『デコトラ・ギャル奈美』──古きよき時代のロマンポルノ・リターンズ
#アイドル #アダルト #映画 #梶野竜太郎 #吉沢明歩
アイドル映画をこよなく愛する「アイドル映画専門」映画監督が、カントク視点でオススメのアイドル映画を、アノ手コノ手で解説します。
●今回のお題
ロマンポルノ・リターンズ
『デコトラ・ギャル奈美』
監督:城定秀夫/女性主演:吉沢明歩、今野梨乃
例えば、昔のロマンポルノをパチンコと例えた場合、今のAVってパチスロみたいなものですよね。玉が入賞口に入るまでの行程を楽しみ、入った後のイベントもワクワクドキドキなのがパチンコ。玉を入賞口に入れるまでの工程を端折り、入ってからのワクワクのみを徹底追及したのがパチスロ。
ね、ロマンポルノと、AVみたいでしょ?
伝説のトラック野郎としてならした、亡き父のデコトラを受け継いだ奈美(吉沢明歩)。気風のよさと確かな腕前で、荷主たちにも大人気の奈美の元に、新しい相棒として加わったのが、桃香(今野梨乃)だった。トラッカー相手に身体を売って生きてきた桃香の「まじめに生きたい!」という一途な気持ちにほだされて始まった凸凹コンビだったが、ある日思いもよらない事件に巻き込まれてしまい……。
「その荷物、あたしに任せな──!」もう誰も、彼女を止められない!!
必要なシーン以外、いらん! AV女優のジャイ子ちゃん(そんなコ、いねーよ)のイク顔だけが観たいんじゃーい! というAV派。
そこに辿り着くまでの流れがあっての濡れ場がいいんじゃねぇか! 風情があってこそじゃねぇのかい! というロマンポルノ派。
エロ系映像に求める欲ってのは、百人百色だから楽しいです。観てる方も撮る方も。売る方も買う方も。今となってはロマンポルノはさすがにないですが、物語重視な作品はVシネでたくさん出てます。
そこで今回紹介する『デコトラ・ギャル奈美』は、そのロマンポルノの頃の、男っぽさと、女らしさと、がらっぱちと、脱ぎっぷりと、義理と、人情が、ものすごくく見事に溶け込んでる作品なんです。昨夜の残りのカレーが翌朝はもっと旨い! みたいに深く濃く。
主演は『イイ女の限界ベロちゅうトランスFUCK』の吉沢明歩と、『おしゃぶり予備校』の今野梨乃(AVのタイトルを一般作品みたいに普通に表記すると、それはそれで楽しいなぁ~♪ わはははは)。
監督は城定秀夫監督。あの『ホームレス中学生』と同日公開し、本物のホームレスを中学校に通わせ、和希沙也、望月美寿々出演と、アイドルファンも納得の珍作……でもあり傑作でもある『ホームレスが中学生』の監督です。期待通りですよ!
物語は吉沢明歩演じる奈美が、男ドライバーには負けねぇ! とばかりに、いろいろな事件や勝負があってぇ~という前半と、今野梨乃演じる桃香との師弟関係を描き出す、平成の人情物語的な後半で構成されています。
正直、タイトルだけ聞くと、Vシネですか? っていう感じですよね。せんだみつお主演の『こち亀』くらい劇場公開っぽくない。実際、中身についてもAV女優を起用しながらも、必要以上に露出をしてない為、あくまでも、一般公開作品としての品質を保っています(特に奈美と桃香との師弟関係は、女の子の熱い共感を呼ぶと思うなー! ギャル系ファッション誌で特集しないかな? 無理か)。
まあ、奈美のがらっぱち度はMな男にはストライクだし、桃香の萌え~な感じはアキバ系にはドンピシャ! アイドルムービーのかゆいところもOKです。といいつつも、笑いはベタで楽しいし、必要なシーンではAV女優ならではのサービスシーンもあり、おっぱいもポロリだし。ここら辺のバランスが気持ちいいんだよね! 出すもんは出す! 見せるもんは見せる! みたいな。ちょっとドラマ出たからって「もう水着グラビアはやりません」とか言っちゃう某勘違いグラビアアイドルの方はこの映画を観なさい。今、すぐ! やっぱ、おっぱい出してる姿なんざぁ、さすがAV女優! 堂々としてらぁ! と、男なら股間がスタンディングオベーションです。
……と、前フリはそこまでにして、特筆はそんな今の旬な女優達を、あえて懐かしくもほっとする作品に仕上げているコト。たとえば、悪党の子分が闇取引の大切なカバンを、腹下りが原因で道端に置きっ放しにしちゃったために、桃香がデコトラに積んじゃって「こらまてー!」とかですよ! デコトラ競争のシーンなんて、奈美を邪魔するために敵が仕掛けた罠が”Y字の別れ道の矢印逆方向作戦”ですよ! チキチキマシーンですか!!
そんな、気持ちよく昭和の楽しさ、豊かさが緩和されているもんだから、40代以上が観れば「懐かしい~」だし、30代以下が観たら「なんか安心~」な感じ。そう! あの頃、ロマンポルノにあった人肌を感じれる暖かさがあるんです。正直、吉沢明歩も今野梨乃も、演技はうまくない。うまくないけど、人間味が出ている。そこにこの映画の楽しさがります。
そしてクライマックス……前半からは想像もできないラストシーン。あなたはものすごい光景を目にします。それはまるで「未知との遭遇」のような。
それを、パチンコで例えるなら、一発台のような衝撃。とても、”おっぱいポロリ”的な映画のラストじゃありませんでしたよ。いやいや、菅原文太&愛川欽也の『トラック野郎』シリーズを、引き継いでシリーズ化、お願いしますよ!
(文=梶野竜太郎)
あっきーは正義。
●かじの・りゅうたろう
映画監督・マルチプランナー。1964年東京生まれ。短編『ロボ子のやり方』で、東京国際ファンタスティック映画祭の部門グランプリを受賞。2008年に長編『ピョコタン・プロファイル』でメジャーデビュー。今後の展開に『メンタイマン』他がひかえている。現在、トークライブ『オビカヂドカン!』に出演中。
詳しくは→http://mentaiman.com/
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