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社会の巨悪を暴くサスペンス・アクション 『ザ・バンク 堕ちた巨像』

thebank_0410.jpg『ザ・バンク 堕ちた巨像』
4月4日(土)、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー

 100年に一度とも言われる金融危機に加え、世界から紛争はなくならず、ますます混迷する現代社会の裏側を抉り出すサスペンス・アクション『ザ・バンク 堕ちた巨像』が公開中。現実を下敷きにした知的なサスペンスに、いかにも映画的な迫力のアクションシーンが加わった作品だ。監督は『ラン・ローラ・ラン』『パフューム ある人殺しの物語』のドイツ人監督トム・ティクバ。主演はクライブ・オーウェンとナオミ・ワッツ。

 ルクセンブルクに本社を構え、世界中から莫大な資金が集まる世界第5位のメガバンク、IBBC(International Bank of Business and Credit)に、膨大な金額の武器取引の形跡を嗅ぎ取ったインターポール(ICPO・国際刑事警察機構)のサリンジャー捜査官(クライブ・オーウェン)は、ニューヨーク検事局の検事補エラ(ナオミ・ワッツ)とともに、IBBCの調査に乗り出すが、行く先々で証人が消されていき、彼ら自身の身にも危険が迫る。

 しかし、それでも徐々に解決の糸口をたどっていったサリンジャーらは、限りなく真実へと近づいていくのだが、やがてひとりの人間にはあまりに大きすぎる、世界の裏の顔を目の当たりにすることになる。果たして、彼らは悪徳銀行の不正を白日の下にさらしだすことができるのか? それとも……。

 犯罪に加担した結果、破綻してしまった実在した銀行をモデルに描かれているというから、映画とはいえ、決して絵空事ではないのだろう。世界的な不況の中でも、裏側で紛争やテロに乗じて金儲けを企み、莫大な資金が流れているという現実に対し、やり場のない怒りを抱くであろう一般市民を代弁するかのように、主人公は揺るがない正義と信念で、その不正を暴くことに全力を捧げる。題材がシビアなのでとっつきにくい印象があるかもしれないが、その分、主人公の内面を掘り下げたりといったドラマは極力抑え、観客は主人公のストレートでぶれない言動に感情移入し、物語の行方を固唾(かたず)を呑んで見守ることができるはず。

 さらに舞台はベルリン、リヨン、ルクセンブルク、ミラノ、ニューヨーク、そしてイスタンブールへと次々に渡っていき、事件の世界規模の大きさが視覚的にも伝わりやすい。犯人は誰か、そこへいかにしてたどりつくかというサスペンスやミステリーでピリピリとした緊張感を持続させ、クライマックスには、ニューヨークのグッゲンハイム美術館を舞台にした銃撃戦でアドレナリンを一気に放出。容赦なく弾丸が飛び交い、フランク・ロイド・ライト設計の名建築が瞬く間に蜂の巣となっていく様子は壮絶だ。

 春休み映画は、やはりファミリーや子ども向けが中心で、大人向けのものにしても、過去の歴史を題材にした大作やアメコミ映画などはあるが、なぜか今年は現代の現実世界を舞台にしたハードな映画は本作くらい。リアルな世界をのぞいてみたいと思ったら、ぜひ劇場へ。
eiga.com編集部・浅香義明)

『ザ・バンク 堕ちた巨像』
『ザ・バンク 堕ちた巨像』映画評
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最終更新:2009/04/10 20:37
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