男子禁制!? 女性による女性だけのカードゲームワンダーワールド(後編)
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女性向け専用のトレーディングカードゲーム『アリス×クロス』。そのプロジェクトの影にアノ黒川文雄氏が関わっていた!?
と、言うことで全くの白紙状態の市場に参入するその勝算と、トレーティングカードゲーム(通称TCG)初心者たのための講釈を、(株)ブシロード副社長・黒川文雄氏と、『アリス×クロス』朝倉千絵美プロデューサーにお聞きしました。コレでアナタもTCG事情通!?
──業界的にまったく前例のないプロジェクトに挑戦になりますね?
黒川 むしろエアポケットみたいなものです。誰も成功していないし、あまり他に例を見ないジャンル。逆に言うと、上手くいかないから誰もやらないのかもしれませんが(笑)。でもそれだからチャレンジのし甲斐がある。男性向けTCGの例で言うと、カードゲームってある種の時代の流れの中で浮き沈みがあって、一時、2003~2004年頃に落ち込んいたんです。弊社が後発であるにもかかわらず、比較的成功しているのは、元々『遊戯王』や『ポケモン』でエントリーしてきた小学生の世代をもう一度取り込めたこと。彼らは一度”ヲタク卒業!”みたいになって、中学生になると違う趣味を見つけてしまう。でも実はTCGの市場には、もう一世代あって、今流行っているアニメやゲームのユーザーとして戻って来てるんです。一度休眠したユーザーが、個々のゲームやアニメのタイトルに紐づけられて、弊社の『ヴァイツシュヴァルツ』や『カオスTCG』に帰ってきている。これを女性の市場に置き換えると可能性が見えてくる。おそらく、これから腐女子層に入ってくる子たちは、小さい頃に、『オシャレ魔女 ラブ and ベリー』とか『キラキラアイドル リカちゃん』といったアーケードゲームを体験している。つまりカードゲームに対する素地がある。おそらく今『アリス×クロス』がブレイクしなくても、徐々に花開いていく可能性がすごく高い。男性向けと同じことが女性向けでも起こるでしょう。そう言う意味で、『アリス×クロス』はマーケットメイキングの銘柄だと思います。
──TCG全体の市場規模ってどれぐらいなんですか?
黒川 単純にいうと2008年度は前年比145%アップで、約700億円規模で非常に伸びてます。他の男児&女児玩具は落ちている中で、TCGの市場は、とても堅調で、大きく落ちることがない。ちなみに今、男子向けを含め、現在弊社の『ヴァイスシュヴァルツ』が5位で、年間の売り上げが25億円。全TCGマーケットの約3%ぐらいのシェアを維持しています。その中で女性向けの『アリス×クロス』は、初年度で1~2億円ぐらいいけば上出来なんじゃないでしょうか? カテゴリーそのものを作っているという意味では、上出来でしょう! さらに、この後も非常に有力なタイトルを用意しているので、初期にトライアルで発売したタイトルも活性化させられるところまで続けられると思うので、一度発売したからそれで売り上げが頭打ちになるというのではなく、もう一度まき直しができるというのがTCGの良いところじゃないかと思います。
──女性ユーザーの特徴とは?
朝倉 男性プレイヤーは策を練る傾向にあります。なので、システムが複雑なものほど好まれます。でも女性ユーザーの嗜好を考えた場合、すぐに結果がでないと途中で投げてしまう可能性が高いんです。その点を踏まえてシステムをつくりました。そして、男女ともに自分の好きなキャラを使って、対戦をするわけですが、女性の方がキャラに対する思い入れがより強いんです。すると、好きなキャラ同士で戦う……なんて言う部分に、少なからず抵抗感があるのではないかと考え、直接的な対決ではないスタイルを考案しました。あと、実は女性の方が勝ち負けにこだわるんですね。すっごい悔し~いィィィって(笑)。
黒川 勝ち負けにこだわるんだけれども、あまりえげつない勝ち方はしたくない、という(笑)。
朝倉 あくまでも平和的に。
黒川 『アリス×クロス』のおもしろいところは、LP(ラブポイント)をたくさん貯めていって、先に貯めきった方が勝ちという、非常に綺麗……というか、とても女性らしい勝ち方というものを演出しているんです。バッサリ相手を倒すというよりは、”なんとなく勝っちゃいました~、良かったかしら?”となるのが、『アリス×クロス』というTCGの狙いなので、その点が男性向けTCGとは違うところですね。
──相手を屈服させるというわけではないと。
黒川 ホントはそうしたいのかもしれませんが(笑)。でも表面上はそうならないように作ってます。
朝倉 ”お先に幸せになりました~”という感覚が重要なんですよ(笑)。
──これが略奪愛みたいなものだったらスゴイことになっちゃいますね。
朝倉 相手のパートナーを獲っちゃうとか? それはちょっとマズイですね(笑)。それこそホントに昼ドラみたいなバトルが勃発していまいます(笑)。
──発売後の手応えは?
