島田紳助 ”永遠の二番手”を時代のトップに押し上げた「笑いと泣きの黄金率」
#お笑い #島田紳助 #この芸人を見よ!
6月27日、夏の特別番組『FNSの日26時間テレビ』の記者会見がフジテレビ本社で開かれた。同番組は、7月25日19時から翌日まで約26時間にわたって生放送される。今年は島田紳助が初の総合司会を務めることになった。クイズ、ゲーム、三輪車耐久レースなどさまざまな企画が行われ、『クイズ!ヘキサゴンII』でおなじみの「ヘキサゴンファミリー」も総出演する。笑いの取れる司会者として華々しい活躍を続けている紳助が、また新たな大舞台に挑むことになった。
紳助は30年以上のキャリアを誇るベテラン芸人だが、彼が本当の意味で時代の最前線に立ち始めたのはここ数年のことだ。紳助は、80年代にはビートたけしや明石家さんま、90年代にはダウンタウンといったトップを走る人気芸人の陰に隠れた「永遠の二番手」のイメージがあった。実際、紳助自身が芸能界における自分のポジションを「引き気味のミッドフィルダー」などと語っていたほどだ。そんな彼が今、時代を牽引する一番手の位置に躍り出ている。
その活躍の原動力となっているのは、彼のプロデューサーとしての高い手腕である。紳助は、番組で共演する「史上最強の弁護士軍団」や「おバカタレント」をキャラ付けしながら巧みにいじっていくことで、お茶の間の人気者に仕立てることに成功した。また、彼が大会委員長を務める漫才コンテスト「M-1グランプリ」も、年末恒例のお笑いイベントとして毎年大きな盛り上がりを見せている。
紳助は、そのプロデュース能力を自分自身を売り出すためにも用いている。その戦略のベースには、「勝てない戦はしない」という徹底した現実主義がある。
かつて、新人だった頃のダウンタウンの漫才を見た紳助は、その革新性に衝撃を受けて、「これと比べられたら自分は負ける」と直感し、漫才をやめてコンビを解散することを決意したという。その後の紳助は、自分の強みを生かせる居場所を求めて試行錯誤を繰り返した。そして今ようやく、爆笑と感動を両取りできる「笑い:泣き=7:3」の紳助ブランドが、テレビ界で確かなポジションを確立したのである。
昨年の『FNS27時間テレビ』の総合司会を務めていたのは、紳助の盟友・明石家さんまだった。さんまが昨年、お笑い色の強い番組を作り上げたのに対して、紳助はどちらかというと感動路線を前面に押し出すことを強調し、記者会見でも「必ず泣きます」と宣言した。もしここで「笑い」を売りにしてしまうと、昨年のさんまがやったことと必ず比較されてしまう。感動路線ならば、自分の強みを十分に生かすことができる。これもまた、紳助の「勝てない戦はしない」という戦略の1つの表れだろう。プロデュースの天才は、自分自身を効果的に売り出すセルフプロデュースの天才でもあるのだ。
(お笑い評論家/ラリー遠田)
●「この芸人を見よ!」書籍化のお知らせ
日刊サイゾーで連載されている、お笑い評論家・ラリー遠田の「この芸人を見よ!」が本になります。ビートたけし、明石家さんま、タモリら大御所から、オリエンタル・ラジオ、はんにゃ、ジャルジャルなどの超若手まで、鋭い批評眼と深すぎる”お笑い愛”で綴られたコラムを全編加筆修正。さらに、「ゼロ年代のお笑い史」を総決算したり、今年で9回目を迎える「M-1グランプリ」の進化を徹底的に分析したりと、盛りだくさんの内容になります。発売は2009年11月下旬予定。ご期待ください。
夏のヴァケーションに
●連載「この芸人を見よ!」INDEX
【第36回】東野幸治 氷の心を持つ芸人・東野幸治が生み出す「笑いの共犯関係」とは
【第35回】ハリセンボン 徹底した自己分析で見せる「ブス芸人の向こう側」
【第34回】FUJIWARA くすぶり続けたオールマイティ芸人の「二段構えの臨界点」
【第33回】ロンブー淳 の「不気味なる奔放」テレ朝『ロンドンハーツ』が嫌われる理由
【第32回】柳原可奈子 が切り拓くお笑い男女平等社会「女は笑いに向いているか?」
【第31回】松本人志 結婚発表で突如訪れたカリスマの「幼年期の終わり」
【第30回】はんにゃ アイドル人気を裏打ちする「喜劇人としての身体能力」
【第29回】ビートたけし が放った『FAMOSO』は新世紀版「たけしの挑戦状」か
【第28回】NON STYLE M-1王者が手にした「もうひとつの称号」とは
【第27回】ダチョウ倶楽部・上島竜兵 が”竜兵会”で体現する「新たなリーダー像」
【第26回】品川祐 人気者なのに愛されない芸人の「がむしゃらなリアル」
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【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由
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