続々映画化の伊坂幸太郎作品 まずは『フィッシュストーリー』
#映画 #邦画 #小説
今年は太宰治の生誕100周年で、『斜陽』『ヴィヨンの妻』『パンドラの匣』と代表作の映画化が続々と公開を控えており、『人間失格』映画化のうわさもある。同じく生誕100周年の松本清張も『ゼロの焦点』が広末涼子主演で秋公開予定と、メモリアルイヤーを迎えた文豪作品の映画化が集中している。
しかし、彼らに劣らず、今年、映画化作品が目白押しの現役作家が伊坂幸太郎だ。今年だけで実に3作品の映画が公開されるが、その先陣を切るのが3月20日公開の『フィッシュストーリー』になる。
この映画はなかなか言葉で説明するのが難しいので、それゆえにぜひ映画館で見ていただきたいのだが、まずは2012年の中古レコード屋から物語が始まる。
彗星(すいせい)が間もなく地球に衝突しようとしており、世界破滅の危機が迫っているというところから、次々と時代が飛んでいく。
1982年の気の弱い大学生の物語、1975年の売れないパンクバンド”逆鱗”の最後のレコーディング、2009年のシージャックに巻き込まれた女子高生と正義の味方……と一見すると見事にバラバラな物語が展開されていく。
キーになるのは逆鱗が最後にレコーディングした「FISH STORY」という曲。これが各時代をつないで、2012年の世界の危機に思わぬ影響を与えるのだが……。
個々の時代の物語もそれ単体で魅力的。セックス・ピストルズが世に出るより早く、パンクを広めようと奮闘していたがかなわずに終わる”逆鱗”の面々(伊藤淳史、高良健吾ほか)の音楽や仲間にかける思いに引き込まれ、気の弱い大学生(濱田岳)の情けなくも成長しようとする姿を見守り、シージャックに巻き込まれた女子高生(多部未華子)のかわいさや、彼女を助ける正義の味方(森山未來)のカッコよさにほれることもできる。
それらのエピソードのつながりが一気に解明されるラストにひざを打ち、爽快(そうかい)感とともに映画館を出たあとにできるはず。
伊坂作品の映画化といえば、2006年の『陽気なギャングが地球を回す』に始まり、07年には『アヒルと鴨のコインロッカー』、08年に『Sweet Rain 死神の精度』と毎年のように行われてきた(06年にWOWOWで単発ドラマとして放送された『チルドレン』も後に劇場公開された)。今年はこの『フィッシュストーリー』に続いて、直木賞候補にもなった『重力ピエロ』が5月、『ラッシュライフ』が6月に映画になって劇場公開される。
その中でも本作は、『アヒルと鴨のコインロッカー』で伊坂作品を映画化し、原作者からも絶賛された中村義洋が監督を務めており、まだ『フィッシュストーリー』の原作が出版される前から、伊坂自身が中村監督に「次に映画化するならこれはどうか」と提案したものだそう。原作者お墨付きの監督による映画化ということで、ファンにも安心の一作だ。
(eiga.com編集部・浅香義明)
『フィッシュストーリー』
『アヒルと鴨のコインロッカー』
『Sweet Rain 死神の精度』
『重力ピエロ』
『ラッシュライフ』
犬が。
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