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相次ぐ打ち切り……大西ユカリに訊く「関西ラジオの憂鬱」(後編)

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■前編はこちらから。

──それは、局側からのテコ入れってことなんですか?

大西 そうですそうです。テレビでバリバリやってた人にタクシーチケット与えないために、ラジオのディレクター席に座らしてるんですね。でも、番組が変わろうが聴いてる人は変わらない。ラジオは手作業をする人や内職をする人も聴くから、「何曜日の何時からこの番組で、ニュースが流れるときにはこの作業をしてなあかん」っていうふうにも聴かれてる。番組はこっちの勝手で変わるけど、リスナーの時間軸をズレさしてしまう。これが、番組が変わって悲しいなと思うところですね。まぁそれでも、いまだに大阪のラジオは東京と違って台本ないですけどね。使う紙は1番組で2枚ぐらいですよ(笑)。「全部このへん適当に、適当に」って。だから東京来てビックリしたん。高田(文夫)先生の『ビバリー昼ズ』(ニッポン放送)に月1で出てたんですけど、全部、一言一句、台本あるんですよ! 台本ないのが普通やと思ってたから、「台本、どんだけあんねん」って。まあなんと紙がもったいない(笑)。

──局内政治や懐事情で番組がなくなったり、テイストが変わったり、リスナーにとっては迷惑な話ですよね。

大西 迷惑やねー(苦笑)。せやけどラジオのリスナーって、それでもずっとラジオを離れないんですよね。私、ご飯屋さんの仕込みの時間にちょうどぶち当たる時間帯に番組やってたから、お店に行ったときに「あー大西さん! いつも聴いてます!」って言われたりして。「次のとき、この店のことしゃべろかな」って思うたこともありますよ。

 番組内でも、奥さんらと会話するのが楽しくてしょうがなかった。FAXで「今日は子供の運動会に行きました」とか、「今日はつくし摘んできたよ、ユカリちゃん!」とか、自分がやったことをそのまま送ってきてくれはるん。番組も、まだ終わったこと知らない人が多いんですよ。「これから野球のシーズンだからいつものように秋までお休みやね、また10月ねー」っていうFAXが最終回の日にたくさんありました。それが番組も終わってしまって、編成も変わって……。あれは心痛いです。

──今後大阪のラジオにも規制がもっと入っていって、自由な空気がなくなってしまうんでしょうか?

大西 せやなぁ。カタいことは東京に任しといてな、大阪は大阪らしさをもっと出せばええのにな。そんな時代がまた来るような気もしますけどね。ええ時代が必ず。そのためには、しゃべる人も作る人も、もうちょっと賢くならんとあかんな。それに、リスナーに対してもっと愛情持たな。

──大西さんご自身はまた機会があればラジオ番組やりたいですか?

大西 ぜひ! ぜひやりたいです。ラジオはすごくいい。ちゃんと向こうに人がおるっていうしゃべり方をずっとしてると、ライブのMCにも役に立ちますしね。何より、心根が優しくなれる。

──そういった優しさや、心の温かさのようなものが、5月20日に発売される新アルバム『HOU ON』にも込められていると思うのですが、このタイトルは何か由来があるのでしょうか?

大西 『HOU ON』は、プロデュースしてる森さんが考えてきたタイトルで、最初は漢字だったんです。”恩に報いる”と書いて『報恩』。「大西さんは恩を忘れへん人やから、”恩は忘れたらあかん”いう題にしました」言うて。それをアルファベットにしてみたら、ローオンレコードみたいでいい感じやなって、『HOU ON』になりました。大阪に、浪曲専門のロウオンレコードっていうのがあるんですよ。もう今はなき幻のレコード会社なんですけど、もう素晴らしいレコード会社でね。『HOU ON』は、Hold-onのようなソウルの響きがあるのと、好きなローオンレコードの響きもあるのと、漢字の当て字”報恩”もすごくいいので、ほんま気に入ってる題ですね。のべ40人くらいのいろんなミュージシャンの方に助けていただいて。もう、いくらギャラ払わなあかんねやー!(笑) でも、そのおかげでいいのができました。

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 大阪という街について、「橋下知事って、石原都知事と比べて敷居低い感じするでしょ? そういうのって大坂のよさだと思うんですよね。何に対しても敷居が低い。大阪の言葉で”心やすい”って言うんやけどね。すべてに”心やすい”から、それが大好き」と語る大西さん。5月20日発売の『報恩』は、心やすいながらも濃く、魂が入れ込まれた盛りだくさんな作りとなっている。数々のアーティストとのコラボレーションも必見。多くの方にぜひ聞いていただきたいアルバムだ。
(取材・文=朝井麻由美)

●HOU ON
5月20日発売。極上のヤマトソウル、大西ユカリが全てを投げ打った入魂の”報恩アルバム”。中年楽団の星=吾妻光良&ザ・スウィンギンバッパーズと夢の共演が実現! JB流儀なファンク楽団、オーサカ=モノレールとのぶっちぎりのファンク・チューン。他タップリな濃すぎる内容で。
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●大西ユカリ(おおにし・ゆかり)
1986年、山崎廣明(元「ラッツ&スター」現「ダイナミックス」)、横山剣(元「クールス」現「クレイジーケンバンド」)の薫陶を受け、北米黒人ソウル音楽グループ「CASINO」を結成。本格的な、ゴスペル・R&Bエッセンスを身につけた女性ソウルシンガーとして注目を浴び、様々な団体のゴスペル講師を務める。その他、雑誌連載、TV、ラジオ出演等、関西の顔として精力的に活躍している。5月21日には「なんばHatch」で、5月24日には日比谷野外音楽堂でのライブを控えている。

●『ウェルカム大阪』(¥1,000・税込) OSAKA元気!レコーズ
好評発売中。大西さんが大阪の平松邦夫市長と街でバッタリ会い、クラブへ行きデュエットをした。そのときに話の流れでCDの話が決まったという。歌好きの平松市長は、クラブでとにかくマイクを離さなかったとか。

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最終更新:2009/05/19 11:00
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