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スクープ!”ウルトラの師”実相寺監督の貴重なエロコレクションを宇宙初公開

jissoji_akio.jpg2006年11月に亡くなった実相寺昭雄監督。『ウルトラマン』『ウルトラセブン』の他、
ATG映画『無常』(70)はロカルノ映画祭グランプリを受賞、『帝都物語』(88)、
『屋根裏の散歩者』(94)、『姑獲鳥の夏』(05)など多くのヒット作、異色作を残した。
撮影=中里和人

 実相寺昭雄監督(1937~2006)といえば、『ウルトラマン』『ウルトラセブン』で子どもたちのトラウマになるような強烈なエピソードを残した異能の映像作家。特撮ファンには”ウルトラの師”として崇められる一方、オペラ、クラシック音楽への造形が深く、また書家、路面電車愛好家としても有名だった。ウルトラマンが”光の巨人”ならば、実相寺監督は”知の巨人”とでも称すべき知識人だった。現在公開中の映画『希望ヶ丘夫婦戦争』は、実相寺監督が文才をふるった同名短編小説を原作とした艶笑劇。”エロス”に対する実相寺監督の並々ならぬ探究心が伺える作品となっている。今回、日刊サイゾーは、実相寺監督と長年親交のあった河崎実監督を取材。実相寺監督から譲渡された貴重な遺品の数々を初公開してもらうとともに、”知の巨人”の知られざる一面を語ってもらった。

──実相寺監督はピンクちらしのコレクターだったことは一部のファンの間で知られていました。遺品の多くは川崎市民ミュージアムに寄贈されたと聞いていたのですが……。

「えぇ、これが監督から貰ったピンクちらしのコレクションファイルですよ。ピンクちらしのファイルだけで20冊ほどあります。あと、エロ劇画を切り抜いたファイルも8冊ほどあります。今じゃ人気漫画家の谷口ジローのエロ漫画もファイルされてますよ(笑)。実相寺昭雄という天才のセンサーを刺激したものがまめにファイルされてます。実相寺監督の書庫に眠っていた資料のほとんどは川崎市に寄贈されたみたいですが、一部寄贈しにくいものは処分されてしまったようですね。ボクの手元にあるのは、処分されるのを免れた貴重なものです。世界初公開じゃないですか(笑)。実相寺監督は風俗好きで、ソープ嬢のサービスぶりや部屋の間取りなどを詳細に記した風俗日記も膨大な量があったのですが、日記関係は寄贈されたみたいですね。実相寺監督は”知の巨人”であると同時に、”痴の巨人”でもあったわけです(笑)」

jissoji_files_s.jpg実相寺監督が撮影の合間にせっせと
集めていたピンクちらしのコレクション。
ファイルの数は20冊に及び、まだ整
理されていないピンクちらしも箱いっ
ぱいあるそうだ。美女たちの笑顔が
鬼才の創作活動に少なからず刺激
を与えたに違いない。
(画像をクリックすると拡大表示します)

──では、ファイルを拝見します。おぉ、80年代にグラビアを飾った女の子たちがファイルいっぱいに並んでいると壮観ですね!

「いわば、失われた昭和の風景ですよ。ピンクちらしの全盛期は85年ごろですか。イラストや文字だけのちらしは、もっと古いものでしょう。ピンクちらしが貼られていた電話ボックスさえ、もう街から姿を消していますからね。これは、非常に貴重な文化遺産といえるんじゃないですか。ピンクちらしは新宿、渋谷、巣鴨、大塚、さらに新潟、長崎……と収集した地域ごとにファイルされています。ひとつひとつ通し番号が付けてあり、実相寺監督の几帳面さが伝わってきますね。ちらし集めは、自分ひとりだけでなく、実相寺組のスタッフやキャスト、奥さん(女優の原知佐子)も手伝わされていました。ま、奥さんは2枚くらいしか取ってこなかったですけどね」

──写真のモデルが芸能人と思われるものには、実相寺監督の達筆な注釈が付いていますね。『全国で唯一の薬師丸ひろ子と思われる』。人気監督の密やかな楽しみだったんですね。実相寺監督は巨乳は嫌いだったとか。

