食虫本、食虫イベント、食虫アイドル……今”食虫”がブームって本当!?
#イベント #食品 #フード #読者プレゼント #サブカルチャー
気温が暖かくなると、悩みの種となるのが虫。洗ってない皿を放置すると小バエが発生するし、配管からゴキブリは上がってくるし、真夏のセミの鳴き声は気が狂いそうになるし……虫、マジムリである。
そんなマジムリな虫を食料として味わう”食虫”という行為が最近、やたらと盛り上がりを見せているという。昨年から『世界昆虫食大全』(八坂書房)、『楽しい昆虫料理』(ビジネス社)などの食虫関連書籍が立て続けに出版。池袋のジュンク堂書店で今年行われた昆虫食イベントは、定員オーバーの大盛況。専門家が集まり、宇宙での農業を考える団体「宇宙農業サロン」は、「虫は宇宙食に最も適した食材のひとつ」と発表しニュースにもなった。食虫芸がウリの芸人・佐々木孫悟空は、早稲田大学の学園祭などイベントに引っ張りだこ。
さらに、元・格闘家の須藤元気は健康のために食虫を取り入れているというし、関西を中心に活躍中の吉本芸人・ガリガリガリクソンは、テレビや自身のブログで普段から昆虫を取って食べていることをアピール。以前『世界ウルルン滞在記』(TBS系)で上地雄輔が蛾の幼虫を食た映像が、今になって動画サイトで騒ぎになるし、今年1月には「タガメが好物!」と語る食虫グラビアタレント・佐伯みなみがアイドル事務所からデビュー!!……まさに、虫・虫・虫なのだ。
まずは食虫の基本知識を得るため、食虫に関する書籍を多数出版し、世界の食虫文化に詳しい立教大学教授の野中健一氏に話を聞いた。
のなか・けんいち。1964年、愛知県
生まれ。理学博士。立教大学文学部
教授。2008年に人文地理学会賞受賞。
『虫食む人々の暮らし』(NHKブッ
クス)、『民族昆虫学-昆虫食の自然
誌-』(東大出版会)ほか著書多数。
「現在、日本で食べられている虫でポピュラーなのは、イナゴ、ハチノコ、カイコのサナギ。あとは長野県でザザムシって呼ばれているトビケラなど水棲昆虫の幼虫ですね。これらは佃煮で食べられることが多く、加工メーカーは長野県の『かねまん』や『塚原信州珍味』などが主力で、東京のデパートにも出荷しています。需要が高く生産が間に合っていない状況なので、原料のハチノコやイナゴを海外からの輸入に頼っているメーカーも少なくありません」
野中氏は、郷土料理の顔をして地方で売られている缶詰を開けた瞬間「これ日本で見かけない種類のハチだよ!」とツッコミを入れたくなることもあるそう。しかし、現在の日本で、それほどまでに虫の佃煮に対する需要が高いとは……。
「ハチに関しては、佃煮以外にも実にバリエーション豊かに食べられています。長野県北部のほうでは塩で炒めるのが好きですし、九州では、オオスズメバチをすき焼きにしたり、塩味のそうめんのダシにしたり。また、成虫になったスズメバチは焼酎に漬けます。焼酎のきつさが抜けて、まろやかで飲みやすくなるんです」
普段から食べている人にとって、虫はご馳走だということはわかった。ただ体には良いのだろうか。
すき焼き(中)。ヘボメシ(下)は
クロスズメバチを混ぜ込んだご飯だ。
「現在、一般的に食べられている虫を栄養分析してみると、脂肪分やたんぱく質のほか、ビタミンも豊富に含まれているものもあり、人間の食料源としてとても良いとされています。脂肪分は植物性脂肪に近い組成をしているので、肉というよりはナッツ類と考えたほうがいいかもしれません。将来、美容や成人病予防なんかにもつながったらいいですね」
世界の食虫文化を研究する野中氏が、調査のため訪れた国はラオスやアフリカなど約20ヶ国。日本ではゲテモノ色の強い虫だが、昨年出版された『世界昆虫食大全』(三橋淳著)によると、世界では1,900種類以上の虫が食べられているというから驚き。
