ザック・スナイダー×アメコミ原作の驚愕映像で魅せる『ウォッチメン』
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首都圏ではお花見シーズン真っ盛りだが、そんなうららかな春に映画を見るとすれば、あえて深遠な世界にどっぷり浸ってみるのも面白いかも。そんな嗜好にぴったりな映画が、現在公開中の『ウォッチメン』だ。
原作は、1986年に発表され、アメリカンコミックの最高傑作と言われる同名グラフィックノベルで、1988年には、SF作品に与えられる最高権威のヒューゴー賞を、コミック作品として唯一受賞している。映像化は不可能と言われ、映画化企画が何度も座礁。実に20年近くかかって、最終的には『ドーン・オブ・ザ・デッド』『300/スリーハンドレッド』のザック・スナイダー監督の手により映画化が実現したという、バックボーンだけでも壮大な一作だ。
映画の舞台は1985年、東西冷戦下のアメリカ。リチャード・ニクソン大統領がウォーターゲート事件で失脚せずに政権を維持しているという、架空の歴史を歩んでいる世界だ。その世界では、”ウォッチメン(監視者)”と呼ばれるヒーローたちが人類を見守り、彼らはJFK暗殺やベトナム戦争、キューバ危機といった歴史的事件に密かに関与していたが、1977年に政府がウォッチメンの活動を禁止されてからは、ある者は姿を消し、またある者は秘密裏に活動を続けるようになっていた。
そんな時、ウォッチメンのひとりである”コメディアン”ことエドワード・ブレイクが何者かにより暗殺される。この事件に危険を感じた、同じくウォッチメンの”ロールシャッハ”は独自に調査を開始。かつての仲間たちを訪れてまわり、ウォッチメンの命が狙われていることを警告するのだが……。
アメコミ映画といえば、主人公のスーパーヒーローが自己の内面と向き合い苦悩しながら悪と戦うというものが多く、アクション映画に分類されるものが多い。しかし、本作はアクションシーンもあるが、どちらかといえば犯人探しのミステリー小説を読んでいるような感覚に近い。果たしてコメディアンを殺害したのは誰なのか? 絶対的な”悪者”は存在するのか?
物語の形式上の主人公は、探偵役でもあるロールシャッハというウォッチメンだが、彼に限らず、登場するウォッチメンはそれぞれに特殊能力と独自のコスチュームを持ったスーパーヒーローでありながら、男女の恋愛感情や、親子間の葛藤など数多くのドラマを持っている。フーダニットのミステリーを描きながら、同時に複数のドラマが進行する様子は重厚感たっぷりで、加えて濃密な映像や、歴史上の事件を背景とした世界観とあわさって、スクリーンの中に広がる世界はとてつもなく深遠だ。
監督のザック・スナイダーの映像へのこだわりは、『300』を見た観客ならすでにご存知だろうが、本作でも原作コミックのテイストをそのまま映像化し、コアな原作ファンからも評価が高いようだ。セックスや暴力も隠すことなく描き、そのためにR-15指定映画になっているのだが、ぬくぬくとしたファミリー映画が多い春の映画界において、異彩を放っている1本であることは間違いない。映画館という暗闇でスクリーンに投影される、その深い世界にどっぷりと浸かってほしい。
(eiga.com編集部・浅香義明)
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