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『トリガー』出版記念インタビュー

インパルス・板倉俊之がハードボイルド処女小説『トリガー』を書いた理由

itakura_main.jpg撮影=名和真紀子

 さまざまなキャラクターを演じ分ける天才肌のコント芸人として知られるインパルスの板倉俊之。そんな彼が6月29日、書き下ろし小説『トリガー』を出版した。「射殺許可法」が制定された近未来の日本を舞台に、国から発砲を許可された「トリガー」と呼ばれる人々の数奇な運命を描いた作品だ。本作を書き上げるまでの並々ならぬ苦労について、本人にたっぷり語ってもらうことにした。

――そもそも、この本を書くきっかけは何だったんですか?

「2年くらい前に出版社(リトルモア)の社長から『何かやってみないか』と声をかけてもらったんです。でも、その時点では別にフィクションを書くと決まってたわけでもなくて。自伝が流行ってたから自伝を書けばいいのかな、とか漠然と考えていたんです。でも、僕の人生はそんなに面白くないなあと思って、結局フィクションに決めました」

――いざ書き始めようと思ってから、完成するまでにはどのくらい時間がかかったんですか?

「1年半ですね。僕としては、半年くらいで書き上げるイメージだったんですよ。品川庄司の品川(祐)さんとかにも聞いていて、だいたいそのくらいなのかな、と。ただ、実は品川さんって筆が速いんですよね。僕はもう、何をやればいいんだろう、っていう感じで全然進まなくてイライラしてました。でもまあ、時間かけた方がいいだろうと思い始めて、そこからは楽しかったですね。作るスピードを他人と比べても仕方ない、って思うようになったんです」

――具体的には、どういうところで時間がかかったんですか?

「結局、ストーリーを考えるのって全体の2割くらいで、残りの8割は自分が面白いと思ったそのストーリーを、読んだ人が感じ取れるように文章を書くことに費やしていた気がします。ものを書くというのは本当に、想像を絶するパワーが必要でしたね」

――執筆作業は、紙に書いていたんですか?

「そうですね、いったんノートに最後まで書いて出版社の人に送ったら、『文章が荒い』と言われて。僕はもともと全然小説とか読んでなかったんで、確かにそうだろうなあ、と思って。そこからどんどん書き直していったんですよ。そしたら、これとこれを入れ替えて、これを削って、とかやってるうちに、ノートが矢印だらけになったんです。それで、これはもうパソコン使わないと追いつかないんじゃないかって言われて、パソコンを買って。そこからはパソコンで作業することにしました」

――パソコンを使うようになって、作業は速くなりましたか?

「いや、でも、こうやって指1本で打ってるような状態でしたからね。あと、結局は文章を入れ替えたりするやり方もよくわかんなくて、印刷したものに手書きで書き直したりしてました(笑)」

――板倉さんはどちらかというと機械に強いようなイメージがあるので、パソコンを使いこなしていなかったというのは意外な感じがしますね。

「そうですね、『パソコン詳しそう』ってよく言われるんですけど、機械音痴なんですよ。今家にあるパソコンも、小説を書き上げてからはほとんど開けてないですから」

――相方の堤下(敦)さんは、ブログを書いたりもしていますよね。

「あいつはそういうの早いんですよ。携帯も新しいのが出たらすぐ換えますからね。もう、ギャルですよ(笑)。新しいもの好きなんでしょうね」

itakura_sub.jpg

――パソコンを使って執筆作業を進めるにあたって、何かトラブルはなかったですか?

「ありましたね。僕、文章を書くペースが日によって違うんですけど、調子いい日に8ページくらい一気に進んだときがあって。ちょっと一息入れようと思って、換気扇のところに行ってタバコ吸ってたら、ノートパソコンの画面がパッと変わって。見てみたら、青い画面になって『○○をインストールします、3秒前、2秒前……』みたいになってたんですよ。慌ててパソコンの前に戻ったけどもう間に合わなくて、消えてしまって。そのときは(パソコンを)そのまま反対側に折ってやろうかと思いましたね(笑)。でも、ダメだダメだ、って何とか踏みとどまって。あれは最悪でした。そこからはもう、こまめにセーブするようになりました」

――小説を書くにあたって、誰かにアドバイスを受けたりしましたか?

「正直、こんなことやってていいのかな、ってちょっと迷ってた時期があったんですよ。芸人がお笑いじゃないことをやるっていうのに僕は抵抗があって。でも、品川さんと飲んでたら、『何でもやったらいいんじゃない』って言われて、励みにはなりました。そう言われて考えてみたら、迷ってる時間が無駄だなと思って。ある段階まで来たときにふと、ああ、もう何を言われてもやろう、と思いましたね」

――小説の中では、拳銃で人を撃つ描写が何度も出てくるのが印象的ですね。電車の中でマナーの悪い人を「トリガー」である男性が撃ち殺してしまうシーンなども出てきますが、こういう描写には板倉さん自身が普段考えていることも反映されているんでしょうか?

「そうですね、たぶん僕はムカつきやすいんですよ。高校生くらいのときから、電車とか乗ってたら腹立つなっていうやつがいっぱいいて。なんで他人のことを考えられないんだろう、って思ってました」

――板倉さんは普段、どういう場面で怒るんですか?

「この前、名古屋に行ったとき、タクシーの運転手さんに『○○ホテル』って行き先を言ったら、『いや、わかんねえなあ!』って言われて(笑)。こいつちょっとおかしいんじゃないかと思ったんですけど。『わかんねえ、名前変わったんじゃねえかな。住所わかんねえと行けねえなあ!』って言ってきて。で、仕方ないからマネージャーからのメールを見て調べて、住所を教えたんです。そうしたら、『住所見せられてもわかんねえなあ!』って(笑)。もう完全におかしいじゃないですか。それは思わず言っちゃいましたけどね」

――板倉さんが「トリガー」だったら殺してましたか?

「いや、でもこういう話って、あんまいいイメージにならないですよね?」

――文末に(笑)とか付ければ大丈夫じゃないですか?

「ああ、そうですね。はい、撃ち殺してました(笑)」

――最後に、今後の目標について教えてください。

「夢ですけど、この小説『トリガー』がマンガになり、映画になることを願ってます。まずは売れてほしいですね。家にもポスターを貼って、『売れろ!』ってずっと叫んでますよ」
(取材・文=ラリー遠田)

いたくら・としゆき
1978年生まれ。埼玉県出身。1998年に堤下敦とインパルス結成。『はねるのトびら』(フジテレビ)、『エンタの神様』(日本テレビ)などの人気番組で活躍。木村祐一監督映画『ニセ札』に俳優として出演するなど、活動の幅を広げている。

『トリガー』刊行記念 板倉俊之サイン会
【日時】7月12日(日)14時30分~
【場所】ルミネtheよしもと よしもとテレビ通り(新宿ルミネ2/7F)
【定員】100名
【参加条件】当日14時20分までに『トリガー』を必ずご持参の上、会場にお集まりください。集合時間に遅れますと、サイン会にご参加いただけない場合がございます。予めご了承ください。
【問合】リトルモア 03-3401-1042

トリガー

カバーイラストは高橋ツトムの 描き下ろし

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最終更新:2009/07/09 16:18
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