「東南アジアやアフリカ、中南米のほうでは多くの国で虫が食べられています。オーストラリアやニュージーランドでも食べられてますし、極北地域の方も肉に付いたウジを食べると聞きます。世界で最も流通の盛んな虫といったら『モパニ』というイモムシでしょうか。日本にはいない種類ですが、南アフリカでは国際的な貿易品としてその経済効果はものすごいんです」
野中氏は、今まで世界中で数十種類の虫を食べてきたというが、その食感や味は様々だという。
「セミの成虫などは外がパリッとしていて、中は肉っぽさがありますし、幼虫なんかはトロッとしています。イモムシ系は炭火で焼いて食べると、丹波の黒豆のようなホクホク感があっておいしいですよ。個人的には以前、ラオスで食べたカイガラムシがうまかった! 新種らしいんですけども、土の中にいて、現地では市場に普通に売っています。私は油炒めで食べましたが、これがねえ、大トロのように口の中でとろけるんですよ。チョコレートでいうと『メルティーキッス』みたいな口どけ。これを食べるまではセミの幼虫が一番うまいと思ってたんですが、越えましたね(笑)」
ここまで世界の食虫事情や、食べる利点を聞いてきたが、やはり虫への嫌悪感は否めない……。誰が望んでいるのかは別として、私たち日本人の食卓に虫を取り入れるには、どう変わる必要があるのだろう。
ラムシ。(撮影/足達慶尚)
「ただ『虫』だけで切り離してしまうと、『うわっ気持ち悪い』となったり、へたしたら食べている人達自体を否定的に見てしまうかもしれない。そうではなく、『なぜそこの地域では食べられているのか』といった背景にある文化や、生きているものを捕ってから食べるまでをトータルに考えることが重要だと思います。それに虫で困っている地域ってありますよね。例えばカメムシが人気になれば、冬の北国などで困っているカメムシを捕まえて食料化できるかもしれない。虫は将来の有用な食料資源として、現在も多方面から研究が進んでいます。最初は『うわっ』っていうところから入ったとしても、自分達の興味を広げるきっかけになったら面白いですよね」
虫のような小さなものが、大きな興味に繋がったら面白いと語る野中氏が、6月4日(虫の日)にイベント「食虫大学」を開催する。共演は、今までに700種類以上の虫を食べたという世界唯一の食虫芸人・佐々木孫悟空氏。立教大学教授と芸人のコラボは、私達に何を見せてくれるのか。
「”虫は味なり・虫は愛なり・虫は未来なり”という虫道三カ条を定め、食虫って何だろうということを、食べながら楽しく理解するイベントです。メインは2名の料理人を呼んで『料理の鉄人』風に行う料理対決。虫が本来持つおいしさを増幅させてもらうのはもちろんですが、虫って殻が硬いとか、形に抵抗があるとか、虫ならではのマイナス部分がありますよね。そこをプロの料理人に託すことによって、プラスに変えてもらえることを期待しています。当日は、スズメバチの焼酎漬けや定番の虫料理をはじめ、朝捕れの虫を使ったオリジナル料理を提供しますので、虫ディナーを楽しみに来てください」
(取材・文=林タモツ)
●佐々木孫悟空&野中健一Presents「食虫大学」
【日程・場所】
6月4日(木)OPEN18:30/START19:30
Asagaya/Loft A http://www.loft-prj.co.jp/lofta/
【出演】
野中健一、佐々木孫悟空、他豪華ゲスト
【チケット】
前売¥2,000/当日¥2,500(共に飲食代別+虫のお通し付き)
学生の方は学生割引として当日¥1,000で購入可。
店頭、ローソンチケット(Lコード:35899)にて発売中。
●読者プレゼントのお知らせ
野中健一さんの最新刊『昆虫食先進国ニッポン』(亜紀書房)を3名様にプレゼントいたします。ご希望の方は、以下のフォームよりご応募ください。ご応募の〆切は5月8日(金)23時59分とさせていただきます。なお、当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます。
★ご応募はこちらから!★しめきりました
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