朝倉 出だしは好調でした。が、これはTCGの良くないところなんですが、直接教えてもらわないとルールがイマイチよく理解できない。ルールブックも付録で付けていますが、文字だけでは実際、よくわからない。そこを補おうと思って、全国規模で講習会を開いたんですが、まだまだ新規のプレイヤーさんをフォローしきれていないと言う状況です。それでも地道に……地道にプレイする機会を作っていって、少しずつ少しずつ普及していって、覚えてもらえればなぁと思っています。
黒川 言うなれば、現在、ユーザーとの信頼関係を作っている状況なんですね。弊社ではよく言っていることですが、TCGというのは政治活動みたいなものだと。後援会を作って、各地に支部を作って、後援者という名の有力なオピニオンリーダーを作っていくということなんです。まず『アリス×クロス』という議員を立候補させることで世に出して、同時に、議員を支援してくれる人を1人でも多く各地域に作っていくというのが、現在の活動なんです。その意味では、地方を行脚して講習会を開いたりすることが、まさに政治活動に当たる部分ですね。同時に”次にどんな新製品が出るのか?”というユーザーの不安を払拭してあげることがすごく重要なんです。”このゲームを信じていいの?”という信頼関係を構築する活動をしているというのが現状じゃないでしょうか。信頼が得られれば、ユーザーは次も買ってくれるだろうし、シリーズの過去作品にも興味を持ってもらえるだろうし、大会にも参加してくれるだろうし。そのような支持を得られるんじゃないかと思います。それを作り上げることが、メーカーであり、パブリッシャーの役目なんじゃないかと思います。
──イベント会場では、ユーザー同士の交流が生まれていたみたいですね。
黒川 やっぱりゲームは相手がいて初めて成り立つモノですから。これだけ今テクノロジーが発達して、これだけツールが発展しているにもかかわらず、みんなが求めているものは、友達やコミュニティだった。その意味では女性向けにこうしたコンテンツを用意できたというのはすごく良いことだと僕は思う。やっぱりみんな仲間を欲している。TCGを政治活動に例えましたが、人は人とのつながりが欲しいものなんです。そのつながりが続くということを見せてあげることが、この『アリス×クロス』に対する信頼度を高めることに繋がると思うんです。アプローチの方法はいろいろあると思いますが、ユーザーとの絆を築けるかどうかが、このプロジェクトの成否でしょうね。
朝倉 直接顔をつき合わせるコミュニティが今、減っていますからね。実際にイベント会場で、TCGで対戦したあと、仲良くなって、メアドを交換したりするシーンをよく見かけました。すでにこうしたコミュニティが生まれているんですね。
黒川 ある種、新しいコミュニティツールですからね。話題がなくても『アリス×クロス』を一緒に遊ぶことで話題が生まれて、コミュニケーションが構築されていくわけです。そういう場が今は減っていますけど、本当はみんな欲しがっているんですね。
朝倉 今後もカードゲーム化するのに、とっても魅力的な作品がたくさんあります。選ぶのが大変です。でも、”こんな遊び方もあるんだよ”ということを、ゲームのユーザーさんに伝えていければと思っています。
(取材・文=竹石和幸【ヘッドルーム】)
●『アリス×クロス』
業界初の女性向けTCG。カードの種類はいろいろあって、女性の主人公と男性キャラの恋愛がテーマの「Side Queen」と、男性の主人公が繰り広げる作品がテーマの「Side Joker」の2系統がある。現在「Side Queen」には、『緋色の欠片』(オトメイト)、『VitaminX』(ディースリーパブリッシャー)、『D.C.Girl’s Symphony』(サーカス)の3作品、「Side Joker」には、『咎狗の血』(Nitro+CHiRAL)、『純情ロマンチカ』(角川書店)の2作品がリリースされている。
●黒川文雄(くろかわ・ふみお)
(株)ブシロード副社長。かつてセガ・エンタープライズゼス(現セガ)の泣く子も黙る「AM2研」にて、カリスマクリエイーター鈴木裕とともに『バーチャファイター』の宣伝を担当。後にデジキューブにてコンビニでゲームソフトを販売を、デックスエンタテインメント社で映画製作、オンラインゲームを手がける。アーケード、コンシューマ、開発、流通、ネットワークetc…….ある意味ゲーム業界のグランドスラムを達成した人。
キュートにねっ☆
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