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"ダム、団地、工場、ジャンクション、鉄塔、水門!"

硬派な土木建造物を丸ごと集めた写真集『ドボク・サミット』

doboku_sample.jpgさまざまなたのしいドボク。

 海岸線にひろがる工場群、あるいは山奥にそびえ建つダム。「わざわざ見に行くほどのものでも……」とも思わるかもしれないが、今、巷で巨大建築物を鑑賞するのが、じわじわと流行りつつあるようだ。

 去る2008年6月15日、東京・小平市にある武蔵野美術大学1号館104教室にて、「ドボク・サミット」というシンポジウムが催された。『ダム』『ダム2』の萩原雅紀氏、『工場萌え』『団地の見究』『ジャンクション』の大山顕氏、『工場萌え』『工場萌えF』の石井哲氏、『東京鉄塔』の長谷川秀記氏、『恋する水門』の佐藤淳一氏、――5人の著者が、各建造物についてプレゼンテーションを行い、聴衆を巻き込んで巨大建造物の魅力について話し合った。およそ300人もの人々が集まり、会場は熱気に溢れかえった。

 そもそも、ドボクってなんだろう? 議長を務める佐藤氏によると、ドボクとは「土木建築物のみならず土木の特徴の一つである機能性重視という性格を持つ建築物(工場や団地なども含めた)」の総称。生産のためだけの機能がむき出しの、外観を無視した土木的な建築物をひっくるめてカタカナで「ドボク」と仮に呼んでみたという。07年春からわずか一年の間に、このような個人による土木的建築物の写真集が立て続けに出版された。この流行には何か時代の欲求があるはず、と佐藤氏ら5人の鑑賞者は「ドボク・サミット」を開催するに至った。

 今年4月に刊行されたこの本『ドボク・サミット』は、120ページに及ぶ写真とコメントで構成され、さらにシンポジウムの様子、ドボクのデータ等、計11人の書き手によるボリュームたっぷりの写真集だ。マスコットであるゆるキャラ「ドボくん」もポップで可愛らしい。ダム、団地、工場、ジャンクション、鉄塔、水門。どのドボクも飾り気なしに純粋に機能のためだけに建っている、無骨で硬派な建造物だ。しかしまた、ライトが灯った夜の工場、夜のジャンクションの夜景は、デートスポットとしての魅力もそなえている。

 ダム、工場といったドボクは、環境破壊であるというネガティブなイメージが付きまとうが、私たちの生活に大きく貢献もしている。この「ドボクの景観をエンターテインメントとして楽しむ」ことが、今後の土木建造物のあり方を考えることにつながるのだろう。ただそこにある建造物を眺めて楽しむだけ。お手軽で且つ経済的でもある。週末はこの本をガイドブックにドボク鑑賞デートしてみてはいかがでしょうか。
(文=平野遼)

ドボク・サミット

ブックデザインは寄藤文平さん。

amazon_associate_logo.jpg

●【ダム】萩原雅紀(はぎわら・まさき)
1974年、東京都練馬区生まれ。写真とデータをもとに、詳細にダムを記録するホームページ「ダムサイト」著書に『ダム』『ダム2』
http://damsite.m78.com/

●【団地】【ジャンクション】大山顕(おおやま・けん)
1972年生まれ。公営団地を紹介するWEBサイト「住宅都市整理公団」総裁。団地や工場のほかにもジャンクション、水道管、螺旋階段、高架下建築、地下鉄ホーム、駅のパイプ群など幅広い鑑賞趣味を持つ”ドボク・エンタテインメント”の提唱者。NHK BS『熱中時間』などテレビ出演多数。
http://danchidanchi.com/

●【工場】石井哲(いしい・てつ)
1967年大阪府生まれ。ブログ「工場萌えな日々」管理人。ネット上における工場鑑賞趣味の先駆者的存在。自ら撮影した写真を公開するだけでなく、イベントやツアーを主催するなど工場鑑賞の普及に余念がない。DVD『工場萌えな日々』ほか。
http://d.hatena.ne.jp/wami/

●【鉄塔】長谷川秀記(はせがわ・ひでき)
1950年東京都生まれ。電子出版業。ブログ「毎日送電線」管理人。著書に『東京鉄塔』
http://d.hatena.ne.jp/sarumaruhideki/

●【水門】佐藤淳一(さとう・じゅんいち)
1963年宮城県生まれ。写真作家。別名水門写真家。武蔵野美術大学デザイン情報学科教授。ウェブサイト「Floodgates」管理人。著書に『恋する水門』
http://www.kohan-studio.com/fg/

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最終更新:2009/05/13 12:12
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