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DVD『勇者の冒険』発売記念インタビュー

「本当は”フリップ芸”が嫌いなんだ」孤高のコント職人・バカリズムの道標

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 アイドル番組の司会から、オリジナル特撮ドラマ『バカリズムマン対怪人ボーズ』の主演まで、ますます活躍の場を広げているピン芸人・バカリズム。切れ味鋭い上質のネタを量産するコント職人としての彼の姿は、業界内外で熱烈な支持を受けている。最新DVD『勇者の冒険』の発売を記念して、そんな彼のネタ作りの秘密に迫った。

――まず初めに、『勇者の冒険』というDVDタイトルの由来について教えていただけますか?

「僕は、ライブをやるときにはいつも、内容より先にタイトルとDVDのパッケージデザインを決めるんです。今回は、子供が好きそうな、ゲームと間違って買ってくれそうなタイトルがいいんじゃないかということで、『勇者の冒険』に決まりました」

――このDVDは昨年9月に行われた単独ライブの模様を収録したものですね。バカリズムさんのライブの雰囲気はどうですか?

「僕のライブって、全体的にお客さんが静かなんですよね。ほかの芸人さんの単独ライブとか見たりすると、基本的にその芸人を好きな人たちが集まってるから、笑いがあってもなくても、会場全体に何となく愛があふれている感じがするんですよ。でも、僕のライブでは、僕のこと嫌いなんじゃないかと思うくらいお客さんが冷たいんですよ。甘やかしてもらえない感じがしますね」

――このDVDに収録されているバカリズムさんのネタは、フリップを使うものから1人芝居で見せるようなものまでバラエティーに富んでいますね。

「たぶん、自分はこういうのが好き、っていうものがあんまりないんですよね。それは単に、僕が飽きっぽいからっていうのもあります。そのときにいいと思ったものをそのまま形にして、またすぐ別のことがやりたくなるので。誰よりも飽きちゃうのが早いんですよ」

――バカリズムさんのネタはさまざまなパターンがありますが、中でも「トツギーノ」のようなフリップを使うネタは、テレビでもよく見かける代表作というイメージがあります。フリップ芸についてはどう思いますか?

「もともと僕は、フリップ芸が嫌いなんですよ。フリップ芸って、誰がやってもいいっていうところがあるじゃないですか。『トツギーノ』に関しても、たまたま(2006年の)『R-1ぐらんぷり』で決勝に行かせてもらったから、あのネタが有名になったんですけど、実は単独ライブの中の箸休め的なネタだったんですよね。こういうのもあっていいかなくらいの感じだったのに、それがいちばん認められちゃったんで。当時は『フリップ芸人』みたいな感じにもなったんですけど、自分の中ではそういう意識は全くなくて。僕が好きなのは基本的にはコントです」

――今年の『R-1』でも「都道府県を持つとしたら……」という斬新な発想のフリップ芸を披露していましたね。

「そうですね、あれも、ライブでお客さんの反応が良かったから入れてみたんですけど。そういう賞レースものには、観客の反応が良かったものを持って行きますね。『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ)とか、テレビでやるネタに関しても、スタッフの人に選んでもらった方がうまくいくことが多いです。自分で選ぶとたぶん全然ハマんないと思うんで。僕はそこは鼻が利かないので、おまかせするようにしてます」

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――最近は、一時期と比べるとネタ番組が増えていて、バカリズムさんをテレビでお見かけする機会も多くなった気がします。そういう時代の変化は感じますか?

「感じますねー。僕がデビューしたときって、ネタ番組が全然なかったんですよ。ネタなんか面白くたってダメだよ、って言われてた時代なので。ネタを一生懸命作ってると、『なに意味のないことやってんの?』って思われるみたいな空気がありました。今はネタが面白い人もちゃんと評価されるから、ありがたい状況ではあるなあと思いますね」

――少し前に『しゃべくり007』(日本テレビ)という番組で、ゲストとして出てきた今田耕司さんが「1番面白いと思う芸人は?」という質問に対する答えとして、バカリズムさんの名前を挙げていましたね。

「ああ、そうなんですよ! あれは……勃起しました(笑)。僕、高校時代から『ダウンタウンのごっつええ感じ』とか見てるし、『やりすぎコージー』のDVDも全部持ってるし、普通にファンですからね。そんな今田さんの口からああいうふうに自分の名前を言ってもらえてるってこと自体が、ピンと来ないんですよ。お客さんに笑ってもらうことも重要ですけど、やっぱりどっかで、自分が影響を受けたり好きだったりした先輩たちに認めてもらうことって目標だったりするじゃないですか。売れる・売れないっていうよりも、『面白いと思われたい』っていうのがずっと強かったから。今田さんのようなトップクラスの人に面白いと思ってもらえたなら、目標達成みたいなところはありますよね」

――最近は街を歩いていて気付かれたり、話しかけられたりすることも増えているんじゃないですか?

「いや、あんまり話しかけられないですね。気付かれてるのかどうかもわかんないです。見た目がどこにでもいる、誰でも作れるタイプの人間ですから。芸能界の友達が増えたっていう感じもそんなにないし。僕のイメージでは、芸能人っていうのは連日連夜パーティーをしているはずなんですよ(笑)。そこでいろんな女優さんたちとも出会いがあって、そういう人たちとしょっちゅう連絡を取り合っている、っていうのがあるんですけど、それが全くないんですよね。そういう女性の方と全然知り合いにならない。どこでパーティーをやってるんだろう、って思ってます」

――では、今後の目標としては、芸能人のパーティーに行ってみたい、ということですかね。

「そうですね、パーティーに行って、友達になりたい、モテたい。ぶっちゃけ、そういうことのためにこの世界に入ったわけですからね。僕はそのためだと思って、すごく一生懸命お笑いをがんばって、ネタをちゃんと真面目に作ってきたんです。お笑いに対しては、僕は全然ちゃらちゃらしてないと思うんですよ。すごくまっすぐに取り組んでいる。そんな僕の姿を見て、『まあ素敵』って思ってもらって、ぜひパーティーに誘ってほしいです(笑)」
(取材・文=ラリー遠田)

バカリズム ライブ 「勇者の冒険」
DVD6月24日発売:¥3,990(税込)
発売元:Contents League
販売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
(C)2009 Contents League/マセキ芸能社
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●ばかりずむ
本名:升野英知(ますの・ひでとも)。1975年、福岡県生まれ。1995年、お笑いコンビ「バカリズム」を結成。ラジオ体操のテーマ曲に合わせて堕落してゆく男の一生を描いた「ラジオ挫折」や、自殺志願者とそれを止めようとする男が不条理な会話を繰り広げる「屋上」など、独特の世界観を持つネタの数々で注目を集める。05年、コンビ解散。以降、ピン芸人「バカリズム」として活動している。

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最終更新:2018/12/10 19:23
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