ハリウッドでリメイクも決定! 恐怖の殺人鬼を追うサスペンス『チェイサー』
#海外 #映画 #韓国
韓流ブームが去って久しく、日本での公開本数もグッと減ってしまった感がある韓国映画だが、スターありきのブームに乗っただけの映画とは異なる、骨太な作品が少なくないのも韓国映画の面白いところ。『殺人の追憶』『オールド・ボーイ』などが比較的記憶に新しい方だが、それらに連なるズシリと重たいサスペンス映画が、5月1日から公開されている『チェイサー』だ。
特にこの映画は『殺人の追憶』と比較される。どちらも実在の事件をベースにしている猟奇殺人犯を追う映画だからだ。主人公は風俗業を営む元刑事ジュンホ。ある時、彼の下で働く女たちが相次いで失踪(しっそう)する。ジュンホは消えた女たちを捜すため、手がかりをつかんでいると思われる客の青年ヨンミンを追う。
が、ヨンミンは女を売り飛ばすどころか、すでに何人もの人間を殺していた猟奇殺人犯で、今また新たに、ジュンホの店から呼んだ女性ミジンを監禁し、手にかけようとするのだが…。
この映画の面白いところは、観客にはヨンミンが殺人犯ということが最初から分かっているということ。劇中でヨンミン自身も早い段階であっさりと逮捕され、自ら「人を殺した」と告白してしまうのだ。
映画の見どころはここからで、詳しく書けばネタバレになるので避けるが、ヨンミンが犯した罪の証拠や女を監禁している場所がなかなか判明せず、観客はジュンホや警察らの追跡の様子をジリジリと見守るしかない。やがて警察はヨンミンを証拠不十分で釈放するしかなくなり、最も危険な人物が野放しになることで、見ている側の不安は登場人物以上に増大する。
そんな具合に全編に緊迫感と焦燥感がにじみ、ラストも安易には落ち着かない。猟奇殺人犯の話のため、暴力的な”痛い”シーンもあるので、その辺りが苦手な方はご注意を(映画はR-15指定)。ただ、そこは目をつぶってやり過ごしても、見る価値はある。
韓国では500万人を動員する大ヒットとなり、当地のアカデミー賞にあたる大鐘賞で主要6部門を制覇。さらにレオナルド・ディカプリオがリメーク権を獲得し、自らの主演でハリウッドリメークが決定済みだ。
ディカプリオといえば、香港映画の傑作『インファナル・アフェア』を、マーティン・スコセッシ監督とともに『ディパーテッド』としてリメークし、アカデミー作品賞、監督賞などを受賞する作品に仕上げていることから、『チェイサー』のハリウッドリメークも、同じようにアカデミー賞に絡む作品として注目を集めることも予想できる(リメーク版の製作は2010年といわれているので、しばらく先だが…)。
将来のアカデミー候補作の”青田買い”というわけではないが、オリジナル作を見ておけば、リメーク作が生まれた時により楽しめる。そうした意味でも、映画ファンなら今年見逃せない1本だ。
(eiga.com編集部・浅香義明)
再び受賞なるか。
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