トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 社会  > 前田日明から見た「三沢光晴の死、そしてプロレスの未来」(前編)
【緊急インタビュー】

前田日明から見た「三沢光晴の死、そしてプロレスの未来」(前編)

maeda01.jpg都内某所にて。撮影/田附愛美

 プロレスリング「NOAH」の社長であり、エースだった三沢光晴がリング上の事故で亡くなった。対戦相手のバックドロップを受け、ほぼ即死の状態だったという。

 まったく信じられない、三沢だけは、リングで死ぬはずがない。

 第一報を受けたファンの多くは、そう感じたに違いない。”受身の天才”、”不屈のゾンビ”……三沢光晴の代名詞は、常に「リング禍」からもっとも遠いところにあった。三沢の死は、単にひとりのレスラーの不幸な事故では片付けられない、プロレスという世界のイメージを根底から覆してしまうような出来事だった。

 今回の件、あの男はどんな風に受け止めているのだろう。プロレスの中も外も知り尽くした男、前田日明に話を聞きに行った。三沢が死んで、それでもプロレスは続いてゆく。これから私たちは、どんな気持ちでリングを見上げればいいのか──そのヒントを、前田なら与えてくれそうな気がした。

──まずは、前田さんが今回の三沢選手の事故をお知りになった経緯と、そのときの第一印象を聞かせてください。

「テレビのニュース速報ですね。そのときは、たぶん三沢がコーナーの上から場外に投げられてね、下で受ける人間が受け損なったのかな、と俺は思ったんです。俺は5年前に『ビッグマウス・ラウド』というプロレスを手伝うことになったとき、現状のプロレスを知らなかったので、いろいろ見たんですよ。そしたら、コーナーの上からの合体技、ブレーンバスターとかバックドロップをやるとか、そのまま場外に叩きつけるようなことをやってるじゃないですか。これは危ないな、と思ったんです。『リングス』時代はプロレスを一切見ていなかったので、本当に驚いた。だから、そういった流れで事故が起こったんじゃないかと思ったんですよ」

──まさかバックドロップ一発で、というのはちょっと想像できない。

「できないよね」

──前田さんが新日本プロレスにいたころに、三沢さんは全日本プロレスの新人として入ってきました。

「そう、ちょっと後輩だよね。すごく器用に、卒なくいろいろなことをこなす選手という印象だったね。運動神経がいいんだろうな、と。ただ、今新聞なんかで『受身の天才』って書かれ方をしているけど、特にそういうことはなかったよ。当時の選手のなかでは普通、うん、普通だった」

──その後、三沢さんは全日本を離れて、「NOAH」の社長をやりながらエースとして戦い続けることになります。その流れをご覧になっていたと思いますが。

「そこは本当に大したもんだと思っていた。全日本を飛び出したとき、自分より先輩もいっぱいいるわけじゃない。下だけでも大変なのに、上の人間もコントロールしてね。それに、日テレでの放映まで持っていって、そういう交渉力、経営能力だとか、正直すごいな、プロレス界にはちょっといない人間だな、と見ていました」

──前田さんも新日本からUWFで一度離れて、そのあと第2次があって、「リングス」があって、常に団体の先頭に立っていました。

「そう、だから大変なのは解るんだよね。それに三沢は、いい若手もたくさん育てていたし。丸藤(正道)とかあのへんのジュニア選手の動きなんて、ああ、もうここまでやったか、と感心したよ」

──その三沢が、亡くなりました。この事態を、ただ不運な事故だった、と言ってしまっていいのかどうか、多くのファンは戸惑っているように思います。

「不運な事故じゃないね、不運な事故じゃないと思うよ。(「週刊プロレス」に掲載されたバックドロップの)連続写真を見る限りでは、たぶん試合のどこかで失神状態になったんでしょう。それでもレスラーは夢遊病者のようにフラフラと動きますからね。それで、意識があるかないかという状態のまま投げられた。バックドロップにひねりが入ると、受けるほうも注意しなきゃいけないんです。アゴを引いて、回る方向に肩を持っていって受けなきゃいけないんだけど、失神している状態だとそのまま落ちてしまう。それで、折れてしまったんじゃないかと」

──試合の動画は、たぶん出てこないでしょうね。

「日テレのプロデューサーが見たっていうんで、どうでした? って聞いたら、これは絶対に放送には出せないと。三沢が落ちた瞬間に、全身がバッと青ざめるんだって。ほとんど即死だったみたいだね。その前にコーナーから投げ捨てられて、フラフラし始めたっていうんだけど、悲劇だったのはね、相手も、レフェリーも、セコンドも、みんなが『社長だから大丈夫だろう』『三沢だから大丈夫だろう』と思って、誰も注意して見てやれなかった。プロレスでは”セール”って言うんだけど、演技でするフラフラと、本当に効いているのと、ちゃんと見てれば分かるはずなんだけどね。それでも、頸髄(けいずい)離断っていうのは異常だよ。大ベテランの三沢がそうなるってことは、同じ状況が誰に起こってもそうなってたってことだからね。明らかに、あり得ないことが起こっていたってことだよね」
後編につづく

●まえだ・あきら
1959年、大阪府生まれ。77年に新日本プロレス入団。エース候補として渡英し、帰国後、華麗な技と甘いルックスで人気レスラーになる。84年に「UWF」、88年に「第2次UWF」を立ち上げる。解散後、91年に総合格闘技団体「リングス」を設立、日本に総合格闘技を本格的に根付かせることになる。その後、プロレス団体「ビッグマウス・ラウド」、総合格闘技「HERO’S」のスーパーバイザーなどを務め、現在はアマチュア格闘技大会「THE OUTSIDER」を主催。

●THE OUTSIDER第7戦
・日時:
2009年8月9日(日)/開場14:00 開始15:00
・会場:
ディファ有明(東京都江東区有明1-3-25)
・チケット発売中:
OUTSIDER事務局
http://www.rings.co.jp/outsider_top.html
チケットぴあ
http://t.pia.jp/index.html

週刊プロレス増刊三沢光晴追悼号

ありがとう、三沢

amazon_associate_logo.jpg

【関連記事】 苫米地英人×前田日明 格闘界に続き政治もぶっ壊す!
【関連記事】 「俺たちは”オリジナル”!」 前田日明×窪塚洋介
【関連記事】 「誰が小人を殺したか?」小人プロレスから見るこの国のかたち

最終更新:2009/06/26 09:56
ページ上部へ戻る

配給映画