「積極的に気持ち悪くいく」静かなるコント芸人・ラバーガールの思考
#お笑い #DVD #インタビュー #ラバーガール
『エンタの神様』(日本テレビ)などで独自の空気感を持つコントを披露して注目を集めているラバーガールの2人。最新DVD『さよならインドの空に』の発売に際して、単独ライブの裏話から今年の『キングオブコント』(TBS)に懸ける意気込みまで、じっくり語ってもらうことにした。
――7月8日に発売された最新DVD『さよならインドの空に』は、今年4月の単独ライブを収録したものですね。このライブにはどういうコンセプトがあったんですか?
飛永 前回のライブまでは、テレビで使えるネタと自分たちがやりたいネタっていうのを区別して作ってたんですけど、今回は特にそういうことを考えずに、面白いネタをやろうかなと思っていました。最近はテレビでもストーリー性のあるネタをやらせてもらえる機会も増えたので、見る人も違和感ないんじゃないかなと思って作りました。
――今回のライブの中で、ご自分たちで気に入っているネタはありますか?
大水 僕は『観せたいDVD』というネタが好きでしたね。後半休めるんで(笑)。
――逆に、『魔物の館ミステリーツアー』というネタでは、大水さんの方がセリフが多くて大変そうでしたね。
飛永 そうですね、そっちは僕の方が楽だったんで楽しかったです。
――楽かどうかが基準なんですか?(笑)
飛永 そうですね。楽してウケるのがいちばんいいですよね(笑)。ただ最近の傾向として、僕があまりしゃべらないネタが増えてきた感じはしますね。前は僕がいっぱいしゃべって、大水君がちょっとだけボケるみたいな感じだったんですけど、そうじゃない形も多くなりました。
――それは、お客さんの求めているものに合わせた結果としてそうなっていったんでしょうか。それとも、単にお2人が本来やりたかった方向に変わってきているということなんでしょうか。
飛永 両方といえば両方ですかね。難しいことをやるよりも、大水君が何かやった方がシンプルだし面白いし、っていうのもあると思います。昔から共通してるのは、大水君のキャラクターが『なんか気持ち悪い人』っていうことだと思うんですけど、その気持ち悪さが、ちょっと積極的な気持ち悪さになってきたのかなっていう気はしますね。前は僕がセリフの中で『あなた、気持ち悪いですね』って説明したりしてたんですけど、もうそれを言わなくても伝わる感じになってきたのかな、と。
――『魔物の館ミステリーツアー』は、大水さんがアトラクションに1人で来た飛永さんを案内するというネタですが、実際の遊園地のアトラクションを参考にしたりしましたか?
飛永 大水君が1人でお化け屋敷に行ったときの体験が元になってるんですよね。ああいうのって大勢お客さんがいる前提でやってるから、1人だとズレが生じるというのがあって。
――大水さんは1人で遊園地に行ったんですか?
大水 はい、僕は趣味で1人で遊園地に行ったりするんですよ。単純に乗り物が好きなので。富士急ハイランドのお化け屋敷に1人で行ったことがあるんですけど。ああいうのって、お化けをやってる方も、相手が驚くことを前提に来てるので、それで僕があんまりリアクションとらないと、すごくしょんぼりして帰っていくんですよ(笑)。そういう感じが面白いなあと思って。
――お2人のコントでは、どんな役柄でもお互い敬語で話したりしていて、自然体なところがありますね。
飛永 普通のお笑いとかだと『なんでだよ!』とか言ったりするじゃないですか。でも、知らない人に普段そんなこと言わねえだろ、っていうところがあって。
大水 初対面の店員とお客さんの関係で、ツッコミで頭を叩くとかありえないだろうって思っちゃうんですよね。
――それは、日常でも露骨につっこんだり怒ったりする感覚が、自分たちの中にあんまりないっていうのもあるのではないでしょうか?
飛永 ああ、そうですね。感情として僕らに足りてないのかもしれないですね。理不尽なことがあってもあんまり怒ったりしないんですよ。例えば、居酒屋とかで、中国人の店員がバーンと乱暴に物を置いたりするじゃないですか。ああいうときにも、怒るというよりは、ちょっと笑っちゃうんですよね。
――お2人は、昨年の『キングオブコント』でも準決勝進出を果たしましたね。
飛永 あの決勝を見て思ったのは、やっぱりコントで優勝を決めるのは難しいな、っていうことですね。全部面白いですからね。僕らは前から言ってるんですけど、コントに関しては1位を決めるんじゃなくて、アカデミー賞みたいに、今年の『ギャグコント部門』とか『新人賞』とか、そういう形にするのがいいんじゃないかなと思ってるので。『演技賞』とか『脚本賞』とか、部門別になっていて。
大水 『誰々が今年は4冠!』とか、そういう感じだったら面白いかと思うんですけどね。1位を決めるのは難しいですよね。
――『キングオブコント』には今年も参加するんですか?
飛永 エントリーはしてますね。今年は決勝には行きたいです。ただ、うちの事務所(プロダクション人力舎)からも、アンジャッシュ、ドランクドラゴン、東京03、キングオブコメディとか、先輩もいっぱい出るんで、それを蹴散らさないといけないのか、っていうのはありますけどね。アンジャッシュとか出なくていいのにね。出たら面白いに決まってるんだから。
大水 決勝行っちゃうもんね。
――たしかアンジャッシュさんは昨年は出ていなかったですよね。
飛永 出てないですね。マジ空気読んでほしいですよ(笑)。いくら芸歴制限がないとはいえ、僕らもチャンス欲しいですからね。
――後輩のことを考えてほしい、と。
飛永 そうですよ! せっかくチャンスだと思ってるのに。人力舎の先輩方はみんな面白いですからね。
――そんな中で、できれば優勝したいという気持ちはありますか?
飛永 いや、優勝は難しいでしょう。
大水 決勝行ければいいですね。地道にやって、今年は決勝のベスト8くらいに入って、テレビを見てる人に僕らのことを知ってもらえればいいかな、と。
飛永 そうですね。僕は街を歩いてても、全然気付かれないんです。この前、インターネットで『ラバーガール』で検索したら、一般の方がブログで僕らのことを書いていて。『今日新宿に行ったら有名人を見ちゃいました。たぶんみんな知らないと思いますけど、ラバーガールの大水さんを見ました』って。そしたらそこに『しらねえよ』ってコメントが付いてたんです。それに対する答えとして『そうですよね、知ってる方が不思議ですよね……』と書かれていて(笑)。ああ、知られてねえんだな、って。だからまずは多くの人に知ってもらいたいですね。
(取材・文=ラリー遠田)
DVD発売中:¥3,990(税込)
発売元:Contents League
販売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
(C)2009 Contents League/マセキ芸能社
●らばーがーる
飛永翼(とびなが・つばさ=写真左)、大水洋介(おおみず・ようすけ=写真右)によるお笑いコンビ。2001年デビュー。アンジャッシュ、アンタッチャブル、北陽、東京03、ドランクドラゴン、キングオブコメディなど数多くの人気芸人を輩出しているプロダクション人力舎の養成所「スクールJCA」10期生にあたる。
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