高円寺でキモカワフィギュア”タカハシ”と出会う写真集『ボクノトモダチ』
#読者プレゼント #サブカルチャー #フィギュアスケート
1999年、「チョコエッグ」に入った海洋堂のフィギュアが一大ブームとなり、それまでどこかオタクっぽいところのあったフィギュアの世界は、一気に広まり、定着していった。あれから10年の時が経った現在、その世界は着々と進化を続けている。
この「ボクノトモダチ」は、頭が犬で、胴体が人間という奇妙なフィギュア、23歳就職浪人の”タカハシ”が、カメラ片手に”コウエンジ”の”トモダチ”を紹介する、という一風変わったコンセプトの写真集だ。
見開きのページ上部に写真、その下に”タカハシ”の眼から見た友人たちの紹介文といった構成で、”トモダチ”は皆、”タカハシ”と同じく動物頭の手作りフィギュア――ウマであったりカワウソであったりハクビシンであったり。表情は少しキモチワルイが、単純でないデザインがかわいらしくもある。各ページには年齢、職業、将来の夢、座右の銘が記載され、一人ひとりリアルな背景を持っている。本を読みながら鼻クソをほじるリスの”カミオカ”や、高校デビューのマンドリル”カキモト”など、キャラクターの個性がくっきりと描かれていて「あ、こんなやつ、いるいる」と思わずうなずいてしまう。カメラを持ち、メッシュキャップにウエストバッグを肩掛け、ジーンズは腰履きといった”タカハシ”のファッションも、いかにもその辺りにいそう。皆、ちょっと夢見がちな感じも”コウエンジ”という街らしさが出ている。
この写真集に載っているフィギュアは、Tシャツの”たわみ”や洋服の着こなし、個々の体型など、細かいところまで丁寧に造り込まれ、長いこと見ていても飽きない。また、高円寺北口の純情商店街、アーケードのある南口のパル商店街と、”タカハシ”は実際の東京・高円寺の街を練り歩き、ファインダーにおさめ、それが”コウエンジ”を創り出す。古着屋の店先や、植木鉢の置いてある軒先など、写真集を眺めながらあたかも著者のおりなす”コウエンジ”の世界にいるような魅力にあふれている。
”タカハシ”とその”トモダチ”の住むこの世界はどことなくユルい空気が流れ、アルバイトの者も多いが、その中でもなんとか現実を模索しようと懸命に生きている様子が窺える。「――今の僕はとてもふがいないけど、今の僕であるのは、僕一人だけの話じゃ終わらないのだ」という”タカハシ”の言葉は、現代の若者の等身大の姿であり、また著者のストレートな言葉なのだろう。現在、ぼくらは様々な人間の関係性の中で生きていることをしばしば忘れがちだが、この本には友人の大切さを再確認できるようなメッセージに富んでいる。高円寺という街特有の風俗も楽しい、暖かい写真集だ。
(文=平野遼)
虚か実か。
●タカハシ・カオリ
フィギュア作家。1983年、東京都生まれ。15歳まで高円寺で育つ。武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科卒業。フィギュアイラストレーター・デハラユキノリ氏のアシスタントをしながらフリーで活動。「コウエンジアニマルストリート」などの個展を各地で開催している。
タカハシカオリ展「ホネ サピエンス」開催中
http://www.rocket-jp.com/exhibition/data/2009/post_1/
■プレゼントのお知らせ
日刊サイゾーより『ボクノトモダチ』を3名様にプレゼントさせていただきます。下記応募フォームよりご応募ください。なお、応募の締め切りは8月4日(金)23時59分、当選は商品の発送をもってかえさせていただきます。
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