「巨乳はダメ、若い子もダメでした。熟女マニアでしたね。人気AV女優の桜樹ルイが実相寺監督の事務所にあいさつに来たときも、『ダメダメ、巨乳はダメだよ』って帰してましたから。実相寺監督は『果実と肉は、腐る直前がいちばん美味しいんだ』と語ってましたよ(笑)。実相寺監督はテレビに出たがらなかったんですが、顔を知られると気軽に風俗で遊べなくなるから断っていたんです。神保町に芳賀書店ってエロ専門の本屋があるでしょ。あそこで実相寺監督、かなりどぎついビデオを購入したところ、店員に『あ、有名な監督さんでしょ? 蜷川幸雄さんだ!』と言われて、実相寺監督は否定しないで領収書をもらったそうですよ。きっと、芳賀書店の店員は蜷川さんと勘違いしたままじゃないですか(笑)」

──実相寺監督が手掛けた『ウルトラマン』『ウルトラセブン』といった特撮ヒーローものからも、河崎監督はエロチズムを感じますか?

「当然ありますよ。だって実相寺監督が最初に『ウルトラマン』で撮った怪獣が”潮吹き怪獣ガマクジラ”ですよ(笑)。特撮はね、フェチズムの宝庫ですよ。実相寺監督が鉄道マニアだったのも、ミニチュアの世界が好きだったんですよ。鉄道の模型とか、カメラのライカとか、昭和を感じさせるものの手触り、質感にこだわっていました。ウルトラマンに憧れている人って、全員なんらかのフェチですね。まぁ、実相寺監督はウルトラマンより怪獣に思い入れを持っていた人でしたね。撮影当時はシーボーズやガマクジラをもっとグロテスクな風貌にしたかったそうですが、デザインの成田亨さん、造形の高山良策さんのお陰で愛嬌のある怪獣になったんです。晩年、『あれで正しかった』と恥じ入ってましたよ。まさか、テレビ作品が40年後も残るとは考えもしなかったわけですから」

kawasaki_minoruy.jpg実相寺監督の思い出を語る河崎実監督。「実相寺
監督のコレクションは多岐にわたっていました。
ボクも中学時代は『ウルトラマン』のファイルを
20冊ほどつくっていましたし、黒澤明監督はシェ
ークスピア全集を暗記していたそうです。映画と
は一種の”記憶の集積”なんじゃないですかね」

──”封印作品”として知られる『ウルトラセブン』の第12話『遊星より愛をこめて』も、スペル星人が若い女性の生き血を吸うという、今考えるとエロチックな設定でしたね。

「あのエピソードは、脚本家の佐々木守さん(1936~2006)のテイストも強いんじゃないですか。実相寺監督と佐々木さんは、円谷プロ内でのアウトサイダー的存在でしたね。飯島敏宏さん、円谷一さんといった主流が活躍していたからこそ、実相寺&佐々木守の異色コンビが光ることができたんだと思いますよ。今の時代もそうですよね。メジャーなもの、王道的なものがなくなっちゃったから、アウトサイダー的な人材が輝く場もなくなってるんじゃないかなぁ」

──こうして、ピンクちらしのファイルなど拝見していると、作家性を突き詰めていくと、その作家特有のエロスに突き当たるのかなと感じます。例えば、大林宣彦監督は10代の少女の醸し出すエロスにこだわってますよね。

「あぁ、大林監督ねぇ。熟女マニアの実相寺監督は、ロリ好きな大林監督作品は受け入れられなかったみたいですよ。実相寺監督はテレビ出身、大林監督はCM出身とお互いに異業種畑から映画監督になった人。それだけ2人ともキャラが立っていたわけですよ。三島由紀夫が太宰治に『あんたのことが大嫌いだ』と言ってますが、それに近いものがあったんじゃないですか。絶対相手のことを誉めないけど、意識していたということでしょう」

