セブン-イレブン帝国崩壊への序章 ”排除命令””労組結成”で激震中!(後編)
#企業 #ビジネス
ついにオーナー同士が結束 戦いの場は国政に移るのか!?
だが、この”事件”が起こる少し前にも、コンビニ業界の未来を変える可能性のある重要な出来事が起こっていた。この業界には前例がない、セブン-イレブン加盟店オーナーたちによる「労働組合」が結成されていたのだ。
結成の場は、6月2日に参議院議員会館で行われた、全国FC加盟店協会主催による「コンビニ問題勉強会」。ここには、北海道から九州・沖縄に至るまで、日本全国からセブン-イレブン以外にも、ローソン、ファミリーマート、サークルKサンクスなど、大手コンビニを中心に100人を超える加盟店オーナーが集結した。
また、議員会館で行われたことからもわかる通り、この会の目的のひとつは、国会議員に、現在のコンビニ経営の実態を知ってもらうことだった。会の呼びかけに対して、民主党からは菅直人代表代行ら十数名が参加したほか、社民党の福島瑞穂党首や辻元清美政審会長代理、新党日本の田中康夫代表など、野党の要人が多数出席。与党である自民党・公明党からの参加者も、わずかながらいた。さらに、議員以外にも、連合や全商連等の労組関係者も連帯を表明するため姿を見せた。報道陣も50人以上詰めかけ、公取委によるセブン-イレブンへメスを入れたことをきっかけに、コンビニ問題への関心が急激に高まっていることをうかがわせる勉強会だったのだ。
では、ここではどのような問題が取りざたされたのか。
たとえば、「本部から24時間営業を強制された」というもの。店舗の営業時間は、原則的に本部と交渉できるのだが、契約打ち切りなどを盾に、その変更を認められないケースが続出しているというのだ。そのための重労働で、過労死や自殺をした加盟店オーナーもいるというのだから、状況は深刻だ。
また、「本部によるピンハネ」と批判されるのが、ロスチャージ【※注1】だ。見切り販売を求める声が上がる背景には、廃棄すればするほど加盟店の損失が増え、本部が潤うという会計制度があることも一因だ。そのほか、本部に支払う高額なロイヤルティを見ても、本部と加盟店は「対等な関係」とはいえず、事実上は「名ばかりオーナー」であると、集まった加盟店オーナーたちは、声を揃えるのだった。
そして、同会終了後、セブン-イレブンの加盟店オーナーたちによって、「セブン-イレブン加盟店ユニオン」が結成されたのである。同組合は、前述した問題の解決を目指すとともに、本部による加盟店に対する「優越的地位の濫用」を厳しく禁じたF・C(フランチャイズ)法の制定を目指していくという。組合に参加したある加盟店オーナーは、こう語る。
「セブン-イレブンが変わらないと、コンビニ業界は変わらない。他チェーンに加盟するオーナーも『がんばってほしい』と激励してくれている。将来は彼らとも連携していきたい」
実をいうと過去70年代、80年代に2度ほど、セブン-イレブンの加盟店オーナーたちの中には組合を作ろうとする動きがあったが、その度に本部の弾圧によって頓挫した過去がある。組合結成に限らず、加盟店オーナーたちが、本部にとって不都合な行動を取ろうとすると、「契約解除」をちらつかせるのが常套手段だといわれてきたが、そうした圧力に屈せず、表立って戦う姿勢を見せる加盟店オーナーが多数出てきたことは画期的だ。発足後、1カ月足らずで、同組合には200人以上が参加したという。
また、この組合発足について注目すべきは、民主党が高い関心を示していることだ。この組合結成の会合も、勉強会後に場所を移して、民主党内で行われている。
「党派にこだわっているわけではないが、さまざまな政党に呼びかけた結果、結局きちんと応じてくれたのは民主党だけだった」(労組結成に参加した加盟店オーナー)
もし政権交代が実現した際には、F・C法の法制化を含め、国レベルでの問題改善への取り組みが急激に進むことも考えられる。セブン-イレブン帝国を支えてきた「本部優位」の体制は一気に崩壊しかねないのだ。
本部による「15%負担」にオーナーからはブーイング
排除措置命令が出た翌日の6月23日、東京都内で、セブン-イレブン加盟店ユニオンによる東日本地区集会が行われた。オーナー歴31年の古株で八王子に店舗を構える増田敏郎氏が仕切ったこの集会に参加した加盟店オーナーの数は22人。新潟、群馬、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、静岡の各地域から集まり、報道陣もテレビ・新聞各社が詰めかけた。
この場では、さまざまな意見が交わされたが、中には「見切り販売をすると、安売り合戦になって弊害となるのではないか。しかし、今の本部と加盟店の関係は対等とは思えないから組合に参加する」という立場の加盟店オーナーもいた。対して、「見切り販売は、あくまで賞味期限切れ寸前で廃棄になりそうな商品の値段を下げること。単なる値引き販売とは区別する必要がある」という意見が出るなど、議論は活気を帯びた。
その集会の最中に、あるニュースが飛び込んできた。それは、セブン-イレブンが加盟店に対して、「これまで加盟店が負担してきた廃棄分の原価の内、15%を負担する」というものだった。一見、セブン-イレブンが「折れた」ように見える対応だが、その場に居合わせた加盟店オーナーたちからは「たった15%で何が変わる」と、大顰蹙(ひんしゅく)を買っただけだった。ある出席者は、「本部は以前も『廃棄分の原価を5%負担する』という条件を持ち出して、その分、商品を大量に仕入れさせられ、廃棄がたくさん出た」という”前科”を暴露。この15%負担により、セブン-イレブンは年間100億円の出費を見込んでいるというが、これほどまでに大きなツケを加盟店側に押し付けていたことを自ら証明する形になったといえるだろう。
セブン-イレブン加盟店ユニオンの池原匠美組合長は、「組合に対する期待は日増しに高まっているが、まだ加入に踏み切れていない人も多い。それに、組合は見切り販売を強制するのではない。そこは各加盟店の選択であり、もちろん、見切り販売をしたいという加盟店オーナーにはノウハウを教えていきたい」と語る。
今回、公取委がセブン-イレブンに対して、大なたを振るったことと、このような労組が誕生した時期が一致したのは偶然ではない。本部への不満が飽和状態に達した加盟店オーナーたちが、公取委への告発を次々と行い、労働運動として、業界の改革に乗り出したのは必然といえよう。
排除措置命令だけなどでは手ぬるすぎると考えている闘士たちが、この後、どのような戦闘的運動を展開するか目が離せない。
(文=角田裕育/「サイゾー」8月号より)
※注1 セブン-イレブンをはじめとした多くのコンビニでは、加盟店は売上総利益(粗利)に対して掛けられたチャージを本部に払うことになっている。しかし、この売上総利益を計算する上で、棚卸ロス(万引きなどで紛失した商品の原価)や廃棄ロス(賞味期限切れなどで廃棄された商品の原価)にまで、チャージが加算されることになる。
だって、なんでもあるんだもん
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