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ハイブリッド車を制すものが、自動車業界を制す!?

絶好調のハイブリッド車「インサイト」に焦るトヨタのホンダ潰し

prius_0624.jpg新型プリウス投入でTOYOTA巻き返しなるか。

 2009年3月期に大手7社で実に5兆円の利益が消えてしまった自動車業界。昨年10月に突然発生した、米サブプライム住宅ローン問題に端を発した世界同時不況の直撃を、自動車業界も受けたことによるものだ。

 2008年度の国内総販売台数は470万台と、31年ぶりの低水準に落ち込んだ。また09年4月の国内新車販売台数(軽自動車除く)は、前年比28.6%減の16万6353台となり、実に9カ月連続の前年割れだった。販売台数は4月としては過去最低を記録するという惨憺たる有様だ。ただし、同時に始まった自動車取得税と重量税が免除される抵公害車向け税優遇(エコカー減税)の効果がわずかながら表れたようで、下落率は3月の31.5%減からやや持ち直している。自動車業界各社は生き残りのため、あの手この手の知恵を絞りに絞って必死の状況にある。

 そんな中、自動車販売不振下で唯一、気を吐いているのがハイブリッド車(HV)。その先頭を走っているのがトヨタでありホンダである。現在のところこの二社が激突する構図となっている。

 調査会社の富士経済が5月に発表した調査によると、ハイブリッド車の世界販売台数は2020年に、08年の7.6倍の375万台に達すると予測する。一方、電気自動車は、充電1回当たりの走行距離が限られることや充電設備の普及なども課題となっており、20年になっても13万5000台にとどまると予測している。

 ホンダが2月に販売したハイブリッド車が「インサイト」である。最安値モデルは189万円で、現在販売されているハイブリッド車で唯一、200万円を切るという低価格で、しかも低燃費が人気を呼んでいる。また排気量1300CCで5人乗りとファミリー層にも顧客対象を広げ、高額だったハイブリッド車の購入をためらっていたユーザーを引き付けた。ちなみに初代と2代目のインサイトは、軽量化のため2人乗りで使い勝手が悪く、ほとんど売れなかった代物だった。今回のブレイクは、いわゆる「3度目の正直」である。

 販売開始当初、月間5000台の目標だったが、発売前から爆発的な人気を博し、発売からたった1カ月で受注計画の3倍強の1万8000台を受注した。その後も売れ行き好調で、4月には販売台数は1位に躍り出た。日本自動車販売協会連合会(略称、自販連)が09年年5月11日に発表した「車名別新車販売ランキング」によると、「インサイト」は1万481台で初の首位となった。ハイブリッド車が月間1位になるのは「インサイト」が初めてのこと。自動車不況の中にあって、俄に信じられない程の絶好調ぶりである。ホンダはフル生産を続けているが「注文しても納車は半年先」(自動車販売関係者)という。

 ホンダにとって今やインサイトは救世主そのものといっていい。業界関係者も「ホンダはハイブリッド車『インサイト』投入で完全に息を吹き返した」と指摘していたが、確かにそのとおりだろう。

 ハイブリッド車とは、エンジンとモーターという2種類の異なる動力源を搭載する自動車のこと。インサイトは1.3リッターエンジンに新開発の軽量小型モーターとバッテリーを組み合わせた新型ハイブリッドシステムを搭載している。その燃費性能は同社のコンパクトカー「フィット」の1.25倍で、エンジン出力やエアコンなどを燃費優先で自動制御するエコアシスト機能も備えている。価格は189万円~221万円。コスト削減を徹底したため従来の同等クラスのガソリン車に比べて30~40万円高いとされた価格差を約20万円まで縮めたという。

 ホンダによると、インサイトの生産台数が1日600台と鈴鹿製作所の生産能力のほぼ4割に達している。同社はハイブリッド車を年間25万台生産できる体制を整え、今後、本格化する欧米での市場拡大に対応する構えだ。すでに3月24日から米国市場、また4月1日から欧州市場に投入している。鈴鹿製作所では、最新鋭のロボットを導入してハイブリッドシステムの主要部を生産するなど、生産に追われているのが実情である。まさにホンダにとって「ハイブリッド様々」なのだ。

 こうしたホンダのハイブリット車インサイトの好調ぶりに対して、焦りを見せているのが、ハイブリッド車のトップ企業を自負しているトヨタである。「ホンダに負けることなど許されない」という思いからライバル心を剥出しにして販売攻勢に打って出ている。

 そんなトヨタは5月にハイブリッド車「プリウス」の新型車を発売した。トヨタの説明では、現行モデルよりも車体もエンジンも大型化し、燃費性能を1割程度改善した。現行のプリウスがカローラクラスのグレードに対して、新型車はマークIIクラスの高級車となる。

 屋根には太陽光パネルを搭載し駐車時に電気を貯えられるなどの省エネ設計を取り入れた。排気量は1800CCで現行モデル(1500CC)より引き上げて、走行性能を高め、1リットル当たりの走行距離は、現行モデル(約35リットル)に比べて1割程度伸ばしたという。なんでも太陽光パネルで発電した電気を使ってカーエアコンなどを動かしたり、熱気を外に逃がしたりすることもでき、その外に電力量の少ない発光ダイオード(LED)ヘッドランプを採用したばかりでなく、ボディを軽くするため軽量でも高強度な高張力鋼板やアルミ部品を多く用いているという。

 それでいて価格は約205万円~250万円。現行のプリウス(230万1000円~334万円)に比べて性能を引き上げながら割安感を高めた。トヨタでは現行プリウスも新型車と併売して、最低価格をインサイトと同じ189万円に引き下げる。ホンダを意識しての価格設定といっていい。新車販売が低迷する中で、両社の競争でもってハイブリッド市場が大きく変容し拡大する雲行きだ。

 さらにトヨタは新型プリウスの投入とともに、旧型も併売する。ハイブリッド大手のトヨタとしてはインサイトの挑戦を受けたいま、それこそ「ホンダには意地でも負けられない」と旧型・新型総動員でホンダを迎え撃つ作戦に出ているといっていい。「併売体制は明らかに露骨とも言えるホンダ潰しだ」と指摘する業界関係者もいるなど、確かにトヨタのなりふり構わぬホンダ潰しに映る。もちろん消費者にとってはハイブリッド車がメーカーの激烈な競争で低価格になるのは大歓迎である。

 なお、トヨタは豊田家直系の豊田章夫氏が社長に就任して、創業家の旗の下で結集し攻めの経営に大きく舵を切る構えだ。一方、ホンダはトヨタと違って世襲を禁じている。09年のハイブリット車を軸に据えた自動車販売戦線は、まったく対照的な経営体制の企業同士が衝突している格好だ。そのホンダの社長には、6月末に専務の伊藤孝紳氏が、福井威夫社長の後任社長として就任予定。伊藤新社長は「環境車開発を急ぐ」と抱負を語っていた。伊藤新体制でさらにハイブリッド車事業でトヨタを引き離すか。ホンダの元気ぶりが目立つだけにトヨタの焦りが見えてくるようだ。

 しかも今後、ハイブリッド車市場で激突するのはトヨタとホンダだけではない。日産自動車も10年には、高級車「フーガ」のハイブリッド車を発売して参戦する予定とのことで、さらに三菱自動車、富士重工業も電気自動車を発売する予定とか。国内景気が沈んで産業界の動きが冷えこんでいるだけに、ハイブリッド商戦が起爆剤になって日本経済再生につながれば、と祈りたい。
(文=舘澤貢次)

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最終更新:2009/06/27 18:00
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