──こちらのファイルは、実相寺監督が河崎監督に送った手紙ですか。

chinabou.jpg「ちな坊」の写った年賀状がこちら。

「達筆すぎて、読めないんですよ(苦笑)。年賀状には実相寺監督が『長男のちな坊』として溺愛していたアライグマのヌイグルミが写ってますよ。『地球防衛少女イコちゃん2』(88)の撮影現場にも、実相寺監督はちな坊を連れてきてました。主演女優の増田未亜が怖がっていた。ヌイグルミを自分の子どもとしてかわいがっていた危ないオジサンだよね(笑)。こちらの活字印刷されて読み易いハガキは、実相寺監督が胃がんの手術で入院中に送ってきてくれたもの。『日本以外全部沈没』(06)の監修をお願いしていたんで、病室で作品を見てもらったんです。『早く現場に戻りたい』と書いてありますね。執念で現場に戻って完成させたのが遺作の『シルバー假面』(06)。それで、これが実相寺監督の告別式の案内です」

──あぁ、まさにエロス&タナトスの世界。河崎監督は『地球防衛少女イコちゃん2』、『いかレスラー』(04)、『日本以外全部沈没』、『ヅラ刑事』(06)と実相寺監督に監修をお願いしていたわけですが、実相寺監督から影響を受けた部分はありますか?

「監修といっても、作品を観てもらって題字を書いてもらっていただけなんだよね(笑)。ボクは実相寺監督の弟子ではなく、年齢の離れた友人といった関係でした。作品への影響はありません(きっぱり)。まぁ『ヅラ刑事』はウルトラセブンのアイスラッガーへのオマージュシーンがありますけど。でも、やっぱり『ウルトラマン』の第34話『空からの贈り物』で変身アイテムとカレースプーンを間違えるギャグセンスは凄いよね。それに『ウルトラセブン』の第8話『狙われた街』でメトロン星人とダン隊員が卓袱台を挟んで対話するシーンは強烈なインパクトだった。ウルトラシリーズは海外に輸出する狙いがあったから、あの純和風なシーンは会社から怒られてるんですよ。でも、実相寺監督はタブーを次々と破る人だった。そして、そうした作品が今も名作として生きているわけです。あんなにギラギラしてて、平然とタブーを破る映画監督って、ちょっとこれからの時代は出てこないんじゃないですか」

 実相寺監督が残したエロファイルを眺めていると、”生”と”性”は非常に密接に結びついたものであることが実感できる。実相寺監督によって集められた2次元の美女たちは、今もスクラップ帳の中から変わらぬ笑顔をこちらに向かって投げ掛けているのだった。
(取材・文=長野辰次)

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『希望ヶ丘夫婦戦争』
セックスレスに陥った夫婦の危機をコミカルに描いた作品。実相寺監督の愛弟子である髙橋巌監督が実相寺ワールドに現代的なアレンジを加えて完成させている。樋口一葉の5千円札をめぐるエピソードは爆笑ものだ。
原作・企画/実相寺昭雄
監督/髙橋巌
出演/さとう珠緒、宮川一朗太、伊藤克信、イジリー岡田、桐島優介、小川はるみ、伊藤聖子、川村亜紀、紫とも、桜金造、範田紗々、ALNEO
配給/バイオタイド
7月4日(金)まで渋谷ユーロスペースにてレイトショー公開中。以後、名古屋シネマスコーレ、大阪シネヌーヴォXで順次公開。
http://www.kibougaoka-war.com/
(C)2009希望ヶ丘夫婦戦争製作委員会

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河崎実(かわさき・みのる)
1958年東京都出身。明治大学在学中より特撮映画の自主製作で注目を集め、オリジナルビデオ『地球防衛少女イコちゃん』(87)で商業監督デビュー。『地球防衛少女イコちゃん2』(88)の地球防衛軍長官役を実相寺昭雄監督に、と考えていたが、実相寺監督があまりに怖い人相だったので急遽監修を頼むことに。以後、『いかレスラー』(04)、『日本以外全部沈没』(06)、『ヅラ刑事』(06)と実相寺監督に監修を依頼する。『コアラ課長』(06)やベネチア映画祭招待作品『ギララの逆襲』(08)など着ぐるみによる特撮作品にこだわる一方、『飛び出せ!全裸学園』(95)、『まいっちんぐマチコ先生』(03)などエッチ系コメディ作品もあり。現在、最新作『猫ラーメン大将』(08)が絶賛リリース中。
http://www.ponycanyon.co.jp/ikochan/

日本以外全部沈没

河崎監督作品はいつだって賛否両論喧々諤々。

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最終更新:2014/03/03 15:53
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