「これぞ映画」稀代の名カメラマン・木村大作の初監督作品『劔岳 点の記』
#邦画
ロケ地の富山県で6月13日から先行公開され、20日に全国で封切られた『劔岳 点の記』が、興行収入20億円以上も期待できる好調な推移を見せている。この作品は、映像のもつ美しさと雄大さを堪能するためにも、ぜひスクリーンでの鑑賞をオススメしたい1本だ。
舞台は明治時代末期。日本地図完成のため、最後に残された未踏峰の剱岳に登り、測量のための三角点(点の記)設置を命じられた測量士の柴崎芳太郎(浅野忠信)が、案内人の宇治長次郎(香川照之)らとともに、前人未踏の山に挑む。
監督は、『八甲田山』『鉄道員(ぽっぽや)』などの名画で撮影監督を務めてきた、日本映画界を代表するカメラマンの木村大作で、50年のキャリアで初めてメガホンを取った。登場人物の目線で剱岳をとらえるため空撮も行わず、スタッフ、キャストが山に登り、時には約3000メートルに達する山上まですべての機材を運んで、延べ日数200日間に及ぶ撮影が行われた。CGにも頼らず映し出される山々の映像は、美しく圧巻。
柴崎たちにとって苦難の道のりが続くが、それでも山を登り続ける。彼らは、ことさらに主義主張をがなりたてることはほとんどないが、各々が自分の仕事に誇りと愛着を抱いている様子が伝わってくる。時折、焦りや苦しみをにじませながらも、黙々と険しい山に挑んでいく男たちの姿に、気がつけばじっと見入っている。そんな男たちを温かく見守り、送り出す女たち。また、日本山岳会という民間の登山家たちがライバル的存在として登場し、剱岳の初登頂を目指すが、彼らと柴崎たちの間にも、次第に互いへの敬意が生まれていく。ただ自然をとらえただけの映画ではなく、人間同士のもつ優しさや温もりを描いた映画でもある。
木村監督や主演の浅野忠信、共演の香川照之、宮崎あおいらは、ほとんどが映画界でキャリアを築いてきた”映画人”たち。その映画人たちが、途方もない時間と労力をかけて作り上げた、静かだが大きな映画であり、製作委員会にはテレビ局(フジテレビ)も入っているが、なりふり構わぬ番宣もそれほど見受けられず、志が感じられる作品になった。映画ファンとしては、こうした映画こそスクリーンで楽しみ、かつ興行的にもヒットしてくれるとうれしい。
(eiga.com編集部・浅香義明)
『劔岳 点の記』
『劔岳 点の記』木村大作監督 インタビュー
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