期間限定!? 幻想的な蝶の羽化を真面目に眺める『オオムラサキセンター』
#退屈巡礼
この退屈なご時世に、退屈しのぎに退屈そうな場所に行ってみるシリーズ【退屈巡礼】。第20回は、日本の「国蝶」オオムラサキに出会えるという、山梨県の『オオムラサキセンター』をたずねてみました。(センター内の様子はこちらから)
突然ですが、よく「日本人の常識」みたいなクイズ番組で出題される「国花」や「国鳥」はご存じでしょうか。日本の国花は桜、これは常識(もしかすると菊だと思っている方もいるかもしれませんが……)ですが、国鳥はキジ(トキじゃないですよ)、そして国蝶は? となると、そもそも「国蝶」自体にピンとこないかもしれませんが、正解は「オオムラサキ」です。ちなみに、もっとピンとこないかもしれない「国魚」はニシキゴイ。覚えておくと……ま、人生のどこかでは役に立ったり立たなかったりするかもしれません。
ところでそのオオムラサキ、切手にもなっているのでなんとなく覚えがあるかと思いますが、でも、オオムラサキって実際に見たことありますか? 資料によると、オオムラサキが国蝶に指定された昭和32年当時は「全国で広く見ることができる」というのも選ばれた理由のひとつだったらしいのですが、今となってはすっかり数も減ってしまっているので「そういえば見たことないかも?」という人も多いのではないでしょうか。少なくとも、桜やキジやニシキゴイと比べると、かなり見る機会が少ないと思われます。
というワケで、7月はオオムラサキの羽化シーズン。これを機会に、野山に観察に出かけましょう!……といっても、なかなか普通の人は乗り気になりませんよね(笑)。そもそも、どこに行けば見られるかわからないし……と、そんな人でもほぼ確実に生きているオオムラサキに出会える所があるんです。それがこの「北杜市オオムラサキセンター」。このコラムでいつも紹介している”がっかりスポット”とはやや趣きが違いますが、なかなか知らなければ行く機会もなさそうなので紹介してみたいと思います。残念ながら「虫」ってだけで全力で拒絶するような人にはがっかり以前の問題かもしれませんが……。
さて、山梨県のこのあたりは日本ナンバーワンのオオムラサキ生息地で、その自然環境を保護する形でこのセンターが存在しています。その館内にある生態観察エリア「びばりうむ長坂」という、野山にそのまま、ものすごく大きなカゴをかぶせたような施設(温室のような人工的な感じではありません)で、オオムラサキをはじめ、さまざまな昆虫が飼育されているのです。で、さきほど「ほぼ確実に出会える」と書いたのには理由がありまして、自然のままの姿で飼育されているので、羽化シーズン以外はどういった所にいるのかという知識や観察眼、あと少しばかりの運がないと見つけられないかもしれません。しかし、羽化シーズン(7月中旬ぐらいまで)なら乱舞するほど見られるらしいので、あまり発見する自信がない方はぜひ今のうちにどうぞ。もっとも、夏の間なら少し羽化シーズンを過ぎても簡単に見つけられると思いますのでご安心を。
何かと最近は呪文のように「エコ」が唱えられがちですが、こういった押し付けがましくない形で自然の素晴らしさを実感できるなら、なかなかいいんじゃないでしょうか。ささやかだけど印象に残りそうな夏休み向けのスポットとしてもオススメです。
オオムラサキセンター外観。上から見ると、建物自体がオオムラサキの形をしていたりする。
生きているオオムラサキが観察できる「びばりうむ長坂」。一見すると温室のよう
ですが、実際は「巨大な虫カゴ」のような構造で、周りの野山と中は歩きやすくな
っている以外はあまり大差がない。もちろん、それが良いんですが。
取材時は羽化シーズン前だったため、数時間かけて探したオオムラサキ。
7月のシーズン中なら乱舞するほど見られるとのこと。
羽化を見たいなら午前中のうちがオススメ。
もちろん、標本や模型などでもオオムラサキの生態を解説。
巨大な解剖模型は少々ぎょっとしますけどね。
●ご利用の心得
・知的好奇心強めの方にはオススメ。でもバカ騒ぎは厳禁ですよ。
・昆虫採集ができるわけではないので、勘違いなさらないようにご注意ください。
・虫が嫌いな人を無理につれて来るのはおやめください。たぶん、かなり不機嫌になると思います。
●あまり親切でないご利用案内
■開館時間 午前9時から午後5時(入館は午後4時30分まで)
■休館日 毎週月曜日(祝日は開館、翌平日休み)、祝日の翌日(土・日曜日の場合を除く)および年末年始(12月28日~1月4日)
■入館料 大人400円 小中学生200円
■所在地 山梨県北杜市長坂町富岡2812
■アクセス JR中央線日野春駅より徒歩約10分。車の場合、中央道長坂I.Cまたは須玉I.Cから10分程度。
■HP http://www.city.hokuto.yamanashi.jp/~oomurasaki/
(取材・文/大黒秀一)
チョコエッグ 日本の動物 第3弾 084 オオムラサキU触覚
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