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不公平取引にメスが入り、反抗ののろしが上がった「6月」をレポート

セブン-イレブン帝国崩壊への序章 ”排除命令””労組結成”で激震中!(前編)

seven.jpg全国に1万2000店舗以上を展開するセブン-イレ
ブン。本部との関係を気にして、声を上げられ
ないオーナーが多数いるとも言われている。

「セブン-イレブン本部による値引き販売の制限」について、公取委が異議を唱えた。これと軌を一にして、加盟店オーナーたちが労組を結成。セブン-イレブン問題はどこに向かうのか? 同社の経営体質を批判して続けてきたジャーナリストが、反抗ののろしを上げた男たちの姿に迫った―。

 6月22日、セブン-イレブン・ジャパンに対して、独占禁止法に抵触するとして、公正取引委員会から「排除措置命令」が下された。この命令は、デイリー商品といわれる弁当や総菜などの見切り販売(賞味期限切れ前の値引き販売)を可能にするガイドラインを加盟店と本部との間で整備するなどといった内容。つまりは、本部がそれまで加盟店に対して、「賞味期限前だからといって値引き販売をするな」と強制的に制限していたことは独占禁止法に違反する行為であると、公取委が判断したのだ。

 こうした問題は、1970年代にセブン-イレブンが日本で立ち上がって以来、長く業界内にくすぶっていた。たとえば、79年には、中小企業庁が「本部と加盟店の間で結ばれる契約書が不公平である」と、行政指導する方針を打ち出していて、実際それ以降に指導が行われたという情報もある(実際に、どのレベルの指導がなされたかは公表されていない)。

 こうした話は、過去にも一部メディアでは取り上げられてきたが、テレビ局にとってはスポンサーであり、新聞や週刊誌などにとっては、大事な販売網である大手コンビニを刺激するような報道はタブー視されてきたのだ。

 だが、今回は公取委という「お上」が公にセブン-イレブンの問題を取り上げたために、それらのメディアも「みんなで渡れば怖くない」と、横一線で報道した。セブン-イレブンに関する問題が、ここまで大きく扱われ、社会的関心を集めることは、これまでなかったことだ。

 そもそも、今回の排除措置命令には伏線があった。07年6月には、国会で、日本共産党の塩川鉄也代議士が竹島一彦公正取引委員会委員長に対して、「本部が加盟店に値引き販売を制限していること、廃棄処分を出させることで本部が収益を上げていることは不公平取引ではないか」と質問している。これに対して、竹島公取委委員長は 「正当な理由がなく制限することは、独禁法上問題がある。中小企業庁と連携しながらPRしていきたい」と、いわばセブン-イレブンに対して、″警告″を発したのだ。だが、セブン-イレブンはこれに耳を貸さず、見切り販売を行っていた加盟店オーナーに、「見切りをやめろ」「従わなければ加盟店契約を解除する」などと圧力をかけるのをやめなかったという。

 公取委には、この間も加盟店や関係者からの告発や情報提供が相次ぎ、ついに今年2月、セブン-イレブンへの立ち入り調査に踏み切り、今回の排除措置命令に至ったのである。

 セブン-イレブン創業者で、現在、同社およびセブン&アイ・ホールディングスの会長を務める鈴木敏文氏(CEO・最高経営責任者)は、「ディスカウント(安売り)ではなく、フェアプライス(適正価格)が重要」を持論とし、一貫して商品の値引きには否定的だった(そういっておきながら同氏は、昨年8月29日にセブン&アイ・グループ初のディスカウントストア『ザ・プライス』をオープンさせているのだが)。

 いくら自らの経営理論が見切り販売を否定するものだからといっても、対等な取引相手であるべき加盟店に対して、それを制限するのは法的に問題があると、国は前々から意思表示をしてきた。にもかかわらず、セブン-イレブンはそれを無視してきたのである。

 それまで鈴木会長が、それほど強気に出られたのは、公取委の関連団体である財団法人・公正取引協会の理事に就いているからだと噂されていた。同協会は、企業に対して、公正な取引の順守を啓蒙する機関であると同時に、公取委とは親密な関係にある。鈴木会長も、同協会の重職にいる限り、公取委が矛先を向けてくることはないと高をくくっていたのかもしれない。だが、公取委の竹島委員長は、「大蔵官僚時代から、自分の意思を徹底的に通す気骨のある人間」(同委員長の知人)のようで、セブン-イレブンに対しても厳しく不正排除に乗り出したのである。

 公取委の排除措置命令が出た当日、記者会見に臨んだセブン-イレブンの井阪隆一社長は、「命令を受けた事実、指摘を受けたことは真摯に受け止める」と自省を込めた発言を行い、「一部社員に行きすぎた言動があったかもしれない」と、見切り販売を行った加盟店に脅迫的言動があったことを暗に示唆する発言を行った。

 2月の公取委の立ち入り調査が行われた際の記者会見では、同社顧問である飯塚俊則弁護士は、そうした圧力の存在を否定していたが、今回、井阪社長はその見解を修正したのだ。

 だが、同時に「(違反行為は)日常的に発生した事象ではないと認識している」と、あくまで″一部社員″の問題であるという見解を示し、「(加盟店と本部は)対等の立場にある。公取委とは見解の相違があり、残念だ」などと、会社による「優越的地位の濫用」を否定する発言を行ったほか、「多くの加盟店が値引きに反対している」とも述べている。

 セブン-イレブンはこれまでも、「加盟店の多くは、恒常的な値下げは結果的に店の信頼をなくしてしまうという本部の考えに同意している」との言い分を展開してきたが、いわずもがな「信頼維持」は、法的な枠組みを越えてまで行われるものでない。

 一方、加盟店オーナー側は排除措置命令を受けた記者会見で、「本部が加盟店に対し、圧力をかけたことが公に認められた瞬間だ。しかし、これは始まりにすぎない」と述べ、実際に見切り販売をした結果、利益が増加した事例などを挙げ、「値引き販売は、結果的には利益に結びつかない」といった旨の、本部が主張する定額販売要請の正当性に異論を唱えている。

 こうした中、前述のように、コンビニ最大手に対する排除措置命令が出たというニュースは、各メディアで大きく報じられることになった。本部による見切り販売の制限は、セブン-イレブンのみならず、他のコンビニチェーンでも行われてきたため、今回の措置は、コンビニ業界全体の今後に大きな影響を及ぼすであろうエポックメイキングな出来事としてとらえられたのだ。
後編へつづく/文=角田裕育/「サイゾー」8月号より)

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“セブン”派? ”イレブン”派?

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最終更新:2009/07/30 16:09
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