリウスを発売するや、この年のグッドデザイン賞を受賞したボディラインや「S-VSC」「キーレスドアオープン」などの最新技術が好評を博し、インサイトを大きく突き放した。
しかし、このような状況下にあっても、一般消費者にとってハイブリッドカーが広く浸透していたわけではない。当時は世間一般に今ほどのエコ意識はなく、税金といくつかのオプションを選択すると購入費用は300万円超、同クラスの一般車は230〜250万円程度であったことから、消費者への訴求力は低かったのだ。
契機となったのは05年。オスカー授賞式の会場を訪れたハリウッド俳優たち全員が、日本製のハイブリッドカーに乗っていたと報じられた。ハリウッド俳優たちがこぞって日本のハイブリッドカーに飛びついたのだが、これにより、認知度が高まったことは疑いがない。
そんな状況下、今年2月ホンダのインサイトが、最低グレードの「G」を車体価格189万円で発売。その結果、発売した月の受注は、目標の3倍となる1万5000台を記録、その後も勢いは衰えず、順調に販売台数を伸ばしていく気配を見せた。
これを見て戦々恐々としたのがトヨタ。3代目プリウスの開発を進めていたのだが、発売前は「250万円前後」と言われた値段設定の最低グレード「L」を205万円にまで下げてきた。この結果、発売した5月の販売台数は1万915台、トップに返り咲き、インサイトの独り勝ちを見事に阻止するカタチとなったのである。
これらのメーカー間の熾烈な価格競争に新グリーン税制の導入も重なり、
ハイブリッドカーは消費者にとって一気に身近な存在になった。
さて、こうした流れを受け、クルマ雑誌をはじめとするさまざまなメディアで、ハイブリッドカーの特集が組まれるようになったが、「エンジン音が静かなことによる歩行者の危険性」「ガソリン車に比べて圧倒的に加速が悪い」(コラム参照)などの欠点を指摘している記事はほぼ皆無。特に、クルマ専門誌にこの傾向が顕著のような印象を受けてしまう。その理由の裏側には、自動車業界の体質が大きく関係しているという。
自動車メーカーと専門誌の密月関係
まず、クルマ雑誌が新車情報を掲載する際、自動車メーカーが行う試乗会に参加する必要がある。そこで車体のデータや乗り心地などの情報、クルマの写真を手に入れなければ、記事を作成できないからだ。
新車スクープや辛口批評「ざ・総括。」で知られるタブーなき自動車雑誌「ニューモデル マガジンX」(三栄書房)編集長の神領貢氏は、このことが雑誌やフリーの自動車評論家たちを縛る「鎖」になると語る。
「例えば新車の試乗会を行うとして、用意できる車の数に制限もあるし、人員の問題もあるため、すべての自動車雑誌の編集者や評論家が呼ばれるわけではありません。当然、メーカー側にとって必要と判断された関係者に声がかかる。ですが、新車に試乗して納得のいかないデキだったとしても、悪くは書けませんよ。少しでもメーカーにとって不利なことを書くと、次から呼ばれなくなったり、ほかの企画でも車を借りられなくなりますから」
これらのシステムについては、メーカーの媒体認識によるところが大きい。
「メーカーは、おそらくは認めないでしょうが、市販されている自動車雑誌を、商業誌ではなく、自社や業界の『宣伝媒体』のひとつだと思っているはず。だからなのか、メーカーがクルマ雑誌に支払っている広告費も、ほかのジャンルの雑誌と比較すれば安い(苦笑)。ただ、業界を活性化させるために専門誌への宣伝は必要なので、クルマ雑誌の部数が減少しても広告を入れないということはありませんが」(同)
つまるところ、メーカー側と媒体には「持ちつ持たれつの関係」が出来上がっているということであるが、試乗会にしろ、広告にしろ、昔から続いてきた体質がその関係を構築して、定着させてしまったのだ。
(さらに詳しい比較検証は「サイゾー」8月号にて/取材・文=百園雷太)
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