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『キングオブコント2009』に見る”お笑い賞レースブーム”の問題点

koc_main.jpgキングオブコント2009公式サイト

 去る5月12日、「キングオブコント2009」の開催発表記者会見が都内で行われた。昨年に行われた同大会では、出場した芸人同士が勝敗を決めるという一風変わった審査システムが物議を醸していたが、今回もその方針は変わらず。ただし、決勝戦ではそれぞれが2本のネタを披露して、その合計点で優勝者を決めるという方式が新たに導入されることになった。2本のネタの合計点で評価をするというシステムは非常に珍しい。「キングオブコント」は2008年に始まった後発の大会ということで、他との差別化をはかるために独自のルールを作ろうと試行錯誤している様子がうかがえる。

 今年3月にはソフトバンクモバイル主催のお笑い動画コンテスト「S-1バトル」も始まるなど、今ちょっとしたお笑い賞レースブームが起こっている。だが、賞レースの数が増え続ける一方で、そこで激戦を勝ち抜いて優勝を果たした芸人が、その実績を生かし切れないままくすぶっているという事態も起こってきている。

 例えば、昨年のキングオブコントの覇者であるバッファロー吾郎は、優勝したことによってテレビで見る機会こそ増えたものの、華々しく活躍しているとは言いがたい状況にある。また、今年2月に「R-1ぐらんぷり」を制した中山功太の場合はもっと深刻だ。関西に拠点を置いて活動しているということもあり、彼の姿を東京のテレビ番組で見かけることはほとんどない。

 ただ、この事実をもって、だからR-1やキングオブコントはダメなんだとか、テレビ制作者の人がもっと彼らを積極的に使ってあげなくてはいけないとか、そういうことを主張したいわけではない。

 そもそも、優勝したら売れっ子になるとか、お笑いで勝ち負けを競うと盛り上がるとか、そういう考え方そのものが、「M-1グランプリ」によって初めて生まれたものだ。お笑い賞レースというのはM-1の前にもたくさんあったし、その多くは今も続いている。だが、専門家以外でそれらについて詳しく知っている人はほとんどいないし、その結果についても一般の人が話題にすることはない。例えば、関西在住ではないほとんどの人は、今年1月に大阪で行われた「ABCお笑い新人グランプリ」で誰が優勝したかも知らないはずだ。お笑い賞レースの世間的な認知度はもともとその程度のものだったし、それは今でも変わらない。

 M-1では、ネタ披露の前の短いドキュメンタリー映像、知名度と権威を兼ね備えた審査員の顔ぶれ、緊張感を高める舞台装置など、大会を盛り上げるための演出上の工夫がこれでもかというくらい豊富に盛り込まれている。だからこそ、そこに物語が生まれるし、そこで活躍した芸人が引っ張りだこになるという現象も起こるのだ。

 お笑い賞レースを盛り上げるためには、お笑いの勝ち負けを競うという物語に視聴者や参加者を巻き込むための工夫が不可欠である。賞レースが流行っているからといって、安易にその流れに乗っても見る側を巻き込むことはできない。まだマイナーな地位にある「キングオブコント」や「S-1バトル」などの新興の賞レースがこれから世間の注目を集めることができるかどうかも、この点にかかっていると言えそうだ。
(お笑い評論家/ラリー遠田)

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最終更新:2018/12/10 19:23
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